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有料電子版新聞の購読希望者は1割台に留まる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 特にタブレット型端末は電子版の新聞を読むのに適していると言われているが……

現時点では2割が上限!? 有料電子新聞のポテンシャル

インターネットの普及や内容の質の低下に伴い、紙媒体としての新聞と距離を置く人が増えている。それでは記事配信の場をインターネット上に移した、有料の電子版新聞を購読したいと考えている人はどれほどいるのだろうか。財団法人新聞通信調査会が調査・発表したメディアに関する全国世論調査の結果をもとに、その現状を確認していく。

今調査対象母集団(2014年9月実施、18歳以上、層化二段無作為抽出法によって抽出、専門調査員による訪問留置法で実施)では、6割強が頻度は問わず、そして毎日ならば3割強がインターネット経由でニュースを閲覧している。

↑ インターネットニュースの閲覧状況
↑ インターネットニュースの閲覧状況

この調査項目における「ニュース」とは有料・無料を問わず、また新聞社配信のニュースとは限らない。そこで「有料」かつ「新聞社配信」に限定した、つまり有料電子版の新聞を知っているか、そして読みたいか・すでに読んでいるか否かを聞いた結果が次のグラフ。

↑ 有料電子新聞の認知度と利用意向(2014年度、属性別)
↑ 有料電子新聞の認知度と利用意向(2014年度、属性別)

現在利用している人は3.0%。今後利用したいと考えている人は12.5%。一方で利用したくない人は60.6%。知らない人も1/4近く。仮に「知らない」の半数が好意派に転じても、現状では全体の1/4程度しか有料電子新聞の需要は発生しない。現時点で紙版の新聞を全廃し、電子版のみに切り替えると、最大でも現状部数の1/4程度しか有料購読者が確保できない概算となる。

属性別では男性の方が積極的、若年層と高齢層が消極的で、20代から50代は押し並べて同じような動きを示している。これは仕事で使う機会が多いことが主要因だと考えられる。もっともこの傾向は、認知度がそれなりに高い同世代でも、現状では2割程度しか好意派が居ないと読むこともできる。

料金次第で購読者は増えるか

電子新聞の認知度、利用意向について経年変化で確認したのが次の図。ただし読み方に注意が必要。

↑ 電子新聞の認知度と利用意向(択一)(2013年度から「有料の電子新聞」の利用意向に変更)
↑ 電子新聞の認知度と利用意向(択一)(2013年度から「有料の電子新聞」の利用意向に変更)

2012年度までは単に「電子新聞」との設問だったのに対し、2013年度からは「有料の電子新聞」に限定した問いに変更されている。そのため2013年度からは「現在非利用だが利用したい」の回答率が落ち、その分「利用したくない」人が増えている。

単なる電子新聞と有料の電子新聞との仕切り分けには留意が必要なものの、認知度の上では着実に世の中に電子版新聞の存在が浸透を続けているのが分かる。他方、2年のみの変化なのでぶれの可能性もあるが、利用したい人は減り、利用しない人は増えている。電子新聞の機能や内容は充実さを増しているが、それ以上に周辺他メディアの情報が豊富になり、見せ方も多様化し、電子版新聞の相対的な価値が低下した結果によるものだろう。

対価の観点でも、年々「電子新聞を購読するか否かを判断する場合、この金額ならばOK」との許容購読料(月額)は毎年漸減し、対価を支払ってまで電子新聞は読みたくないとの意見も増加している。読者が(有料)電子版新聞に見出している価値が減っている証となる。

↑ 電子新聞の許容購読料
↑ 電子新聞の許容購読料

直近2014年度では「(有料ならば)購読したくない」の意見は69.2%。この約7割を引いた約3割の方が、有料電子新聞の最大購読可能者率として見てもよいかもしれない。もっとも紙版の新聞と同じ内容の電子版を、1000円未満/月で提供するのは非常に困難に違いない。

なお今調査対象母集団における月ぎめの新聞購読率は78.0%、月ぎめ以外の購入や購入せずに読むルートも含めた朝刊閲読率は76.9%・夕刊は26.9%。無論紙媒体版を全廃すれば、もう少し許容金額は上昇する可能性が高いが、1社のみが実行した場合、他社紙媒体版にシフトするだけとなるのは容易に想像できる。現状ではすべてを電子版にシフトすることは、そろばん勘定の上では非常に難しいと判断せざるを得ない。

紙媒体の新聞の需要は減退し、今後さらなる増加が期待できる電子版新聞では紙媒体と同様の客単価は望めない。客単価を上げるために内容を充実しようとすると、紙媒体の読者がシフトしてしまい、紙媒体の読者がさらに離れる可能性が多分にある。新聞社は現在、非常に難しいかじ取りを強いられていることに違いはあるまい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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