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アメリカ合衆国と中国だけで全世界の軍事費の約半分…主要国の軍事費最新情報(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 大規模な軍拡を推し進める中国。軍事費総額は推計でも世界第2位。(写真:ロイター/アフロ)

米中だけで世界の軍事費の約半分

ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)が先日発表した世界の軍事費動向を集約したレポートによると、2018年の世界全体における軍事費総額は1兆8221億米ドルだった。各国の軍事費の現状を同レポートや同じタイミングで更新されたデータベースの公開値から探る。

最初に示すのは主要国の2018年における軍事支出の上位陣国。米ドル換算で統一しており、「*」がついているのはSIPRIによる推定値。またあくまでもSIPRIが軍事費であると認識した額で、主に対外勢力に対抗する物理的国家軍事組織用の執行予算が示されている。北朝鮮など一部の国では推計すらできないため除外されている。

↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2018年)
↑ 主要国軍事費(米ドル換算で軍事費上位15位、*は推定値、億米ドル)(2018年)
↑ 世界の軍事費シェア(米ドル換算で軍事費上位10位国とその他、*は推定値)(2018年)
↑ 世界の軍事費シェア(米ドル換算で軍事費上位10位国とその他、*は推定値)(2018年)

SIPRIの計算による2018年の世界全体の軍事費は1兆8221億米ドル。その1/3強をアメリカ合衆国一国が示している。次いで多いのは中国で2500億米ドル、13.7%。為替レートが影響しうること、海外からの購入品もあるとはいえ、単純な軍事費の多い少ないで軍事力の大小が推し量り切れるわけでは無いが、やはり両国の軍事力の大きさが改めて認識できる。

昨今防衛費関連で一部から多様な意見が出されている日本だが、ここ2、3年はようやく持ち直してきたものの、今回の統計では第9位に留まっている。

対GDPで比較

軍事費の比較は単純な絶対額だけで無く、その国の実情に考慮すべきとの意見もある。そこで今回は、よく使われる指標の一つ、対GDP比を確認する。これはIMF発表の各国GDPと比較し、その国の軍事支出が何%に値するかを計算したもの。要は各国の経済力に対する軍事支出のバランスを示した値で、かつて日本で指標の一つとされた「防衛費はGNP1%まで」がよい例である(GNP1%枠はすでに撤廃されており、しかもGNPとGDPは別物)。なおグラフは直近年の2018年における軍事費そのものの上位陣に絞り、国の並びも軍事費の大きい順としている。

↑ 主要国軍事費対GDP比(SIPRI発表値、米ドル換算で軍事費上位15位の順、*は推定値、対IMF発表によるGPD比率)(2018年)
↑ 主要国軍事費対GDP比(SIPRI発表値、米ドル換算で軍事費上位15位の順、*は推定値、対IMF発表によるGPD比率)(2018年)

サウジアラビアが群を抜き、1割近くを示している。次いでロシアが3.9%、アメリカ合衆国が3.2%。日本は0.9%で、中国は1.9%。軍事費上位陣の国はおおよそ1%から2%台に収まっており、日本が一番少ない。

SIPRIの過去の発表リリースなどを基に直近5年分について、軍事費と対GDP比の推移を、2018年時点の上位国に絞ってグラフ化したのが次の図。米ドル換算の際に、為替レートの大きな変動が影響しうるため、あくまでも対外比較指標程度に見てほしい。

↑ 主要国軍事費(SIPRI発表値、米ドル換算で2018年における軍事費上位10位、*は推定値、米ドル換算、億米ドル)
↑ 主要国軍事費(SIPRI発表値、米ドル換算で2018年における軍事費上位10位、*は推定値、米ドル換算、億米ドル)
↑ 主要国軍事費対GDP比(SIPRI発表値、米ドル換算で2018年における軍事費上位10位、*は推定値、対IMF発表によるGPD比率)
↑ 主要国軍事費対GDP比(SIPRI発表値、米ドル換算で2018年における軍事費上位10位、*は推定値、対IMF発表によるGPD比率)

アメリカ合衆国が軍事費を削減していることはよく知られた話ではあるが、その実情がよく把握できる。一方でこの数年では再び増加に転じているが、それも経済の伸長に併せた範囲のものであることも確認できる。ただし直近年の2018年では大きな伸びを示しており、これはトランプ大統領の施政方針に従ったところによるものが大きい。

他方中国の大幅な軍拡が、GDPの底上げを背景としていること(軍事費そのものが大きく増大しているが、GDPも同時に成長しているため、対GDP比はほぼ横ばい)、それらも含め、概して先進諸国が軍縮、新興国が軍拡の方向を示していることがうかがえる。これは冷戦終結後、特にここ数年の一つのトレンドとなっている。

軍事費はあくまでも指標の一つでしか無く、また為替レートで多分に影響を受ける。とはいえ、対外的要因が大きい軍事力の物差しとしては、十分以上に参考になるものに違いは無い。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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