サラリーマンのおこづかい防衛作戦2017
節約方法トップは「昼食代を削る」
多くのサラリーマンにとってこづかいはもっとも身近で、自分自身に大きな直接的影響を与える金銭問題となる。そのこづかいが自分の望む額でない場合(大抵の場合願望は満たされることは無い)、多種多様な工夫を凝らし、節約をすることになる。今回は新生銀行が毎年発表している、サラリーマンのおこづかい事情を調査した定点観測の報告書の最新版にあたる「2017年サラリーマンのお小遣い調査」(※)などを元に、サラリーマンにおけるこづかいの防衛作戦の実態を確認する。
今報告書によればサラリーマンの直近における平均こづかい額は3万7428円(月額)となり、昨年と比べてわずかだがダウンする形となった。
個々の金銭感覚や消費実情はそれぞれだが、この額では不足する人も多分にいる。必要経費に近い昼食代、携帯電話料金などを差し引くと、自分の自由意思をある程度以上反映できる余剰資金にどれだけ残せるかを考えれば、容易に想像はできる。
「おこづかいが足りない、首が回らない」。その際、どのような工夫・節約で「こづかい防衛」を果たしているのだろうか。やりくりをしている人は全体で8割近く。20代に限れば8割を超えている。
そこでやりくりをしている人に限定し、上位項目について年齢階層別に区分し、グラフ化したのが次の図。全体、そして各階層でも「昼食代(を削る)」がもっとも多く3割台の結果が出た。
20代の昼食代節約率は4割台と高め。弁当持参が難しい未婚者の率は若年層では高く、社員食堂の利用機会があればそちらを利用している感は強い。社員食堂を利用できる環境下にあるのなら、外食や購入弁当よりも廉価で昼食を取ることが容易だからだ。
続く回答は「飲む回数(を減らす)」。大よそ1/4。サラリーマンにとっては昼食同様、数少ない憩いの場、息抜きの時間であることから、それを減らさねばならないのはよほどの苦痛に違いない。
「弁当持参」は全体で22.6%。大よそ若年層ほど高い値。中堅層以降では既婚者の率は高く、持参できる可能性は上がるはずだが(子供向けのお弁当と一緒に作るパターンは少なくない)、実際には値が低くなるのは、気恥ずかしさや見栄があるのかもしれない。似たような選択肢で「水筒持参」もあるが、傾向は「弁当持参」とはやや異なり、中堅層が一番高め。とはいえ、実質的には2割強でさほど変わらず。50代だけが1割台と落ち込んでいるのが興味深い。
続いてほぼ同率で上位入りしているのは「衝動買い」。ちょっとしたもののはずみ、勢いに任せてサービスを受けたり商品を購入してしまう行動を、できるだけセーブする心がけ。普段衝動買いの機会が多い人ほど、それをひかえる・止めることでこづかい防衛の効果が出ることを考えれば、効果がある手段として多くの人が選択しているのも道理は通る。
節約しても足りなかったらどうしよう
出費がかさむ、あるいは支出したいものがある、しかし節約しただけではどうしても足りない。その場合、どのようにしてその資金をねん出するのか。サラリーマン諸氏におけるもっとも多くの人が同意した回答は、「使わずに我慢」だった。大体6割強の人が「こつがいが足りない時は我慢して使わない」と答えている。
後述するが「使わずに我慢」は数年ほど前の景況感の悪化時には、増加の傾向を示していた。もっと、減少に転じた昨今でも他の項目と比べれば、群を抜いて高い値を示していることに違いは無い。50代でやや値が落ちているのは、今年の50代は金銭的に恵まれている感があるため、我慢をせずともどうにかできるとの思惑が強いのだろう。
次いで多いのは「預貯金の取り崩し」「家計からねん出」。不足理由次第だが、一時的な出費、突発事項による不足の場合(例えば友達の結婚式へのお呼ばれ)ならば、それも仕方あるまい。「家計からねん出」は50代が大きく伸びており、少なくとも今年の調査におけるこの層の家計そのものの豊かさを覚えさせる。
2013年調査分から項目に加わった「副収入」(ポイントサイト、株式投資、FXやネットオークションなど。2017年分では「アルバイト」は別項目として分離しており、こちらは2.2%)は6.2%。ねん出できる点で、意外に多いものだと関心させられる。これらの手段は必ずしも「収入」が手に入るとは限らないからだ。むしろさらにこづかいが減る可能性も十分にある。
このねん出方法の上位陣、気になる項目につき、経年変化を見たのが次のグラフ(2014年分の「アルバイト」は、「副収入」そのものの回答値とその具体的配分から逆算して値を算出している)。
「預貯金の取り崩し」「家計からねん出」「クレカ利用」のような、他方面から融通する方法は中期的に減少している。一方で「使わずに我慢」は2011年から2012年にかけて大きく上昇した後は高止まりにある。この上昇が始まった2011年は、こづかい額が大きく減少した2010年の翌年にあたり、こづかい実額の大削減を受けて、サラリーマンにおいて心境の大きな変化が生じたことを示している。具体的には「やりくりしてもどうにかなる額ではないので、あきらめよう」といったところか。
出費上の我慢は浪費を防げるとの考え方もできるが、同時にストレスは溜まる。浪費を奨励するわけではないが、6割強が「足りなかったら我慢する」との状況は、健全か否かについて判断に苦しむレベルである。見方を変えればこの値が、2010年当時の50%台にまで低下すれば、サラリーマンのおこづかい事情も改善の兆しが見えてくると考えればよいのだろうか。あるいはサラリーマンの心情そのものに大きな変化が生じ、この値は上値のまま半固定されてしまうかもしれないが。
■関連記事:
※2017年サラリーマンのお小遣い調査
今調査は2017年4月7日から9日にインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2714人。男女正規就業者に加え、男女パート・アルバイト就業者も含む。公開資料で多分を占める会社員(正社員以外に契約・派遣社員も含む)は男性1252人・女性789人。年齢階層別構成比は20代から50代まで10歳区切りでほぼ均等割り当て(実社員数をもとにしたウェイトバックはかけられていないので、全体値では実情と比べて偏りを示している場合がある)。未婚・既婚比は男性が43.6対56.4、女性は64.9対35.1。なお今調査は1979年からほぼ定点観測的に行われているが、毎年同じ人物を調査しているわけではないことに注意。