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高齢者は何歳ぐらいまでお金をもらえる仕事をしたいのだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
働く高齢者もよく見かけるようになったが(写真:maroke/イメージマート)

「働ける限り働きたい」高齢者は約2割

高齢者人口の増加や年金支給開始年齢のシフト、医療技術の進歩に伴う健康状態を維持できる年齢の伸張などを背景に、定年の引き伸ばしや退職後の再雇用などが社会の注目を集めている。内閣府が2020年7月に発表した「高齢者の経済生活に関する調査」(※)の公表結果を基に、高齢者が何歳ぐらいまで収入を伴う仕事をしたいと考えているかについて確認する。

調査対象母集団に「何歳ぐらいまで収入を伴う仕事をしたいか」と尋ねたところ、もっとも多い回答は「65歳」となり、男女とも25.6%との結果が出た。なお「収入を伴う」とは一般的な就労を意味し、ボランティア活動や地域活動などの無報酬労働、交通費程度の必要経費のみの支払いが行われる就業は該当しない。あくまでも対価を得るのを目的とした仕事に限定されている。

↑ 何歳ぐらいまで収入を伴う仕事をしたいか(男女別)(2020年)
↑ 何歳ぐらいまで収入を伴う仕事をしたいか(男女別)(2020年)

次いで多いのは「70歳」で21.7%。具体的な年齢階層では65~70歳がボリュームゾーンと見ればよいだろうか。

他方、それに続くのは「働ける限り」で20.6%。「働ける限り」が具体的にどのような状況を意味するかは回答者の解釈次第。雇用する側が許容する限り、自身の肉体に無理を感じない限り、自分の現状で働ける場所においてコストパフォーマンス的に容認できる限り、色々と想定できる。とはいえ、就労意欲が旺盛なことに違いはない。

男女別では男性の方が就労意欲は強い。具体的な年齢区分ではほぼ男性の方が回答率が高く、「望まない」では女性の方が多い。「働ける限り」も女性の方が多いが、男女でこの選択肢の意味するものは少々異なる可能性もある。もっとも「この男性の方が就労意欲は強い」は家事を任される・する必要があるなどの都合も影響しているのかもしれない。

属性別に確認

続いていくつかの属性に区分した上で、回答の違いを確認していく。まずは回答者の年齢階層別。同じ高齢者でも現時点の年齢で、大きな違いが生じている。

↑ 何歳ぐらいまで収入を伴う仕事をしたいか(年齢階層別)(2020年)
↑ 何歳ぐらいまで収入を伴う仕事をしたいか(年齢階層別)(2020年)

60代前半では65歳、60代後半では70歳がもっとも多い。回答した時点で、間もなく、あるいはもう数年で収入を伴う仕事を終えたいとの考え方だろう。他方70代前半・70代後半では65歳が最多回答値となっており、回答した時点で実のところもう収入を伴う仕事はしたくなかったと考えていることになる。

他方、「働ける限り」はどの年齢でも似たような、2割前後の回答値となっている。自分の体力や環境を考慮するが、その上で何歳までは分からないものの、できる限り働きたいとの意気込みが感じられる。

また「望まない」が年齢とともに増えているのは、すでに自分の限界を認識し、働いていない人が増えてくるからだろうか。

続いて世帯構成別。

↑ 何歳ぐらいまで収入を伴う仕事をしたいか(世帯構成別)(2020年)
↑ 何歳ぐらいまで収入を伴う仕事をしたいか(世帯構成別)(2020年)

世帯構成別では傾向だった違いはない。「本人と親の世帯」「本人と親と子の世帯」で年齢がやや低めに見えるのは、親を介護しなければならない人が多いからだろうか。

最後は就業形態別。

↑ 何歳ぐらいまで収入を伴う仕事をしたいか(住居形態別)(2020年)
↑ 何歳ぐらいまで収入を伴う仕事をしたいか(住居形態別)(2020年)

生き甲斐や生活費の補てん、コミュニケーションの場を求めてなど、(定年)退職後に新たな対価のある就業を求める高齢者は多い。雇用する側もそれを求めている事例も少なくない。実際、労働力調査などでも、高齢層の非正規における雇用人口が急増しているのが確認できる。

生き甲斐や生活費の補てん、コミュニケーションの場を求めてなど、(定年)退職後に新たな対価のある就業を求める高齢者は多い。雇用する側もそれを求めている事例も少なくない。実際、労働力調査などでも、高齢層の非正規における雇用人口が急増しているのが確認できる。

他方、マッチングの問題があるとはいえ、公的支援も含めて高齢層への就労需要・サポートへの注力が進むと、相対的に若年層への就業支援はおろそかになりかねない。バランスのよい対策を願いたいものだ。

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※高齢者の経済生活に関する調査

直近分は2020年1月9日から26日にかけて層化二段無作為抽出法によって選ばれた日本国内に住む60歳以上の男女に対し、調査員による面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は1755件。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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