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18~29歳では3割足らず…老後の生活設計を考えたことがある人の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 老後はどのように生活をするか。お金の観点からの生活設計をしたことがあるか。(写真:アフロ)

67.8%の人は老後の生活設計を考えたことがある

「老後の生活」を中心とした、お金の上での生活のやりくりの生活設計を考えたことはあるだろうか。内閣府の世論調査「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」(※)の調査報告書から世間の実情を確認する。

次に示すのは老後の生活設計を考えたことがある人の割合。生活設計の具体的な説明は質問票には無いが、世間一般の認識や今調査の別項目の設問から、金銭面を中心とした日常生活のやりくりのスタイルと考えればよい。また、すでに事実上老後の状態にある人も、過去に考えたことがあるか否かで答えてもらっている。要は老後の生活設計を考えた経験があるか否か。

↑ 老後の生活設計を考えたことがある人(2018年)
↑ 老後の生活設計を考えたことがある人(2018年)

全体では67.8%の人が考えたことがあるとしている。男女別では女性の方が値は高く、年齢階層別では60代までは年とともに値は上昇していく。70歳以上でやや値が落ちるのは、忘れてしまったからか、あるいは「勝ち組」的なポジションで考える必要が無い人が多いからなのか。18~29歳では男性で28.4%、女性でも36.5%しかいないのは驚きの値だろう。

職業別では事務系の職業が高めで、現場労務系の人達が低め。事務系の職業が高めなのは、お金に直接かかわる時間が多いため、自分のことも気になってしまうからかもしれない。

なぜ老後の生活設計を考えたのだろうか

それではなぜ老後の生活設計を考えたのか、考えた人に具体的な理由を1つ選択してもらった結果が次のグラフ。選択肢は質問票の順に従って並べてある。

↑ 老後の生活設計を考えた理由(択一回答、考えた人限定、男女別)(2018年)
↑ 老後の生活設計を考えた理由(択一回答、考えた人限定、男女別)(2018年)

もっとも多い意見は「老後の生活が不安」で44.6%。次いで「無計画な生活はしたくない」が25.9%、「老後が近い年齢になった」が21.8%。この3つの理由で9割を超え、残りはごくわずかでしかない。もっとも大きな理由との観点では、いずれも納得のいくものではある。

男女別では大きな差異は無し。女性の方が「老後が近い年齢になった」の値がやや高い程度か。

年齢階層別に見ると、年齢が老後の生活設計を考えさせる大きなきっかけとなっているのが分かる。年を重ねていくことが大きな要因となる問題だから、当然の話なのだが。

↑ 老後の生活設計を考えた理由(択一回答、考えた人限定、男女別・年齢階層別)(2018年)
↑ 老後の生活設計を考えた理由(択一回答、考えた人限定、男女別・年齢階層別)(2018年)

若年層では「無計画な生活はしたくない」が多いが「老後の生活が不安」を超えることは無い。40代からは「老後が近い年齢になった」の値が増え、50代ではグンと伸びる。目の前に迫った老後に向けて、具体的に物事を考えねばならないとの意思が強く働くようになったのだろう。

他方、どの属性でも最多回答率は「老後の生活が不安」であることに変わりはない。具体的にどのような不安かは質問票には書かれておらず、回答者自身も明確化は難しいのだろうが、もやっとした心の不安が老後の生活設計を考えるという行動の後押しをする最大の要因であることがうかがえよう。

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※老後の生活設計と公的年金に関する世論調査

2018年11月1日から18日にかけて日本国内に居住する18歳以上の日本国籍を持つ男女から層化2段無作為抽出法によって選ばれた5000人に対し、調査員による個別面接聴取法によって実施されたもので、有効回答数は2919人。男女比は1369対1550、年齢階層比は18~19歳39人・20代192人・30代340人・40代517人・50代475人・60代553人・70歳以上803人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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