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女性が感じる「消費税率引上げ」による消費変化

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 税率引き上げで女性視点ではどのような出費を見直したのだろうか

今年の4月の引き上げで見直した項目は

消費税率の引き上げは消費性向の足を大きく引っ張ったとの指摘がある。その実態を、世帯ベースの支出では手綱を握る立場にあることが多い女性の、税率引き上げ後における出費の見直し状況から確認していく。

次のグラフは2014年12月にフルキャストが発表した「イマドキ女性のワークスタイルとお金のやりくりに関する調査」(2014年11月実施、20~40代女性対象)の結果を基にしたもの。2014年4月の消費税率引上げ後において、どのような対象への出費を見直したか、複数回答で該当する項目すべてに答えてもらっている。

↑ 2014年4月の消費税率引上げ後に見直した出費(複数回答)
↑ 2014年4月の消費税率引上げ後に見直した出費(複数回答)

もっとも多くの人が見直し対象に挙げたのは食費。お金のやりくりに困った時、最初にやり玉に挙がるのが食費のため、それがそのまま実践された結果。次点の「スイーツ・お菓子」もほぼ同じポジション。ただし女性には多分に嗜好品的存在のため、ある意味食費を削るよりもつらいかもしれない。

続く項目はファッション、化粧品。「日々の食費」はともかく、次点以降は享楽費用的な要素が強いものが続いている。財布の中身が厳しくなると娯楽関連の支出が優先的に削られるものだが、それがそのまま反映された形となっている。

一方で水道光熱費のような、これ以上の削減は難しい対象が挙げられているのも目に留まる。これまで何度と無く物価上昇などを受けての食費削減や水道光熱費の節約は行われ、これ以上削るのは多分に難儀をするはずではあるだが。同様の理由、そしてこまめな削減が難しい携帯電話の料金も上位についている。もっとも携帯の場合、直接の接続利用料ではなく、アプリの購入や利用を見直したのかもしれない。

今後再び引上げが成されたら?

以上は直近で実施済みの見直し対象。次に示すのは今後消費税率の再引上げが行われる場合、どの項目に対して見直しを行うかについて。なお調査が行われる直前に、2015年10月に予定されていた消費税率の再引上げに関しては、その延期が発表されている。

↑ 2014年4月の消費税率引上げ後に見直した出費/次の消費税率引き上げ後に見直すと思う出費(複数回答)
↑ 2014年4月の消費税率引上げ後に見直した出費/次の消費税率引き上げ後に見直すと思う出費(複数回答)

差異が大きく、かつ「次回見直し」の方が高い項目は、見方を変えれば現時点で「まだまだ見直しにより出費が切りつめられる」と判断されている対象となる。ファッション、化粧品などより水道光熱費や携帯電話料金の方が高く、しかも大いに値が上昇しており、現時点では見直しをしていない、あるいは見直し度合いが甘いと判断されているようだ。また旅行やお祝い・プレゼントのような、生活の質の向上には大いに貢献する項目が大きく上昇しており、心のすさみが懸念されるところではある。

車の維持費に関しても大きく値を挙げている。メンテナンス費用を節約したり、便宜性を犠牲にしてランニングコストの安い車両に切り替える、利用そのものを減らすなどが考えられるが、生活水準そのものの低下が心配。

消費税率の引き上げに伴い、景気対策としての減税措置を合わせて実施しても、それが恒久的になされることはまず無い。また幅広い項目における支出の増加は、消費マインドを確実に削り取る。家計の出費が減れば市場に出回るお金の量は減り、経済は回りにくくなり、景気は悪化し、税収は減退する。

一方で見直し対象の上位に挙がっているような、食費などに軽減税率を適用して消費減退を抑えるとの話も、適用項目の煩雑さで消費そのものが抑えられるリスクもある。さらに適用する・しないによる政治上、徴税実務のリソースが浪費されてしまう。そもそも「薄く広く」の大義を持つ消費税で例外を設けること自体、矛盾している。

税体系の見直しや税率引き上げに伴う景気への影響はまた別の話ではあるが、家計を担う女性の視点では、引上げに伴い出費は今件のように萎縮し、それは経済の停滞をもたらすトリガーとなりかねないことは、大いに認識しておくべきである。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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