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私立学校の学費は公立の2倍強から5倍近く…年間学習費の総額をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 子供の学習にはさまざまなコストが必要。その額は。(写真:アフロ)

学習費総額は公立は中学校、私立は小学校が一番かかる

子供の教育には何かとお金がかかるもの。その実情を文部科学省が2019年12月に発表した「子供の学習費調査」の結果から確認する。

今回取り上げる「学習費総額」とは、「学校教育費(授業料やPTA会費、制服、遠足代など)」「学校給食費」「学校外活動費(家庭内学習費や各種塾月謝、図書費など)」で構成される。要は子供の学習関連で発生する費用の総計。直近2018年度(2018年4月1日~2019年3月31日)における学習費総額だが、幼稚園が公立22.4万円・私立が52.8万円(年額、以下同)。小学校が公立32.1万円・私立159.9万円で、私立の方が高い結果が出ている。

↑ 学校種類別子供の学習費総額(万円/年)(2018年度)
↑ 学校種類別子供の学習費総額(万円/年)(2018年度)
↑ 学校種類別子供の学習費総額(各学校の公立額を1.00とした場合の私立額)(2018年度)
↑ 学校種類別子供の学習費総額(各学校の公立額を1.00とした場合の私立額)(2018年度)

公立と比べて私立に通う子供の学習費がかかるのは、あらゆる面で経費がかさむため。特に授業料の差が著しい。

相対比率を見れば分かる通り、幼稚園・高等学校では公立と私立の差異が2倍強に留まっているが、中学校では3倍近く、小学校では5倍近くの差が開いている。これは「学校教育費」の差もさることながら「学校外活動費」の差が大きなものとなっているため。例えば小学校の学習費の内訳を公立・私立それぞれで見比べると次の通りとなる。

↑ 小学校における公立・私立の学習費内訳(万円/年)(2018年度)
↑ 小学校における公立・私立の学習費内訳(万円/年)(2018年度)

今件データに限れば、小学校での学校教育費は公立と私立で約14.3倍もの差が生じていることになる。またこれらの値はあくまでも「年額」であることに注意。例えば小学校課程は6年のため、小学校を卒業するまでには(単純計算で)この6倍がかかることになる。私立ならば学習費は総額で960万円近く。

経年推移は!?

これを経年推移で見たのが次のグラフ。私立小学校は未調査期間があるため一部欠けているが、それ以外は多少の起伏はあるものの、高校の近年期間を除き、ほぼ横ばいで推移している。他方、この数年では特に私立でいくぶんの上昇傾向も見受けられる。

↑ 学校種類別学習費総額推移(万円/年)(幼稚園・小学校)
↑ 学校種類別学習費総額推移(万円/年)(幼稚園・小学校)
↑ 学校種類別学習費総額推移(万円/年)(中学校・高等学校)
↑ 学校種類別学習費総額推移(万円/年)(中学校・高等学校)

高等学校の動向にはやや特殊な事情がある。まず私立高等高校の2008年度の減少だが、詳細を見ると「学校教育費」に変化は無く「学校外活動費」が大きく削られた結果である。単なるイレギュラー、あるいは2007年夏に始まる金融不況に伴い、塾など習い事の切り詰めが起きた可能性が高い。

そして2010年度における私立・公立双方高校の減少は「学校教育費」の減少を起因とするもので、これは「公立高等学校に係る授業料の不徴収および高等学校など就学支援金の支給に関する法律」(いわゆる「高校無償化法」)の施行に伴うもの。学習費の上では明らかに減少しており、非義務教育ではあるものの、高校就学にある生徒を持つ世帯の負担軽減が確認できる。

一方で世帯全体としての負担の軽減に役立ったか否かは、「事実上義務教育化しているとはいえ、公的には義務教育では無い高等学校就学に対する授業料を国費で負担する必要があるのか否か」との問題なども併せ、さらなる検証が必要とされる。

他方中学校以下では、私立小学校と私立中学校で明らかに漸増の傾向が見受けられる。「学校教育費」「学校給食費」「学校外活動費」の3項目すべてで漸増しており(私立中学の学校外活動費は横ばいだが)、何か特定の要因によるものでは無い。私学はますますコスト高となりつつあるようだ。また公立小学校や公立中学校もいくぶんながら増加の動きが見受けられる。公立でも学費の底上げは生じているようである。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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