20代世帯では1割強…現在の固定電話の保有状況
全体では8割を切る固定電話保有世帯
携帯の高性能化と普及が進むに連れ、少なくとも一般の世帯において電話の利用スタイルは世帯単位から個人単位へと変わり、固定電話の必要性は大きく減少している。若年層では実家を離れ一人暮らし・独立世帯化する際に、固定電話の契約をしない事例も増えている。それでは現状として、固定電話はどの程度浸透を維持しているのか。総務省が2016年8月に詳細値を発表した「通信利用動向調査」の公開値を基に、日本における世帯ベースでの固定電話の保有状況を確認していく。
今調査母体では一般世帯全体(企業体除く)の固定電話普及率は76.0%。前年2014年末時点の値76.2%からは0.2%ポイント減少している。全世帯のうち1/4近くは「固定電話なし」。
特に20代から30代の若年層世帯主での世帯において、低い比率なのが目に留まる。無論これらの層で「電話離れ」が進んでいるのではなく、「固定電話離れ」が加速しているだけ。携帯電話があれば、固定電話の必要性はグンと低くなる。さらに個人主義・個別主義が浸透する昨今では、世帯ベースの電話連絡先の必然性が低くなっている。
そして世帯人数の減少、一人身世帯の増加もそれに拍車をかけている。単身世帯ならば世帯主=唯一の世帯構成員であり、他に電話に出る人が居ない以上、本人の携帯電話があれば世帯全体の固定電話は不必要となる。
この流れはアメリカ合衆国でも同様。2015年下半期時点で固定電話が無く携帯電話のみの世帯は、全体の47.7%にまで達しているとの結果が出ている。
そう遠くないうちに、日本も同じ状況に至るのは容易に想像ができる。もっともその時には、アメリカ合衆国はさらに固定電話離れが進んでいることになる。
属性別に固定電話の保有状況を確認
固定電話の保有状況を世帯構成と世帯年収別に見たのが次のグラフ。
高齢者が居る世帯では高く、若年層のみで構成された世帯は低い値を示している(大人3人以上の場合は若夫婦+高齢層の構成であることは容易に想像ができる)。また、世帯年収別では高年収ほど高い傾向を示しているが、これは単純に「高年収ほど固定電話が必要」ではなく、「高年収世帯は世帯主の年齢が高め」「世帯主の年齢が高い世帯ほど、固定電話の需要が大きい」「よって高年収世帯ほど固定電話が良く使われている」といった、三段論法的な事由によるものと考えられる。
スマートフォンを含めた携帯電話も、使わずにホルダーに固定するなり、充電している限りでは、固定電話とほぼ同じ利用スタイルとなる。その視点で考えると、携帯電話を多用しているのなら、固定電話は特に要らないのではないかとする考えは容易に想起できる。
かつては各種契約時・登録時に固定電話番号を求め、携帯電話番号では不可とする事例もあった。しかし昨今では固定電話を所有しない世帯が増加している状況を考慮し、携帯電話の番号でも良しとする場合が増えている。
業務用としての必要性も合わせ、固定電話が無くなることはないだろう。しかし一般世帯向けとしての普及率の低下、携帯電話への置き換えの動きは、今後さらに進むことは間違いあるまい。
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