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対人口比で主要国軍事費の動向をながめ見る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 軍の維持には多額の費用が。個々の国の人口比では?(ペイレスイメージズ/アフロ)

・ストックホルム国際平和研究所の調査結果によれば全世界の軍事費総額は1兆7386億米ドル。最上位はアメリカ合衆国、次いで中国(2017年)。

・軍事費の上位国における軍事費の対人口比額では、サウジアラビアの2107.4ドルが断トツ。アメリカ合衆国の1879.3ドル、フランスの889.1ドルが続く。

・軍事費の上位国における軍事費の対人口比額は、大よその国では増加傾向にある。

国際的な軍事研究機関のストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の公開資料を基に、主要国の軍事費をそれぞれの国の人口比の視点から確認する。各国の軍事費の実情を推し量ることができよう。

SIPRIの調査の限りでは、2017年における各国軍事費(米ドル換算)でトップはアメリカ合衆国、次いで中国、そしてサウジアラビアの順となっている。

↑ 主要国軍事費(上位15位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)(2017年)
↑ 主要国軍事費(上位15位、米ドル換算、億ドル、*は推定値、SIPRI発表値)(2017年)

このグラフの結果は単純に米ドル換算での額の多い少ないを比較したもの。他方、国家間比較の話でよく持ち上がる意見の一つが「人口が多ければ国の規模も大きくなるから、大国の数字が大きくなるのも当然」とするもの。そこでそれぞれの国の軍事費を、各国の人口で除算し、国民一人あたりの軍事費を算出したのが次のグラフ。

↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2017年時点の米ドル換算、2017年時点の米ドル換算による軍事費上位10か国、ドル)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2017年時点の米ドル換算、2017年時点の米ドル換算による軍事費上位10か国、ドル)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2017年時点の米ドル換算、2017年時点の米ドル換算による軍事費上位5か国、ドル)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2017年時点の米ドル換算、2017年時点の米ドル換算による軍事費上位5か国、ドル)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2017年時点の米ドル換算、2017年時点の米ドル換算による軍事費上位6~10位の国、ドル)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2017年時点の米ドル換算、2017年時点の米ドル換算による軍事費上位6~10位の国、ドル)

対政府支出総額が大きめなサウジアラビアが、対人口額でも大きな値を示している。他方それにアメリカ合衆国が続き、あの人口をもってしてもこれだけの高額になるほど、アメリカ合衆国の軍事費が大きいことがうかがえる。

絶対額では大きな伸びを示す中国やインドだが、人口比では少額にとどまっている。日本は1人頭356.0ドル。

経年推移を見ると、軍事費の圧縮を続けるアメリカ合衆国と、円安の影響を受けた日本、ルーブルの下落で米ドル換算では失速しているロシアでこの数年減少傾向が見られるものの、それ以外の国では概して増加傾向にあることが確認できる。人口が急激に増減する事象は生じていないことから、軍事費は大よそ増加傾向にあると見てよいだろう。ただしイギリスもこの数年に限れば下落の動きを示しているのが気になるところ。

インドや中国のように多くの人口を抱える国の動向が分かりにくいのは否めない。そこで対人口比の額面がどのような変化を示したのか、該当国すべてで値を取得できる最古の1989年当時と直近の2017年の値を比較し、その増加ぶりを倍数で示したのが次のグラフ。例えばアメリカ合衆国は1.5とあるので、1989年から2017年にかけて、国民一人あたりの軍事費は1.5倍に増加(5割増し)したことになる。

↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2017年時点の米ドル換算、1989年から2017年への増加倍率。1.0=変わらず、2017年時点の米ドル換算による軍事費上位10か国)
↑ 軍事費の対人口比額(各国国民1人あたり、2017年時点の米ドル換算、1989年から2017年への増加倍率。1.0=変わらず、2017年時点の米ドル換算による軍事費上位10か国)

ロシアがむしろ減少しているのが驚き。イギリスやドイツはほぼ横ばい、日本は1.6倍。インドはやや大きめで3.8倍、サウジアラビアは2.6倍。そして中国は実に16倍以上を計上している。これもまた、各国の軍事費動向を推し量る上での指針となるに違いない。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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