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【親子で楽しく学ぶ夏休み耐震実験5】竹ひごと厚紙、消しゴム、輪ゴムで建物の耐震を学ぶ

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
日本損害保険協会のホームページより

○×棒を作って耐震的な建物を知る

 表に赤に○、裏に青に×と書いた○×棒を作ってみましょう。ホームページから、PDFをダウンロードして厚紙に印刷してください。そして○と×の紙に糊を塗り、間に竹ひごを挟めば、○×棒の完成です。

著者作成
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 さて、最初に厚紙の下の部分を持って左右に揺すってみてください。厚紙は固いので手と一緒に動くだけです。つぎに、竹ひごを持って、左右に揺すってください。さきほどと違って、竹ひごが変形して大きく揺れます。さらに○×の厚紙の上にダブルクリップを付けてみてください。さらに揺れが強くなります。

 最初は、壁の沢山ある平屋建ての建物の揺れ実験、次は、1階に壁が少なくて柱が多く、2階に壁の多い建物の実験、最後は屋根が瓦屋根のように重い建物の実験です。1階に広々としたリビングルームやお座敷があり、2階は子供部屋があって部屋と部屋の間に壁が多く、瓦屋根が乗った立派な家って、結構、周辺に沢山あります。こういった建物は、地震に弱いということが分かります。

日本損害保険協会より
日本損害保険協会より

 それでは、この建物を一瞬で耐震的な建物に変身させたいと思います。皆さん、答えが分かりますか? 答えは、○×棒をひっくり返すだけです。そうすると、重心が低くなり、低層階に壁の多い、安定感のある建物になります。

消しゴムと輪ゴムと竹ひごで串団子モデルを作る

 2つの消しゴムを2本の輪ゴムでつなげて団子を作ってください。そして2つの消しゴムの間に竹ひごを一本入れてみてください。そして、団子を上にして竹ひごの下端を左右に揺すってみます。消しゴムの団子がゆらゆらと揺れますね。これを、振り子が逆立ちしているので、倒立振り子と言います。

 通常の振り子の実験と同じように、手をゆっくりと左右に動かすと、団子は手と一緒に動きます。一方、手を素早く小刻みに動かすと、団子はほとんど動きません。これに対して、手をある周期で揺すると、団子がとても大きく揺れます。最初は余り大きくない揺れですが、何度も左右に手を動かすと、どんどん揺れが大きくなっていきます。これを共振と言います。

 つぎに、竹ひごを持つ手の握り方を少し変えてみましょう。ギュッとしっかり竹ひごを持つと、共振によって揺れが大きく育つのに対し、フワッと持つと揺れの育ち方が良くありません。フワッと持つことによって、揺れのエネルギーが手を通して体の中に逃げていき、揺れが減じられるのです。

消しゴムの位置を変えたり、重さを変えたり、竹ひごの本数を変えてみる

 団子の位置を竹ひごの一番上にしたときと、竹ひごの真ん中にした時の揺れ方を比べてみてください。真ん中にすると、団子が揺れやすい周期がぐっと短くなります。ちょっと難しくなりますが、揺れやすい周期は竹ひごの長さの1.5乗に比例します。団子の高さを色々変えて実験してみてください。

 つぎに、竹ひごの本数を変えてみましょう。消しゴムの間に挟む竹ひごの本数を1本から4本に増やしてみてください。揺れやすい周期が半分の時間になると思います。揺れやすい周期は、堅さ(竹ひごの本数)の0.5乗に逆比例します。

 今度は、消しゴム2つをつなげた団子をもう1つ付けて、2つの団子をくっ付けてください。すると揺れやすい周期が1.4倍(√2倍)になります。揺れやすい周期は、重さ(団子の数)の0.5乗に比例するからです。

 ということは、団子が2つで竹ひごが4本のときと、団子が1つで竹ひごが2本のときは、同じ揺れ方をするという意味になります。一度、自分で確かめてみてください。

 このように、団子の位置、団子の数、竹ひごの本数で、様々な揺れ方をします。

日本損害保険協会より
日本損害保険協会より

団子が2つ、3つになるとどうなる?

著者作成
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 竹ひごの上に団子を1つ、竹ひごの真ん中に団子を1つ付けて、左右に手を動かしてみましょう。最初はゆっくりと揺すり、徐々に小刻みに揺すっていきます。すると、2つの振り子をぶら下げたときの揺れと同じように、最初、図の左のような形で良く揺れるようになります。さらに細かく揺すっていくと図の右のように揺れるようになります。

著者作成
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 団子が3つになると、図のように、揺れ方がさらに複雑になります。

見た目が串団子のように見えるので、これを串団子モデル、と言います。皆さんも試してみてください。

ここで学んだことは、実は、名古屋大学で建築を学ぶ3年生が勉強することです。小学生の皆さんでも、こんな実験をしてみれば、大学生と同じ勉強ができますよ。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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