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各国の固定電話と携帯電話の普及率推移をさぐる(先進国編)(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 今や電話といえばスマートフォンなどの携帯電話だが。(写真:アフロ)

国際電気通信連合(ITU: International Telecommunication Union)では定期的に主要国(ITU加盟国)の携帯電話やインターネットに関する統計資料をまとめ、各国の動向を推し量れるデータを公開している。今回はその中から「先進諸国における、固定電話と携帯電話の普及率の推移」を2019年の時点で抽出し(収録されている値は前年2018年分まで)、状況の精査を行う。

「先進(諸)国」には色々な定義、見方がある。今回は単純にG7各国との区切りを用いることにする。さらにアメリカ合衆国はほぼ同義の定点観測記事を(CDCからのデータではあるが)別記事で展開しているので(【固定電話のみ世帯は5%足らず…アメリカ合衆国電話普及率の推移と現状をさぐる(2018年上半期版)】)、今回はデジタル系の他記事でもしばしば登場する日本・イギリス・ドイツ・イタリアの4か国に対象を絞ることにする。

なお今件における「固定電話普及率」は世帯ベースではなく個人ベース。そして1世帯に固定電話を複数台契約する状況はあまり想定できず、100%到達は困難な実情を留意しなければならない。

最初は日本。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、日本)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、日本)

携帯電話の普及率は順調に上昇を続け、2011年で100%を超えている。そして2018年ではさらに数字を上乗せして139.2%に。一方で固定電話はほぼ横ばいから漸減傾向に。2009年時点で数字が大きく跳ねているが、これは2008年まではIP電話を除外しており、2009年からカウントしたことが原因。このまま進めば固定電話普及率が5割を切るのもそう遠い未来の話では無い…との言い回しを毎年用いていたが、2018年でついに5割を下回る値が出てしまった。

続いてイギリス。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、イギリス)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、イギリス)

イギリスでは2007年ぐらいで携帯電話普及率は飽和状態に入ったように見える。それ以降はほぼ横ばいの値を示し続けている。一方で固定電話の普及率は少しずつだが減少し、直近2018年では47.6%。少しずつ、だが確実に値を落としている。

次いでドイツ。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、ドイツ)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、ドイツ)

ドイツもイギリス同様、固定電話の普及率が元々高く、下げ幅も小さめ。2018年でも数年来の下げ基調の継続の中にあるが、それでもまだ51.7%もの値を示している。一方で携帯電話の普及率もイギリスに似た形で2008年ぐらいで頭打ち。

ただしドイツの場合は先行記事で解説の通り、2009年から2010年にかけて契約数のカウント方式に変更があり、それが携帯電話普及率下落の要因となっている。他方、固定電話の値で2009年時点に上昇が見られるが、これは日本の事情と同じで、IP電話の数を加えたのが原因。

最後にイタリア。

↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、イタリア)
↑ 固定・携帯電話普及率(契約数/人口、イタリア)

複数のSIMカードを携帯電話に用いる契約事例が多いイタリアだが、今件は契約数でカウントしているため、当然携帯電話の普及率も高いものとなる。2000年時点ですでに携帯電話普及率が74.5%に達し、固定電話は47.9%と低め。そして2007年で早くも携帯電話普及率は頭打ちに近い動きとなり、固定電話は漸減を続けている。

2010年以降においてはスマートフォンの普及に伴うものと思われる、携帯電話の普及率増加の兆しが見えた。しかしながら2013年をピークに、それ以降は失速の動きに転じている。

今件記事ではG7の中でも特に目に留まった4か国をチェックした。新興国側では同様に数か国を選んだ上で、別記事で紹介・更新を行う。大きな流れに差異は無いものの、「程度」や「タイミング」でその国独自、あるいは新興国ならではの動きが確認できる次第ではある。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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