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火力は石炭・石油・天然ガス、水力、そして原子力…電源種類別に主要国の発電量をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 石油や天然ガスによる火力発電所。(写真:アフロ)

・電源別に発電量を見ると、日本では天然ガスが39.6%ともっとも多く、次いで石炭の33.2%、石油の9.9%(2015年)。

・カナダ、ブラジルは水力発電の比率が高い。

・イタリアには原子力が無い。国策による結果。他方フランスでは8割近くを原子力に頼っている。

電気は色々な形に変換しやすいエネルギーとして重宝され、現代社会には欠かせない存在。その電気をいかなる種類の電源から生み出すのかは、国家戦略の上でも重要な話。主要国の現状を確認していく。

今件記事に関して一次資料となるものはIEA(国際エネルギー機関:International Energy Agency)が毎年発行している「ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES」と「ENERGY BALANCES OF NON-OECD COUNTRIES」。日本原子力文化財団などが発行している「原子力・エネルギー」図面集の最新版(2017年発行)において2017年版(データの中身は2015年分)のデータが公開されているため、今回はこれを基に精査を行う。

今グラフは電気の発電様式を主要な発電方法、具体的には石炭・石油・天然ガス(以上火力発電)・原子力・水力・その他に区分し、それぞれの発電「量」(瞬間時の能力を示した「能力」では無い)を総計電力量比で示したもの。

↑ 主要国の電源別発電電力量の構成(2015年)
↑ 主要国の電源別発電電力量の構成(2015年)

・カナダ、ブラジルは水力発電の比率が高い。自然をフルに活用できる環境を有効に活かしている。特にブラジルは6割強が水力で占められている。

・イタリアには原子力が無い。国策による結果。

・イギリス、イタリア、ロシアなど欧州地域は天然ガスに寄るところが大きい。

・中国やインドなどの新興国では石炭傾注度が高い。

・フランスでは8割近くを原子力に頼っている。

・日本の原子力は0.9%。

これらの特徴に関して、それぞれの国のエネルギー事情が大きく反映されたものとなっているが、例えば

・イタリアは1987年に脱原発政策が国民投票で決定してから、原発ゼロを貫いている。現在では方針転換を二度繰り返し、結局原発ゼロは継続。

・フランスはエネルギー面でも独立独歩的な政策を現実のものとするため、他国に関与されにくい原発を促進している。一時的に大きな方針転換が行われる可能性が出てきたが、現在ではその動きも沈静化している。

・中国は電力の7割強を石炭から得ているが、これは石炭が安価で経済性に優れているから。ただし環境面での負担も大きい。

などが挙げられる。それらが電力量構成にそのまま反映されている次第ではある。また以前欧州情勢で話題となった、西欧諸国とロシアとの間におけるパイプライン供給でのガスをめぐる駆け引きなども、このグラフを見ながら考察し直すと、納得できる部分がある。

ちなみに石油のほとんどを輸入に頼っている日本だが、電力発電用としての比率は今回取り上げた国の中では最大値を示している。これは2011年3月に発生した震災とその後の政情的混乱により原発の稼働が止められ、不足した電力を火力発電所で補うための結果によるものである。

次のグラフは今回直近となった2015年の値と、前回年の2014年の値を比較したもの。

↑ 主要国の電源別発電電力量の構成(一部、前年比、ppt)(2015年)
↑ 主要国の電源別発電電力量の構成(一部、前年比、ppt)(2015年)

日本では原発の再稼働が一部で行われ、石炭や石油、天然ガスの分がまかなわれている実情が分かる。もっとも「その他」(再生可能エネルギーなど)も大きく伸びており、むしろこちらが補完している割合が大きいのが実情。

当然のことながら電気そのものは目に見えることは無く、コンセントにも「原材料は●×です」と書かれているわけでは無い。発電の原材料で電気の質に違いが生じるわけでも無い。インフラがしっかりと安定的に整備されている中で日々を過ごせる、「当然のように繰り返される日常」、そのインフラを絶えず支えている関係者に感謝をしつつ、電気が作られた「素」に想いを馳せることをお勧めしたい。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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