育児系雑誌の部数動向をさぐる(2018年10~12月)
育児に関する情報はいくらあっても足りないと感じるもの。情報取得のために雑誌は必要不可欠な存在ではあったが、最近はインターネットに主役の座を奪われつつある。育児系雑誌の現状における部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から確認する。
現在印刷証明付き部数の公開ページで取得できる、該当ジャンルの雑誌は7誌。前期までは8誌だったが、祥伝社の「nina's(ニナーズ)」が2018年12月7日発売の1月号をもって休刊してしまったため1誌減ってしまった次第(部数公開は2016年7~9月期から)。
次に示すのは直近にあたる2018年10~12月期における部数の実情と、前年同期比の部数動向。印刷物は季節により販売数の変化が大きく生じるため、季節変動を考慮しなくてもよい前年同期比の方がすう勢を見るのには適している。
少子化は育児系分野の市場縮小の一要因。しかしその市場動向の多くは単純な子供の人数の減り方をはるかに超えるスピードで縮小している。そして核家族化などを考慮すれば、口頭伝達の教え手となる祖父母が身近にいる育児世帯は数を減らしていき、育児情報の需要は増えることから、切り口次第ではチャンスは多い。もちろん同時に主婦層にもインターネット、中でもスマートフォンやタブレット型端末の普及が進み、子育て層に向けた情報・コミュニティサービスの利用者も増えており、それらのライバルが多い中で雑誌ならではの提案が求められる。例えば蓄積性、専門性、正確性、実物品の提供などが思い浮かぶ。
盛況を博していた「ベビモ(Baby-mo)」だが、最近は姉妹誌の「プレモ(Pre-mo)」とともに低迷気味。同誌は充実した冊子内容と有益な付録が好評を博しており、毎号大きな話題を集めていた。「ベビモ」の中期的な動向を確認すると、育児系だけに限らず、雑誌全般でも注目に値する堅調さを示していた。確かな支持層を確保し、信頼を得ることで口コミにより新たな読者層が逐次生まれ、さらにそのような状況に甘んじること無く常に改善を模索し、それが功を奏していたように解釈できる。しかしながら2015年後半から大きな失速を見せている。何らかの方針転換がなされ、それが読者の動きにつながったのだろうか。今期は前年同期比で大きく伸びを示しているが、これは前年同期が大きく減少したことの反動でしかない。前期比はマイナス4.1%となっている。
「初めてのたまごクラブ」は要注目。
「初めてのたまごクラブ」は季刊誌で該当発行誌は1誌。「妊娠がわかったばかりの「わからないこと」「不安なこと」を解消する情報をこの1冊にぎゅっとまとめました。医師監修の信頼できる情報満載で、あなたの妊娠生活を応援します」のコピーにある通り、不安を持つことの多い妊娠したばかりの女性に様々な観点から情報の提供を行っている、教本的な存在。通常版は電子版も展開し、またハンディサイズ版(B5変型判、内容は同じ。通常はA4判)も存在する。特別付録の母子手帳ポーチやマタニティマークストラップも嬉しいところ。
部数動向の限りでは2016年7~9月期で大きく部数の増加を示し、それ以降は安定した部数動向に移行している。何らかの方針転換があり、それが功を奏しているのだろうか。掲載情報への評価が極めて高いことから、口コミでよさが広まっているのかもしれない。
少子化だけで無く情報伝達媒体の多様化もあり、紙媒体は多ジャンルで厳しいビジネス環境下にある。しかしながら育児系雑誌ではその特異性もあり、雑誌ならではの付加価値を見出せる構成を示すことで、不調を乗り越える可能性を秘めている。育児情報を求める人たちにとって頼りになる存在となることができるか否か、出版社や編集部の力量が問われるところだ。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。
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(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。