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対自動車が8割強…自転車交通事故の相手の推移

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自転車乗りでなくとも事故に遭遇した経験を持つ人はいるはず(ペイレスイメージズ/アフロ)

自転車事故件数は減少継続中

エコブームやガソリン代の家計への負担増、健康志向の高まりや災害発生時のリスク回避など、多様な理由で自転車への注目が高まる中、その自転車を起因とした事故についても論議の対象となることが増えている。死亡事案以外も含めた事故全体はどのような状況なのか。警察庁の公開資料から確認する。

次以降に示すのは当局に報告された自転車乗用者による交通事故の発生件数を多方面から眺めたもの。グラフに記載されている「第1当事者」「第2当事者」とは、「第1当事者…事故車両で過失の重い側、同じ程度ならけがの程度が軽い側」「第2当事者…第1当事者以外」(双方とも「最初に」事故に関与した車両)を意味する。イメージ的には該当事故における、加害側的なポジション。

まずは経年の事故件数推移。対自動車件数が多く他の項目の値があまりにも小さくてサイズ的につぶれがちとなるため、全体のグラフだけでなく、対自動車項目をのぞいたグラフを併記する。

↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数の推移(相手の当事者別)(~2016年)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数の推移(相手の当事者別)(~2016年)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数の推移(相手の当事者別)(対自動車除く)(~2016年)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数の推移(相手の当事者別)(対自動車除く)(~2016年)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(相手の当事者別)(2016年)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数(相手の当事者別)(2016年)

自転車事故では対自動車の事故が最多であることに違いはないが、その数は2004年をピークに減少傾向にある。また、二輪車(バイク)や自転車相互、自転車単独の事故も減少中。一方で対歩行者事故数(緑色部分)の減り方が鈍いのが目に留まる。

ピーク時の年間総発生件数は18万8000件ほど。直近の2016年はそこから9万7500件ほど少ない9万0800件ほどに留まっている。割合としてほぼ半減。10年強の間に随分と減少したことになる。各方面の努力のたまものに他ならない。

全事故に対するシェア推移

これを各年の総自転車乗用車による事故発生件数に占める、各項目の件数比率を算出した上でグラフにしたのが次の図。やはり対自動車件数が最多となり、他の項目を圧迫してしまうため、対自動車件数比率をのぞいたグラフも併記している(後者のグラフは当然、合計が100%にはならない)。

↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数の推移(相手の当事者別)(全体比)(~2016年)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数の推移(相手の当事者別)(全体比)(~2016年)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数の推移(相手の当事者別)(全体比)(除く自動車)(~2016年)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数の推移(相手の当事者別)(全体比)(除く自動車)(~2016年)

事故全体に占める比率でも、一部で問題視されている対バイク(二輪車)事故は減少している。一方で対自動車が2007年~2008年を底に再び増加。そして対歩行者、自転車相互の比率が継続的に増加しているのが気になるところ。

特に対歩行者事故は2008年頃まで絶対数も増加していた。直近数年においてようやく横ばいから減少傾向に転じつつある。とはいえその歩みは緩やかで、事故全体数の減少の勢いと比べればはるかにゆっくりとしたものであることから、各年の全体値に対するシェアは減少するどころか漸増してしまっている。直近の2016年では件数が大きく減ったことを受け、全体比も横ばいの値動きを示したのは幸いではある。

↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数の推移(相手の当事者別)(対歩行者)(~2016年)
↑ 自転車乗用者(第1・2当事者)の交通事故発生件数の推移(相手の当事者別)(対歩行者)(~2016年)

昨今では自転車専用・優先レーンの増設も多々見受けられるが、それでも環境整備の進捗は社会全体の状況変化に追い付いていない感は強い。自転車も歩行者も共に、くれぐれも注意してほしいものだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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