「大きな明日」な雑誌が休刊に…ビジネス・金融・マネー系雑誌部数動向をさぐる

↑ スピード感の重要性がより高まったビジネス界。その専門誌は…?!(写真:アフロ)

「プレジデント」一強状態

インターネットやスマートフォンの普及で、時間との戦いが熱いものとなりつつあるビジネス、金融業界。その分野の専門雑誌の部数動向の実情を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(該当四半期の1号あたりの平均印刷部数。印刷数が証明されたもので、出版社の自称・公称部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む)からさぐる。

最初に精査するのは、直近分にあたる2017年の7~9月期とその前四半期に該当する、2017年4~6月期における部数。

↑ 2017年4~6月期と2017年7~9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷証明付き部数
↑ 2017年4~6月期と2017年7~9月期のビジネス・金融・マネー誌の印刷証明付き部数

不定期刊の「¥en SPA!」は今回顔を見せていない(2017年6月15日発売が発売中の号では最新号のため、今回の期間では該当しないことから、グラフでは省略している。次号は同年11月14日発売予定)。何か新規雑誌を追加したいところではあるが、該当ジャンルで合致しそうな雑誌は他に無いのが残念。

他方、月刊ビジネス誌「BIG tomorrow」が今四半期からデータが非公開化された。確認したところ【青春出版社 広告部からのご報告】にある通り、2017年11月25日発売号で休刊とのこと。インターネットへの媒体シフトの話も現時点では見受けられず、文字通りの完全休刊となるようだ。

↑ BIG tomorrow印刷証明付き部数(2017年7~9月期まで)
↑ BIG tomorrow印刷証明付き部数(2017年7~9月期まで)

部数は下落基調だが、他雑誌と比べても下げ幅は緩やかで、2013年からはほぼ横ばいに推移。部数の低迷も一因だろうが、むしろリソースの効率的な投入を行うため、優先順位が低い当誌を休刊とした可能性は高い。今後の動向には大いに注目したい。

対象誌の中では「PRESIDENT(プレジデント)」が前四半期から継続する形でトップ。部数上で第2位となる「週刊ダイヤモンド」とは2倍強もの差をつけている。その「PRESIDENT」の部数だが、2013年後半から上昇傾向が始まり、2015年第1四半期をピークとしたあとは少し値を落として踊り場状態となっていた。その後、2016年に入ってから大きく下落し、2013年までの沈滞期と比べれば5万分ほどの上乗せをした形で、安定期に突入した雰囲気だった。そして3四半期前に大きな伸びを見せ、直近でもいくぶん値を落とした程度。部数は安定的な状況になりつつある。

↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2017年7~9月期まで)
↑ PRESIDENT印刷証明付き部数(2017年7~9月期まで)

同誌は昨今ではヒット企画の号で大きく背伸びをし、その余韻を楽しみながら次のヒットの創生を目指すスタイルのように見える。良い成長パターンを見つけたのだろう。

全誌マイナス…前四半期比較

次に示すのは各誌における、四半期間の印刷証明付き部数の変移。前四半期の値からどれほどの変化をしたかを算出している。季節による需要動向の変化を無視した値のため、各雑誌の実情とのぶれがあるものの、手短に各雑誌の状態を知るのには適している。なお「¥en SPA!」は今四半期には刊行されなかったため、グラフ上にはその姿は無い。

↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2017年7~9月、前期比)
↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2017年7~9月、前期比)

今四半期ではプラス領域はゼロ誌、マイナス領域は5誌。誤差領域(プラスマイナス5%内の振れ幅)を超えたのは「THE21」と「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」の2誌。双方とも前四半期で部数を上げたため、その反動による下げが生じている。

↑ DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー印刷証明付き部数
↑ DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー印刷証明付き部数

もっとも「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」は元々部数が低迷している中で、前四半期と2四半期前にやや盛り上がりを見せ、直近期ではその反動以上の下げを示しているのが気になるところ。具体的な減少部数は1833部だが、元々の印刷実績が少なめのため、大きな変化率が生じてしまうのは痛いところではある。

前年同期比動向はどうだろうか

続いて前年同四半期を算出。こちらは前年の同期の値との比較となることから、季節変動の影響は考えなくてよい。年ベースでの動きなためにやや大雑把とはなるものの、より確証度の高い雑誌の勢いを把握できる。

↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2017年7~9月、前年同期比)
↑ 雑誌印刷証明付き部数変化率(ビジネス・金融・マネー誌)(2017年7~9月、前年同期比)

プラスは「PRESIDENT」と「THE21」、マイナスは「週刊東洋経済」「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」「週刊ダイヤモンド」の3誌。「PRESIDENT」がずば抜けた伸びを示しているが、これは上記グラフにある通り、3四半期前に大きく伸びた部数の余韻を受けての結果。

部数そのものではトップの「PRESIDENT」に続く「週刊ダイヤモンド」は、今四半期では誤差領域を超えたマイナス。中長期的な動向としては安定期にあるが、今回の下げの動きはやや気になるところではある。

今四半期で休刊決定の発表が行われ部数の非公開が決まった「BIG tomorrow」は、特に雑誌の方針変更や評判が悪くなったとの話も無い。電子書籍版も展開されており、部数も極端な低迷をしていたわけでも無い。それゆえに、突然の休刊には驚かされるものがある。何か内なる思惑があるのかもしれない。

コミック系雑誌で多分に進んでいる、定期刊行の雑誌の時点における電子雑誌化も、今ジャンルでも少しずつだが確実に歩みを進めている。例えば「週刊ダイヤモンド」では現在紙媒体の本誌と同じレイアウトでページめくりをしながらの電子雑誌を読むことができ、さらにバックナンバーの記事PDFを精査できるサービスが、定期購読者向けに提供されている。

ただしこのサービスはあくまでも紙媒体の読者へ対する付随サービスで、独自のコンテンツ提供では無い(紙媒体のみ、電子媒体のみの販売スタイルにあらず)。「電子版を読みたければ紙媒体版を買いなさい」である。もう少し電子媒体に関わる環境に変化が生じてくれば、コミック誌同様に「電子媒体のみの販売」を行うビジネス雑誌も一般化することだろう。それゆえに電子書籍版も展開されていた「BIG tomorrow」の休刊決定は、つくづく残念ではある。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。