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日本から主要5か国への親近感推移をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 日本から見た諸外国への親近感は?(写真:アフロ)

・日本の対米親近感は高いままで推移。

・対中親近感はかつて対米と同程度だったが漸減。最近では主要国中最低の値を対露と競り合う構図に。

・対中親近感はほぼ主要国中最低のまま。対韓は前世紀末から2011年ぐらいまでは上昇、それ以降は下落。

内閣府が定期的に調査・発表している「外交に関する世論調査」(※)では、日本の諸外国への親近感を公開している。米露中韓印に的を絞り、その長期的な推移を確認する。

今調査では対象国に対する親近感に関して回答者に「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」「分からない」「どちらかというと親しみを感じない」「親しみを感じない」の5選択肢を提示し、その中から1つを選んでもらっている。今件ではこのうち前者2つ「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」を合わせた値を「親近感」と位置付け、その推移を見たもの。なおインドは1991年から2007年は「南西アジア諸国(インド、パキスタンなど)」と尋ねているため、厳密には連続性は無い。

↑ 主要国への親近感推移(「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」の合計)
↑ 主要国への親近感推移(「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」の合計)

米国への好感度は押し並べて高い。一方中国は全体的に右下がりで、この30年ほどの間に1/2から1/3ほどまでに減少しているのが一目瞭然。ここ1、2年の持ち直しも、トレンド転換を予見させるレベルのものでは無いことが分かる。

ロシアは10%強を低空飛行したまま。1990年前後に一時的に盛り上がりを見せたが、すぐに急降下。2000年前後からは再び上昇しているが、これはプーチン政権の発足と対日融和政策によるところが大きい。さらに2012年以降は再び大きく上昇を見せているのが興味深い。ロシアの大統領選挙が2012年3月に実施され、ウラジミール・プーチン氏が当選したこと、それに伴いプーチン氏が再び日本のメディアに登場し、好意的な印象を与えているのが継続して影響しているものと考えられる。

最近では2014年に発生したウクライナ騒乱、クリミア危機、さらにはロシアの直接・間接的軍事侵攻報道から負のイメージが生じた結果として、同年以降は下落を示している。

韓国やインドは基準値こそ違えども同じようなカーブを描いて上昇中。ただし2009年以降韓国は頭打ち、そして2011年から2012年にかけて大幅な下落を記録し、2014年もさらなる急落、2015年以降はようやく持ち直しの雰囲気を見せている。

中国は尖閣諸島と反日暴動、ガス田、小笠原諸島のサンゴ違法搾取、沖縄や尖閣諸島などの問題をはじめとする日中間の直接の対立に加え、南シナ海の人工島造成問題など、韓国は竹島、さらに双方の国とも強圧的・理不尽・理不尽な外交姿勢・対日経済施策が大きく影響しているものと考えれば、2012年以降における急落の納得はできる。

ここ1、2年の上昇ぶりは報道頻度など情報の伝達ウェイトが軽減した結果によるところが大きく、中韓それぞれに対する親近感減退の要因が解決に向けて動いているわけでは無いことを留意しておく必要がある。

注意すべきは「親しみを持たない」が「マイナスのイメージを持つ」には直結しないこと。単に親近感を持つ・持たないに関して判断するだけの材料が無い、認識度が薄い可能性もある。ロシアをはじめとした旧共産国や日本から距離的に遠い国で親近感が薄いのは、多分になじみが薄いのも一因なのだろう。

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※外交に関する世論調査

直近分は2017年10月26日から11月5日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は1803人。男女比は839対964、年齢階層別構成比は10代39人・20代129人・30代200人・40代308人・50代249人・60代402人・70代以上476人。過去も類似の方法で実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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