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日本の学歴と完全失業率との関係を男女別にさぐる(2021年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 面接待ちの人達。同じ学歴でも完全失業率は男女でどれほどの違いがあるのか。(写真:アフロ)

世間一般には高学歴ほど就職は容易で、また失業もし難いとのイメージがある。そのイメージが確かなものかを確認するデータの一つが、総務省統計局が毎年発表している労働力調査。その最新年次平均値となる2020年分が先日発表された。今回はその値などを基に、学歴別の失業率の実情を、男女別に確認していく。

「完全失業率」とは「完全失業者÷労働力人口×100(%)」で算出される値。そして総務省統計局では「仕事についていない」「仕事があればすぐにつくことができる」「調査週間中に、仕事を探す活動や事業を始める準備をしていた(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)」の3条件すべてに当てはまる人を「完全失業者」と認定している。現在失職中で仕事があればすぐに従事することが可能だが、仕事を探そうとはしていない人は完全失業者には該当しない。

まずは全体の変移。

↑ 完全失業率(学歴別)
↑ 完全失業率(学歴別)

グラフを見る限りでは2009~2010年以降わずかずつだが、完全失業率は改善の方向に向かっている(減少している)。他方今回発表された2020年分では新型コロナウイルス流行による景況感の急激な悪化に伴い、すべての学歴で前年から悪化の動きを示してしまっている。天災によるものだから仕方がないことではあるが、残念な実情にも違いない。それでもまだ数年前と比べればよい値ではあるのだが。

続いて男女別にそれぞれ、学歴別のグラフを作成する。

↑ 完全失業率(男性、学歴別)
↑ 完全失業率(男性、学歴別)

↑ 完全失業率(女性、学歴別)
↑ 完全失業率(女性、学歴別)

↑ 完全失業率(男女別・学歴別)(2020年)
↑ 完全失業率(男女別・学歴別)(2020年)

大まかに分けて失業率が(高)「小学・中学・高校・旧中」「全体値」「短大・高専」「大学・大学院」(低)の順となるのは、男女合わせた全体値と変わらず。一方で、

・完全失業率は全体的に男性の方が高い。

・学歴間における完全失業率の差は男性の方が大きい。

・他の階層が2007年以降完全失業率を上げる中、男性の「大学・大学院」のみが失業率を下げてい”た”。しかし2009年にはその例外も失われた。

・2020年の完全失業率の悪化は学歴による差はあまり出ていない。女性の大学・大学院でやや大きいように見える程度。男女別では男性の方が悪化度合いが大きい。

などの傾向が見られる。

これらのデータはあくまでも数字的に「学歴が高い方が失業率が低い傾向にある」との失業率の一側面を示したのみの話。多分に相関関係だけでなく因果関係も類推できたとしても、「高学歴万能主義」の肯定・否定とは別次元の問題であることに気をつけてほしい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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