世代別に非正規社員率の動向を確認してみる
雇用市場に関する動向が論議に登る際、必ずスポットライトを当てられるのが、正規・非正規の雇用体系。特に非正規就業者(職員、従業員)の増加が問題視されている。具体的に非正規の就業者全体に占める比率はどのような変化を見せているのだろうか。総務省統計局の労働力調査の公開データを基に、その実情を確認する。
次以降に示すのは男女それぞれ、さらには世代別の、非正規職員・従業者率。各世代の雇用者(役員を除く)数に対する、非正規職員・従業員者の割合を示したもの。15~24歳は学生も多く含むため実態とのずれが生じるが(学生のアルバイトと、卒業後に非正規社員として働く就業者の立ち位置は大きく異なる)、長期データは就学中の者も含めた値しかなく、こちらを採用している。また、年ベースの値で長期間の比較を行うため、毎年第1四半期の平均値、2001年以前は(2月と8月のみ調査が行われているため)2月の値を適用している。
まずは男性。
若年層が高い値を示しているのは、一つには上記で解説の通り学生のアルバイトによるもの、そしてもう一つが「フリーター」によるもの(無論非正規の上での一般的な就業者も居る)。実数を見ると、2014年時点では学生込みの15~24歳における非正規は104万人だが、就学中を除いた値は46万人にまで減る。純粋なこの世代の非正規率は半分足らずと見て良いだろう(試算をすると2014年時点のこの世代における、就学中を除いた場合の非正規率は27.9%となる)。
むしろ興味を引くのは高年齢層の高い値。65歳以上では実に70%を超している。これは定年退職後に元の勤め先にパートやアルバイト、嘱託や顧問として再雇用される場合や、ボランティア的な低賃金の就労に当たる場合が多いと考えられる。
また全体的には15~24歳は1994年以降、それより上の世代では1999年と2004年に大きな上昇の機運が確認できる。前者はバブル崩壊後の就職氷河期によるフリーターの発生によるもの、後者は労働者派遣の改正に伴う雇用市場の変化によるものである。
続いて女性。
高年齢層が高いのは男性と同じで、理由もほぼ同じ。他方、中堅層も高い値を維持しているのは、子育てをしながら日中にはパートやアルバイトに従事する、いわゆる兼業主婦をこなしている人が多いのが原因。兼業主婦率は漸増していることは承知の通りだが、それと共に中堅層の非正規率も確実に上昇していることになる。
正規・非正規就業者の動向・比率は得てして就業者全体で語られることが多いが、その内情は「男女では女性の方が比率は高い。兼業主婦がカウントされている」「世代別ではごく若年層と高齢層が高い。若年層は学生アルバイト、高齢層は退職後の再就職組がカウントされている」などの事情が大勢を占めている。そして若年層では、高齢層の出戻り組によって雇用市場全体が圧迫され、新規に入りにくい状況に追いやられている実情が透けて見えてくる。
この問題により、企業内、業界単位での新陳代謝が歩みを遅くする現象も確認できている。単なる就労環境上の問題としてだけでなく、社会全体で取り組まねばならない問題であることは言うまでも無い。
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