定額制動画配信市場は1249.0億ドル…世界の動画・音楽配信の市場規模実情(2024年公開版)
インターネットとスマートフォンの普及で大きく市場が拡大しつつある動画や音楽配信市場。その実情と近未来の予想を、総務省が2024年7月に発表した情報通信白書から確認する。
最初に示すのは、世界の動画配信市場の規模や契約数の現状と2026年までの予想。2023年までが確定値で2024年以降は予想値。データの一次ソースはイギリスに本社を置く情報事業の多国籍企業Informa社のハイテク関連産業調査部門Omdiaとなっている。
インターネットによる配信ビジネスではどの国、どの業界でもおおよそ似たような流れを示しているが、動画配信も当初は無料で提供・広告収入で利益を得るような、広告収入型のモデルが主流だった。有料配信ができるほどの品質も、利用客も確保するのが難しいとの思惑によるものだろう。しかし技術の進歩による動画の品質向上とインターネット利用者そのものの増加に伴い、有料の配信サービスが認識され、利用される機会も増えてくる。
また有料配信サービスもDVDなどの有形媒体によるビジネスのような、作品単位のダウンロード課金から、定額制で一定枠内のコンテンツを自由に選択して何度でも視聴できるサブスクリプションのスタイルが多く使われるようになっている。
あくまでもOmdiaの予測だが、今後も売り切り的な動画配信よりも、定額制による視聴環境提供型の動画配信ビジネスの方が成長率は高く、利用者も伸び続けるようだ。2015年時点で定額制の売上は動画配信の売上全体の70.3%でしかなかったが、2026年の予想値では実に95.2%にまで達している。
音楽配信市場ではより顕著な形で、ビジネスモデルの大規模なシフトが確認できる。
日本の音楽市場に限っても、物理メディア市場の低迷、デジタル配信市場が従来型携帯電話向けからパソコンやスマートフォン用の買取型ダウンロード販売へ、そしてダウンロード販売から定額制の聴き放題環境提供型(サブスクリプション)へと劇的な変化を示している。その動きは何も日本に限った話ではなく、世界的な傾向のようだ。
Omdiaの観測では売上の点で2016年の時点でダウンロード販売と定額制の売上額が逆転し、その後も差は開くばかりであるとしている。音楽配信では2015年時点で定額制の売上は全体の43.9%でしかなかったが、2026年の予想値では98.4%。利用実情や日本の市場動向を見る限りでは、これですら抑えた予想の値の感すらある。
食事や衣服、趣味の他ジャンルでも同様の発想は容易にできるのだが、飛びきりのお気に入りの対象を一点買いするケースは少なくないものの、それ以外ならばおおよそ自分の思惑に当てはまるような内容であれば、どのようなものでも大体満足してしまう。バイキング料理を楽しむようなものだ。人の好き嫌いの特性の上では、定額制は理想のサービス形式の一つなのだろう。
他方定額制では構成される創作物への対価が十分ではないとの指摘も多い(元々単品買いによるリターンを前提としていたのだから当然だが)。定額制サービスの普及が進むにつれ、作り手と配信サイドとの間のあつれきの解消方法が、今後大きな課題となるに違いない。
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