Yahoo!ニュース

ガムは4割近くの減少…今世紀のお菓子の販売動向を確認する

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ お店に並ぶお菓子たち。その販売実績はトレンドにも多分に影響される(写真:アフロ)

生活にうるおいを与えてくれる数々のお菓子たち。その販売実績はどのような変化を見せているのだろうか。全日本菓子協会の公開資料から確認していく。

直近となる2016年分の年次小売金額実績の上では、チョコレートがもっとも金額的に売れており、次いで和生菓子、洋生菓子が続いている。

↑ 菓子小売金額(2016年、億円)
↑ 菓子小売金額(2016年、億円)

それでは過去はどのような売上高を示していたのか。その推移を示したのが次のグラフ。2001年以降の各種類別売上高を単純に折れ線グラフにしている。

↑ 種類別・お菓子の小売金額推移(億円)
↑ 種類別・お菓子の小売金額推移(億円)

今世紀の動向としては2007年夏に始まる金融危機、リーマンショックなどの不況、そして2011年の震災やその後の超絶円高不況など、多くの経済的な揺り動かしをもたらす事象が発生し、その影響が多分に生じている。実際、2007年から2008年以降、右肩下がりを示している項目が複数確認できる。とはいえ、短期間で大きな変化は見られない。

一方、10年以上の経過を見るに、各種類の好調・不調さが全体の雰囲気からにじみ出ているのが読み取れる。例えばチョコレートは震災以降成長期に入っている、スナック菓子や米菓は2004年以降確実に成長を続けている、洋生菓子は2008年あたりから減退に向けて動いていたが直近でいくぶん盛り返しを見せている、チューインガムは2003年以降下落の一途をたどっているなどである。

とはいえ、元々ベースとなる額面が異なるため、それぞれの種類を一度にまとめたのでは、さすがに個々の種類毎の状況が把握しにくい。そこで個々の種類別にもっとも古い値の2001年の売上高を基準値の100.0%とし、2002年以降はどのくらいの額に変化したか、つまり「2001年比(前年比では無いことに注意)」をグラフ化したのが次の図。これなら種類別の動向がよく分かる。また直近年の値との変化比率も合わせて計算した。

↑ 種類別・お菓子の小売金額推移(2001年の額を100%とした時の推移)
↑ 種類別・お菓子の小売金額推移(2001年の額を100%とした時の推移)
↑ 種類別・お菓子の小売金額推移(2001年の額を100%とした時の増減率、2016年)
↑ 種類別・お菓子の小売金額推移(2001年の額を100%とした時の増減率、2016年)

昔から世間一般に普及しているお菓子の代表格ともいえる「せんべい」は一様に下げ続けている。ここ1、2年で盛り返しを見せているのが幸いか。一方で類似品ともいえる「米菓」は年々順調な伸びを示しており、あるいはシンプルな「せんべい」から、より変化の富んだ「米菓」へと趣向がシフトしている可能性が見えてくる。

さらに2014年から2015年では多くの項目で増加が生じている。これは消費税率の引き上げや原材料の高等化に伴う値上げ、景況感の回復に連動したお菓子需要の増大など複数の要因によるもの。見方を変えればそれらの条件下においても下げ続けている洋生菓子やチューイングガムの状況が、極めて好ましくないのも把握できる。

プラス圏とマイナス圏で区分すると、「飴菓子」「チョコレート」「ビスケット」「米菓」「スナック菓子」「油菓子」はプラス圏、「チューイングガム」「せんべい」「和生菓子」「洋生菓子」はマイナス圏での推移となる。さらに2007年の景気後退開始以降、「ビスケット」「油菓子」のトレンドが下げに転じた雰囲気を見せ、「チョコレート」は逆にプラスに転じている。その後2012年から2013年以降は景況感の回復と共に、「チョコレート」は伸び方を加速化し、「ビスケット」などは減退から横ばい、そしてゆるやかな増加に復調している。景気はお菓子の需要にも少なからぬ影響を与えていることを再確認させられる。

また、「せんべい」「チューイングガム」の下落傾向は深刻。「せんべい」は直近年では戻しを見せたが、「チューイングガム」は10年強の間に売り上げを4割近くも落としてしまっている。高齢化に伴う市場全体における消費性向の大規模な変化も一因だが、幼少期の子供達の間にもガム離れが生じており、原因は年齢構成の変化のみに留まらない。昨今のガム業界ではしきりに大きなプロモーションを実施したり、奇抜な発想の新商品が送り出されているが、その理由の一端がこのグラフに表れている。

単価が安くて容易に心の安らぎを得られるお菓子類、特に甘味の強いチョコレートなどは、比較的不景気の影響を受けにくい。さすがに砂糖をはじめとする原材料の高騰などは要因として避けられないが、それでも他の小売商品と比べれば、景気による売り上げ減は最小限のものに留まっている。むしろ売り上げを地道に伸ばす種類もある。

画像

企業としては利益を得なければならず、売り上げだけで万事OKではない。しかし最低限の条件として、売り上げを得ることが欠かせないのもまた事実。その観点で考えれば、もちろん努力は重ねているとはいえ、「総額」の値がほぼ100%を維持しているお菓子業界は、比較的手堅い業界といえよう。同時に、ここ数年の上昇は原材料の高騰化や消費税率の引き上げも一因なため、市場規模の金額的拡大は果たしても、収益状況の改善が成されたかについては分からない。

他方、周囲環境の変化による影響も多分に受け、内部的シェアが大きく様変わりしているのも見逃せない。売上を伸ばす種類と落とす種類が二分化する昨今、数年後に各お菓子の種類のシェアはどのように変化を遂げているのだろうか。そのような想いを抱きながらスーパーやコンビニのお菓子コーナーを眺めると、より楽しい買い物ができそうではある。

■関連記事:

コンビニ入店のきっかけになる商品、つい衝動買いしてしまう商品とは

業界規模は3兆3609億円・お菓子の売れゆき具合をグラフ化してみる

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事