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電子レンジは9割強、エアコンも8割超え…一人住まいのお年寄り世帯の家電商品など調度品の実態を探る

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 高齢単身世帯でも男女で揃えている調度品の種類は大きく異なる

高齢化社会の到来に伴い、注目を集めつつあるのが、高齢単身者世帯の生活状況。家電商品をはじめとした調度品の整備状況を総務省の定点観測調査「全国消費実態調査」の最新結果から確認する。

次に示すのは単身高齢者世帯における、主要な耐久消費財の普及率。高齢者は若年者同様、単身世帯の場合は男女で大きく生活様式が異なることから、男女別々に値をグラフとしておこしている。

↑ 単身世帯・主要耐久消費財普及率(2014年、65歳以上)
↑ 単身世帯・主要耐久消費財普及率(2014年、65歳以上)

冷蔵庫、電気掃除機、洗濯機は事実上ほぼすべての世帯に行きわたっている。意外なのは電子レンジの普及率で、こちらも9割超え。むしろ自動炊飯器の普及率が8割前後に留まっており、高齢単身世帯では自炊率がやや低めな感もある。

テレビの普及率は男女を問わず9割超え。女性はほぼ100%近く。エアコンも8割を超え、女性は9割に近い。たんすや鏡台、ベッドなどは女性の方が高め。食器洗い機も女性の方が普及しているが、それでも1割台でしかない。

携帯電話では大部分が従来型で6割前後。スマートフォンは1割にも満たず、誤差の範囲(それでも男性は1割近いが)。テレビの普及率の高さに連動する形でビデオレコーダーも男性は過半数に達している。

パソコンはデスクトップ・ノート共に男性の方が普及率は高い。現役時代に仕事などで使っていたものを引き続き利用していることが考えられる。カメラ(デジタルカメラ含む)も男性の方が普及率は高く、6割超え。

「高齢者の一人暮らし」の言葉からはテレビや冷蔵庫があるぐらいで、調度品はごく少なめ、質素な暮らしをイメージしがちだが、実情ではかなり充実した品ぞろえを示していることが分かる。デジタル機器は少なめではあるが、日常生活を回すための用品の充実度は高い。

若年層の一人暮らしと比べてみると

良い機会でもあるので、若年層の単身世帯における生活様式と比較するため、両者の値を比較した結果をグラフにしておく。高齢層の値から若年層のを引いた結果で、プラス値が高いほど高齢層世帯の普及率が高く、マイナス値が高いほど若年層の普及率が高い。

↑ 単身世帯・主要耐久消費財普及率(2014年、「65歳以上」-「30歳未満」)
↑ 単身世帯・主要耐久消費財普及率(2014年、「65歳以上」-「30歳未満」)

高齢者はスマートフォンの所有率が低く、従来型は高いとの実情がはっきりと出ている。またたんすや鏡台などの昔からの調度品に加え、電気掃除機や洗濯機、食器洗い機なども若年単身世帯より普及率が高く、生活環境としては恵まれていることが分かる。

低めの値が目立つのはデジタル系アイテム、そして自動炊飯器。炊飯器に関しては実態調査が無いので確定はできないが、高齢者の食事事情として、自炊が面倒になる場合が多く、必要性が減じた結果による可能性は否定できない。朝食に限れば、高齢者はご飯よりパンを好む(調理の手間が少なくて済む、保存性も高い)などの話もあるので、納得も行く。

そして昨今注目を集めることが多いエアコン。若年層の単身世帯より2割から3割も普及率が高い。にも関わらず室内での熱中症事例が多いのは、室内にエアコンが存在していても、使うべき時に使わない事例が多いことは容易に想像できる。

エアコンを使わない理由は色々と考えられるが、身体的な衰えに伴う危険な領域での高温に気付かない=エアコンを作動させない(「暑い」と感じない)、人工的な冷気を好まない、ランニングコストを嫌う、エアコンの操作そのものに難儀してしまうなどが挙げられる。高齢者の熱中症対策としては、普及率の向上よりも、いかに必要な時に使ってもらうかを考察した方が、より確かな対策となるのかもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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