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日本の米国への親近感は84%、対中・対韓親近感は前年からやや回復へ

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 日本から見た諸外国への親近感の度合いは(ペイレスイメージズ/アフロ)

一番親近感のある国は米国

内閣府は2016年12月26日、外交に関する世論調査(※)を発表した。その内容によると調査時点においてアメリカ合衆国への親近感を抱いている人は8割を超え、84.1%に達していることが分かった。去年の値84.4%と比べると0.3%ポイント下落したが、諸外国中では最高値の立ち位置にある。今回はその実情を確認していく。

諸外国、あるいは地域毎に親しみを抱いているか否かに関して、「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」「分からない」「どちらかというと親しみを感じない」「親しみを感じない」の5選択肢を提示、その中から自分の心境にもっとも近いもの一つを選んでもらい、その結果を集計したものが次のグラフ。

↑ 諸外国との親近感(2016年)
↑ 諸外国との親近感(2016年)

留意すべきは赤系統色の回答部分の解釈。「(どちらかというと)親しみを感じない」は回答者の心境的に「親しみの対象にならない」(無関心的な部分。「分からない」とは異なる)と「憎悪の対象となる」の2通りに読むことができる、可能性として存在すること。赤系統の回答率が多い国・地域が、日本から「憎まれている」との解釈には必ずしもたどり着かない。単に好まれていない、親しみを覚える対象にはならないだけの話。「好きではない」と「嫌い」が同一ではないのと同じである。

結果を見るとまず目に留まるのが、アメリカ合衆国への親近感の高さ。親しみを覚えない人は1割強でしかなく、今回の提示された国などではもっとも少ない。これは元々同国との間には親密な関係が継続されていたのに加え、2011年3月の東日本大地震・震災における「オペレーション・トモダチ」をはじめとした、同国による大規模な救援活動の実態を見聞き、あるいは実際に支援を受けた結果によるところが大きい。同作戦から6年が経過し、印象が薄れてきた感もあるが、高水準を維持していることに違いはない。

次いで親近感の上で高い値を示しているのはインド。距離的に身近なことに加え、実生活でも接する機会が多い、さらに対中問題などで昨今日本との交友を深めている点などが数字に表れているものと考えられる。あるいは「あまり悪いイメージは持たないし、受けた話も聞かない。それなりに良い付き合いをしているのでは」との「何となく、良い隣人」的な印象なのかもしれない。その点では距離的には離れているが、中南米・カリブ諸国も同様なのだろう。他方、先日のオリンピック関連で、ブラジルには好意的な既知感が多分にあり、それが影響している可能性もある。

ロシアや中国など、いわゆる(元)共産圏諸国との親近感は大よそ薄め。そしてここ数年大きな下落傾向にある中国・韓国だが、今年は前回調査年(2015年実施)と比べると、両国とも値をやや持ち直しを示している。しかし中国は今回例示された主要諸外国の間で、親近感を持たれる率がもっとも低い結果が出ていることに変わりはない。中国では「親しみを感じない」との強い非親近感(上記にある通り「拒絶感」と同意ではない)の項目では他の国を抜きんでて46.0%となり、高率を示しているのも印象的ではある。

前年分からの変移

好意的な選択肢「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」を足した値を「親近感」と設定。そして今回2016年と前回2015年調査分双方で選択肢として挙げられた国に関して、その変移を算出した結果が次のグラフ。細かい変移を参照できるよう、米中韓に限定してではあるが、詳細区分を再整理したものも併記する。

↑ 諸外国との親近感(好感的意見合計値の、2016年における前回調査との差異)
↑ 諸外国との親近感(好感的意見合計値の、2016年における前回調査との差異)
↑ 諸外国との親近感(対米中韓限定)
↑ 諸外国との親近感(対米中韓限定)

韓国は大きく増加、ロシアと中国も増加し、親近感が底上げされているのが分かる。アメリカ合衆国は減少しているが、これは誤差の範囲。他方、インドは誤差を超える幅でやや下がっているのが気になるところ。

中韓に関して内情を見ると、特定の回答区分で大きな変化が生じているわけではなく、それぞれにおいて感じる派が微増し、感じない派が微減しているのが分かる。ただし中国では「どちらかというと親しみを感じない」は微増しており、韓国とはやや異なる動きであることがうかがえる。

前回調査時には沖縄や尖閣諸島などの問題をはじめとする日中間の直接の対立に加え、南シナ海の人工島造成問題をはじめとした中国による軍事的・領土的侵略行為が大きく伝えられたこともあり、中国への親近感は低迷したままだった。状況は今なお変化が無いどころか悪化しているのが実情だが、一般報道における伝えられ方の変化(ニュースソースとしての新鮮味の観点から優先順位が下がった)が、親近感にも影響を与えた可能性は否定できない。

詳細は別の機会に解説するが、中国への親近感は今回調査でやや回復したものの、ここ数年は低い値を続けていることに変わりはない。昨今の動向をかんがみれば、それもある程度納得ができてしまうものである。

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※外交に関する世論調査

2016年10月27日から11月6日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は1804人。男女比は848対956、世代構成比は10代28人・20代133人・30代206人・40代304人・50代281人・60代383人・70代以上469人。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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