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スマートフォンなどでのインターネット利用率の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ いつでもどこでもスマートフォンでインターネット。その利用率は。(写真:アフロ)

・従来型携帯電話やスマートフォン、PHSを使ったインターネットの利用率は62.6%(2017年)。

・従来型携帯電話やスマートフォン、PHSを使ったインターネットの利用率はここ数年で未成年層と中年層で大きく上昇。

・タブレット型端末によるインターネット利用率は6~12歳がもっとも高く33.3%(2017年)。

全体では6割強、20代と30代は9割超え

今や多くの人にとって日常生活では欠かせない存在となったスマートフォン。それら携帯電話(スマートフォンだけで無く従来型携帯電話やPHSも含む)によるインターネットの利用はどれほどまでに行われているのか。総務省が2018年5月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に、その実情を複数の切り口から確認する。

まずは「携帯電話を使った」「インターネットの利用率」。タブレット型端末は携帯電話の範ちゅうからは外されている。ただし「モバイル端末」との表記の場合はタブレット型端末も含める場合もある。今項目では後述する個別区分以外では、タブレット型端末は携帯電話には含まれず、従来型携帯電話(フィーチャーフォン)やスマートフォン、そしてPHSが携帯電話に該当するものとする。

次に示すのは2017年における全体・年齢階層別のグラフ。過去1年間に一度でも携帯電話などそれぞれの端末を経由してインターネットにアクセスしたことがある人の割合を示している。例えば6~12歳では34.9%なので、調査母体のうち6~12歳全体の中で、過去1年間に携帯電話などを使って一度でもインターネットにアクセスした人の割合は3割強となる(インターネット利用についての設問そのものに無回答だった人は計算から除外してある)。

↑ モバイル端末によるインターネット利用率(過去1年間、全体比、無回答者除く、従来型携帯電話・スマートフォン・PHS)(2017年)
↑ モバイル端末によるインターネット利用率(過去1年間、全体比、無回答者除く、従来型携帯電話・スマートフォン・PHS)(2017年)

携帯電話本体の利用率やインターネットそのものの普及率同様に、携帯電話によるインターネットの利用率も成人若年層がピークで、その後は緩やかな下り坂を描いている。かつては定年退職後の年齢階層において、減少具合の急激さが見られたが、この数年は緩やかなカーブに代わっており、シニア層にも携帯経由のインターネットアクセスが地味に普及しつつあることをうかがわせる。とはいえ、定年前後の50~59歳と60~64歳との間には、やや大きめの差異が見受けられる。

また、6~12歳が4割足らず、13~19歳も20歳以降と比べて少なめなのは、多くの人が自分の収入で端末を入手できないこと、そして保護者から端末の利用許可を受けていないことが想像される。もっとも幼少時においてはタブレット型端末の利用率が伸びており、細かなレベルでの世代交代が起きているのも分かる。

これをさらに過去の調査データを用いて、5年間の推移を示したのが次のグラフ。

↑ モバイル端末によるインターネット利用率(過去1年間、全体比、無回答者除く、従来型携帯電話・スマートフォン・PHS)(直近5年間)
↑ モバイル端末によるインターネット利用率(過去1年間、全体比、無回答者除く、従来型携帯電話・スマートフォン・PHS)(直近5年間)

2015年から2016年にかけては、一部で横ばい、減退が見られるものの小規模な動きに留まり、大よその層で増加を示していた。特に6~12歳層と中年層の上昇ぶりが著しい。上昇率が穏やかなのはすでに天井感の強い若年層のみ。社会全般に、急速に携帯電話によるインターネット利用が進んだことを示唆している。

一方で直近の2017年では多くの年齢階層で前年からの値の後退が見受けられる。一部項目で全体値が落ちている件について報告書では「今回の調査では高齢者層の回答が増加したことによる回答傾向の変化などがあったことから、経年比較に際しては注意が必要」などとの但し書きがあるが、今件項目では高齢層だけで無く若年層などでも値が落ちており、留意する必要がある動きとなっている。もっとも誤差の範囲とも読み取ることも可能だが。

主要機種別にさまざまな切り口から

次に主要機種として従来型携帯電話とスマートフォン、そして上記「携帯電話」には該当しないものの、利用スタイル的には近いポジションにあるタブレット型端末について、年齢階層別、経年の変化を確認していく。

まずは直近2017年の年齢階層別動向。若年層ではスマートフォンが従来型携帯電話を凌駕しているのが分かる。

↑ モバイル端末によるインターネット利用率(過去1年間、全体比、無回答者除く、年齢階層別)(2017年)
↑ モバイル端末によるインターネット利用率(過去1年間、全体比、無回答者除く、年齢階層別)(2017年)

今件は「保有」では無く「インターネットの利用」であり、多くは保護者の端末を流用していると考えられるが、6~12歳の時点ですでに31.7%がスマートフォンを使ってインターネットにアクセスしている。これが13~19歳になると71.4%となる。すでに従来型携帯電話は少数派。20代ではさらに増え、9割に届きそう。20歳を過ぎればさすがに保護者の端末を流用する事例も少ないことから、少なく見積もっても9割近くはスマートフォン「所有者」と考えてもよい。

一方、中年層以降になると、特に60代以降はスマートフォンの利用率は大きく減る。80歳以上でスマートフォンと従来型携帯電話の利用率が逆転していることから、80歳がスマホ世代の境目と考えてもよさそうだ。

タブレット型端末利用率は少々興味深い動きを示している。最多利用率は6~12歳。中年層では無い。6~12歳では従来型携帯電話よりもタブレット型端末を使ったインターネットアクセスが多用されている、スマートフォンすら超えているのが実情。これは幼少時においてはスマートフォン同様にタブレット型端末が操作しやすく、また対応アプリケーションも数多く登場しているのが要因と考えられる。お絵かき帳やホワイトボード感覚で子供に使わせる事例も多々見られるようになった昨今の状況を、見事に裏付ける結果ともいえよう。

最後に示すのは過去7年間、2011~2017年における、全体的なインターネット利用率。概況を示すものだが、これを見てもモバイル系インターネットの主流が、確実に従来型携帯電話からスマートフォンに移行する動きを示しているのが分かる。

↑ モバイル端末によるインターネット利用率(過去1年間、全体比、前年比、無回答者除く、主要機種別)
↑ モバイル端末によるインターネット利用率(過去1年間、全体比、前年比、無回答者除く、主要機種別)

従来型携帯電話の減少と、スマートフォン・タブレット型端末の増加がほぼ同じタイミングで起きており、従来型携帯電話からスマートフォンとタブレット型端末にシフトしているようすが分かる(今件は重複回答式のため、従来型携帯電話利用者がスマートフォンとタブレット型端末のいずれかのみにシフトするわけでは無く、双方を利用している場合も多々ある)。

他方、直近の2017年ではスマートフォンとタブレット型端末ともに前年から値を落としている。上記の通り、これらの利用率の低い高齢層の回答者比率の増加によるところが大きいが、若年層でも減少が確認されており、やや気になる動きではある。単なる統計上のぶれの範囲ではあり、気にしすぎかもしれないが。

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※通信利用動向調査

2017年分は2017年11月~12月に世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送・オンラインによる調査票の配布および回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万6117世帯(4万1752人)、2592企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。過去もほぼ同様の条件下で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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