電話による1日あたりの通話回数と1通話の通話時間の推移をさぐる
・1日あたりの平均通話回数は加入電話で1.4回、携帯電話・PHSで0.8回。
・1通信あたりの通信時間は加入電話で1分55秒、携帯電話・PHSで2分39秒。
・1日あたりの平均通信時間は加入電話で2分37秒、携帯電話・PHSで2分14秒。
通話による電話利用がコミュニケーションでは重要な手段の一つには違いないが、以前と比べ重要性は薄れつつある。電話による通話時間の実情を、総務省が2018年1月に発表した調査結果「通信量からみた我が国の通信利用状況-平成28年度における利用状況-」(※)の公開値を基に、1日あたりの通話回数と、1通話の時間から確認する。
まずは「1契約1日あたり平均通信回数」。要は1契約単位で、1日あたり何回音声通話が行われているか。もっとも古い記録の1994年度では加入電話(固定電話やIP電話など)が3.9回、携帯電話・PHSが2.3回。それが何度かの上下を見せながら漸減し、直近の2016年度ではそれぞれ1.4回・0.8回にまで減ってしまう。
携帯電話・PHSの全体としての通話利用回数は2011年度までは増加していたが、2012年度からは減少に転じている。その一方で1契約あたりではすでに今世紀に入ってから減少を続けている。要は1契約あたりの回数は減り続けたものの、契約数そのものの増加により、総通信回数は増え続けていたことになる。また契約数が増えて1人2台持ちの事例も増加し、その分1契約単位での回数が減ったのも、1契約あたりの回数が減った一因(2台の携帯電話を「同時に」使う人は滅多にいない)。さらに今世紀に入ってからはインターネットの普及で電子メールやSMS、各ソーシャルメディアやチャットツールに意思疎通手段が移りつつあるのも、1契約あたりの回数が減った大きな要因。
1通信、つまり1回の通話による時間の長さはどうだろうか。通話単位、さらには1日単位での通信時間を算出したのが次のグラフ。
携帯電話・PHSでは1通信あたりの通信時間では上下を繰り返しながら漸増、2008年度以降はほぼ横ばい化し、2014年度からは再び増加の動きを示している。
携帯電話・PHSにおける1通信あたりの通信時間が伸びている理由は今報告書では明らかにされていないが、固定電話の契約数は相変わらず減っていることから、固定電話で長時間利用するスタイルの人も、携帯電話にシフトした結果の可能性がある。また、PHSの契約数も2014年初頭をピークに急速に減少中であり、PHSは音声通話の安さがセールスポイントだったことを併せ考えると、むしろ固定電話よりPHSの利用者が携帯電話に移行した結果だと考えた方がスマートに思える。
携帯電話・PHSの1通信あたりの時間などは増加を見せているが、1契約1日あたり平均通信時間中は長期的には減少中。固定電話では減少に歯止めがかからない状態。この状況に関して報告書では特に説明は無い。また、報告書は音声通話関連のデータのみの収録のため、電子メール・SMS・ソーシャルメディアなど非音声によるコミュニケーションの頻度・量の増減は分からない。
しかし各サービスの普及や利用率の高まりは、他調査で多数裏付けが行われている。人々のコミュニケーションそのものが減っているのでは無く、固定電話・携帯電話の音声通話による減退とともに・連動して、携帯電話(やパソコンなど)のデジタルコミュニケーションの増加が起きているのは間違いない。
質や様態の変化は別として、人は相変わらず他の人とのコミュニケーションを、つながりの確認を欲する生物であることに変わりは無いようだ。
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※通信量からみた我が国の通信利用状況-平成28年度における利用状況-
日本国内の電気通信事業者からの報告を取りまとめたもので、対象事業者は兼業している事業者も含め発信側で仕切ると、固定系関係9社、ISDN系8社、公衆電話系4社、IP電話系22社、携帯電話系11社、PHS系7社、国際電話関係8社。過去の調査結果も同様の様式で取りまとめられている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。