「暴力的なゲームはプレイヤーを暴力に走らせる」米国では4割が同意
デジタル系ゲームは熱中度の高さから、様々な行動性向の誘導につながるとの懸念も示唆されている。その一つが「暴力的なゲームはプレイヤーを暴力に走らせる」とするもの。米国における実情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2015年12月に発表した、デジタル系ゲームで遊ぶこととゲーマーに関する調査結果「Gaming and Gamers」から確認していく。
今調査対象母集団(米国成人男女)では、全体で5割近くがパソコン、家庭用ゲーム機、スマートフォンなどによるゲームで遊んでいると自覚し、1割がゲーマーを自認する意識を有している。
大人の間でも多分に浸透しているデジタル系ゲームだが、暴力性のあるゲームには、プレイをしていると当事者が暴力的行為に走りやすいとの批判的意見もある。そこで、この話に関して肯定的な意見を持つか、否定的か、回答者自身はどちらだと思っているのかを答えてもらった結果が次のグラフ。心理学的な分析や、多数の実証実験に伴う行動性向の検証ではなく、あくまでも「個人の感想」の集約結果であることに注意。
全体では4割が賛同意見、つまり「暴力性のあるゲームをプレイすると、プレイヤー自身が暴力性を有するようになる」と認識している。否定派は5割強で多数派となるが、差は13%ポイントでしかない。
男女別では男性の否定派は6割を超えるが、女性は4割強でしかなく、賛否が均衡している。女性は暴力性のあるゲームに「遊んでいると乱暴になるかも」との懸念を強く抱いている。この傾向はデジタルゲームプレイヤーに限っても変わらない。むしろデジタルゲームのプレイ経験者では、より男女差が大きく出る形となる。この類のゲームのとらえ方には、男女で違いが出るのかもしれない。
気になるのはいくつかの属性の仕切り分けで、世間一般的に認識されているような傾向が出ていること。デジタルゲームで遊んでいる人は否定派が多いが、遊んでいない人は肯定派の方が多くなっている。また世代別では若年層ほど否定派が多く、高齢層ほど肯定派が多い。最初のグラフの通り、元々高齢層ほどプレイヤーの可能性が低いことから、年上=非プレイヤー=肯定派となるのは容易に想像できるが、いざ実際にここまで明確な差が出ると、改めてその実情に驚かざるを得ない。
暴力性のあるゲームを遊んで、その人が同様の行動を取りやすくなるか否かはケースバイケース。あくまでも行動様式・性格を方向付ける一要素でしかない。さらには逆の発想で、元々人の深層部分にある要素の一つともいえる感情をゲーム内で発散させることにより、実社会面での体現化を防ぐ(ガス抜きをする)との考え方ですら可能となる。
デジタルゲームだからとの偏見を持たず、他のメディア同様の判断と対応を願いたいものではある。
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