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世帯年収2000万円以上では9割近く…持家率と世帯年収の関係をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自分の家を持つことは夢ではあるが。(写真:アフロ)

価値観は人それぞれのため賃貸住宅の方が身軽でよいとの意見を持つ人も少なくないが、多くの人は自分の持家を手に入れることを望んでいる。一方で気軽に買える金額ではないため(大抵の人にとっては人生で一度きりの買物、あるいは受取物となる)、住宅購入には慎重になり、またなかなか手が届かないものでもある。今回は総務省統計局が2019年4月に発表した、2018年時点における住宅・土地統計調査の速報集計結果を基に、世帯年収別の持家率の実情を確認する。

次に示すのは世帯年収別に区分した、持家率の実情。この持家率とは居住世帯のある住宅(空き家でない「住宅」)のうち、居住世帯が所有している住宅の割合を意味する。同居世帯は持家に住んでいるはずはないので勘案に含まれず、住宅以外の建物に居住する世帯も住宅に住んでいるわけではないので除外されている。

↑ 持家率(世帯年収別)(2018年)
↑ 持家率(世帯年収別)(2018年)

このグラフの世帯年収の区分はあくまでも「回答時点の世帯年収別」であり、「住宅購入・入手時の世帯年収」ではないことに注意が必要になる。たとえば遺産相続で住宅を譲り受けたり、「かつては高世帯年収でその時に住宅を購入した」が「収入主が別居・死別などでいなくなり、あるいは転職や失職、退職で今は世帯収入は低い」とのパターンも考えられる。さらに年金生活者で世帯年収は低いが貯蓄を切り崩して生活している人もいる。

とはいえ、世帯年収の差で持家率に最大2倍近くの差が出ている実態は、「目指すは一国一城の主」との言葉の実現が、世帯収入という現実問題を避けて通れないことがあらためて認識できる。

他方、持家ではなく借家住まいの割合は次の通り。世帯年収別にどのような住宅に住んでいるかの割合を網羅したグラフも併記しておく(全体部分のみで「不詳」があるのは、世帯年収の回答が「不詳」で、それに連なる住宅種類も「不詳」と回答したため)。

↑ 住宅の世帯率(住宅種類別・世帯年収別)(2018年)
↑ 住宅の世帯率(住宅種類別・世帯年収別)(2018年)
↑ 世帯年収別住宅種類(2018年)
↑ 世帯年収別住宅種類(2018年)

おおよそ低世帯年収ほど民間借家や公営借家を利用する割合が高くなる。100万円未満の世帯は4割以上が民間借家。UR・公社借家は家賃の上ではリーズナブルなことで知られているが、利用条件の厳しさや物件の絶対数の問題から、利用できる人が少ないのが実情。給与住宅(社宅や公務員住宅などのように、会社や団体、官公庁などが所有または管理して、その職員を職務の都合上または給与の一部として居住させている住宅)はそもそも給与住宅を持つ企業や公的機関に勤めていないと借りることができないので、必然的によい環境下の職場での就業者となり、世帯年収も高いものとなる。

条件のよい公営借家は今でも競争倍率が高く、なかなか当選しない。また応募資格も厳しいところが多い。公営借家は利用されている現状を踏まえ、またその存在意義を反映し、「しかるべき人たち」に提供されてほしいものである。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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