出版社と売上高の関係をさぐる
「出版不況」と呼ばれて久しいが、出版物を創生し市場に送り出すおおもととなる、出版社とその売上はどのような状況なのだろうか。その実情を日販による『出版物販売額の実態』最新版(2017年版)のデータを基に確認する。
まず最初は出版社総数と、それらの出版社全体の総売上高。
この16年間で売り上げは5割近くも減少。出版社数も漸減しているが、それ以上のペースで売上が落ちているのが分かる。出版社の業界は企業規模・売上が少数大手に偏っているため、さほど大きな意味はないのだが、参考までに1社あたりの平均売上高を算出すると、売上の減り具合があらためて認識できる。
より有意義なのは次のグラフ。売上高と企業数それぞれについて、前年比をグラフ化したものだが、企業数推移(赤線)が大よそマイナス1%から2%に留まっているのに対し、売上高の推移(青線)がそれを超えたマイナス値で動いているのが確認できる。「企業数が減っているのだから売上高も減って当然」との説明はそれほど大きな意味を成さない。直近年では企業数も大きく減っているが、これはデータ取得元の変更による可能性が否定できない。次年以降でその仮説が正しいか否かが判断できるはず。
要は全体的には企業数の規模縮小以上のスピードで、総売上高の縮小が起きている次第である。
最後は出版社の売上高規模別に仕切り分けした上での、その企業数と出版社総売上高に対する構成比。寡占化がどこまで進んでいるのかを視認できる。
2016年においては計測対象の出版社は3370社。そのうち売上高が100億円以上の企業は全企業数の0.9%(30社)でしかないが、その0.9%の数の企業による売上高は総売上高の43.0%になる。10億円以上で仕切り分けすれば企業数では7.0%だが、売上高では77.2%と3/4すら超える。売上高1億円未満の企業は企業数で64.3%と2/3近くに達しているが、それらの売上をすべて合わせても、総売上高の4.3%でしかない。
公開されている限りの決算を見比べると、売上上位の企業の方がそれより下の企業と比べ、業績は良い傾向にある。スケールメリットを活かし、リスクを取ることができ、マルチメディアな展開も容易なので、売上を伸ばせる可能性が飛躍的に高まるからに他ならない。このメリットが有効である以上、今後も寡占化は進行するものと考えられる。寡占化には賛否両論があるものの、出版業界全体の動向を推し量れば、規模の拡大化によって難局を押し切るのも一つの方法論といえよう。
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※各グラフで最新年度以外の数字が表記されていませんが、これは資料提供側の指示によるものです。何卒ご理解ください
(C)日販 営業推進室 書店サポートチーム「出版物販売額の実態 2017」
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。