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固定電話のみ世帯は5%足らず…アメリカ合衆国電話普及率の推移と現状をさぐる(2018年上半期版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 固定電話を見たことが無い人も増えているであろう、アメリカ合衆国の電話事情。(写真:アフロ)

携帯電話だけの世帯が5割後半

携帯電話、特にスマートフォンの普及が著しい米国における電話の普及状況に関する最新調査結果(2018年上半期分)が、同国の公的機関である米疾病対策予防センター(The U.S. Centers for Disease Control and Prevention、CDC)から発表された。それによると携帯電話のみの世帯は半数を超えて55.2%に達している。その発表内容を経年推移の各種データとともに確認していく。

まず最初は、18歳以上の大人に「自分が所属する世帯に関する電話環境」を尋ねた結果。「携帯(電話)のみ」に「固定(電話)のみ」「固定(電話)と携帯(電話)双方あり」の3つの選択肢があり、その動向を重ねたのが次のグラフ。ちなみに「携帯電話」とは原文では「wireless telephones」と解説されており、旧来の自動車搭載型の小型携帯式電話、各種携帯型電話(従来型携帯電話とスマートフォン双方)が該当する。

↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境主要選択肢回答率(アメリカ合衆国、大人(18歳以上)による回答)(~2018年上半期)
↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境主要選択肢回答率(アメリカ合衆国、大人(18歳以上)による回答)(~2018年上半期)

2006年と2007年の間で「固定・携帯双方あり」「固定のみ」に大きな変化が起きている。これは2007年以降において携帯電話関連の項目で設問方法に変更があったため。区分が変わっただけで、実情が大きな変化を起こしたわけでは無い。

その動きをのぞけば、固定電話はほぼ一貫して減少している。「固定電話のみ」だけで無く「固定電話・携帯電話双方あり」も減っていることから、固定電話の数が物理的に減り、携帯電話に取って代わられていることが確認できる。2018年上半期で、固定電話のみの世帯は4.1%でしか無く、すでに55.2%は固定電話無し・携帯電話だけの世帯となっている。ただこの1、2年は「固定電話のみ」の世帯数減少の動きがほぼ横ばいに移行し、固定電話に固執する世帯に大きな変化は無く、双方を持っていた世帯が完全に携帯電話のみに切り替える動きのみ進んでいるように見える。

この動向は18歳未満の子供に尋ねた場合も変わらない。

↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境主要選択肢回答率(アメリカ合衆国、子供(18歳未満)による回答)(~2018年上半期)
↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境主要選択肢回答率(アメリカ合衆国、子供(18歳未満)による回答)(~2018年上半期)

固定電話比率は大人に確認した時よりも低い。最新値では固定電話のみは1.8%となり、携帯電話のみは64.9%と、6割を超える形となった。これは学生寮などに入り、一人暮らし、あるいはルームメイトとともに過ごす環境下にいる人が多いのが原因と思われる。固定電話に慣れ親しんだ大人世代がいない世帯では、携帯電話の比率が高くなるのも当然。

直近の2018年上半期分では、「固定電話のみ」が前期から少し減り、「固定電話・携帯電話双方あり」も減り、その分「携帯電話のみ」が大きく増えている。前期における特異な動きはやはりイレギュラーだったようだ。

「携帯電話のみ」の回答を年齢階層別に

次のグラフは、回答者年齢階層別の「携帯のみ」(固定電話無し)世帯率の推移を示したもの。CDCのデータでは2005年から2006年にかけて年齢階層区分の変更が行われたことから、今グラフは2006年上半期分以降のみとしている。

↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境「携帯電話のみ」の回答率(アメリカ合衆国、年齢階層別)(~2018年上半期)
↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境「携帯電話のみ」の回答率(アメリカ合衆国、年齢階層別)(~2018年上半期)
↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境「携帯電話のみ」の回答率(アメリカ合衆国、年齢階層別)(2018年上半期)
↑ 自分が所属する世帯に関する電話環境「携帯電話のみ」の回答率(アメリカ合衆国、年齢階層別)(2018年上半期)

若年層と最高齢層の上昇率がややおとなしめなのを除けば「回答年齢が若いほど『携帯のみ』率が高く、上昇率も大きい」傾向が確認できる。また今半期でも前半期に続き「18~44歳の回答者世帯の過半数では、携帯電話しか電話が無い」との状態に達している。そして今半期で「45~64歳」も5割に届く形となった(50.7%)。「65歳以上」はしばらく過半数への到達は難しいが、そう遠い未来の話とは考えにくい。

若年層への普及度が加速度的に進み、高齢者はゆっくりと確実に普及していく状況は、携帯電話に限らず、新技術、特にデジタル系のサービスやアイテムに共通する動きである。中年層以降、特に女性への浸透著しいソーシャルメディアのような例外もあるが、大抵はこのパターンが踏襲される。

早くから携帯電話に慣れ親しんだ若年層も少しずつ年をとり、じきに中年層・高齢者の層の仲間入りとなる。そして生まれた時から「携帯電話が常識」の社会に囲まれて育った、真の意味での「デジタルネイティブ」も生まれ、成長していく。高齢層の習得、利用状況も併せ、デジタルメディア、特に今件の携帯電話の年齢階層間格差がどのような変容を見せるのか。引き続き動向を追いかけ、確認をしていきたいところだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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