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【親子で楽しく学ぶ夏休み耐震実験3】ストローとクリップで格好良くて強い建物を作る

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
日本損害保険協会のホームページより

良い建物の基本は「強・用・美」

 2千年前のローマの建築家・ウィトルウィウスは、「強なくして用なし、用なくして美なし、美なくして建築ではない」と言いました。命や生活、財産を守り、使い勝手が良く、美しい建築が良いという意味です。強・用・美のすべてを満たす建築が素晴らしいとされています。そこで、目標とする高さと大きさを決めて、カラフルで頑丈な建物をストローで作ってみることにしましょう。まずは、色々な色のストローと、ストローの太さに丁度良いゼムクリップを用意してください。そして、はさみも準備ください。

ストローハウスの組み立て方

 ストローハウスの組み立て方は以下の通りです。まず、ストローの端にゼムクリップを挿入してみてください。つぎに、ストローに挿入したゼムクリップに、別のゼムグリップを絡ませて、2つのゼムクリップをつないでください。このゼムクリップを2本目のストローの端に挿入すると、2つのストローがつながります。この状態では、2つのストローの間の角度は自由に変わります。こういった接合の仕方を「ピン接合」と言います。このピン接合で形作っていく構造形式を、「トラス構造」と言います。

 ストロー4本で正方形を、そして、ストロー3本で正三角形を作ってみてください。正三角形は力をかけても形が変わりませんが、正方形はすぐにひし形になってしまい、安定しません。身の回りをみると、パイプ椅子の足や、体育館の屋根、大きな橋など、そこら中に三角形のものが見つかると思います。三角形を使って建物を組み立てると頑丈な家ができます。

ストローハウスの組み立て方
ストローハウスの組み立て方

正方形も×印の筋かいで強くなる

 三角形は強いのですが、三角形の部屋は使い勝手が良くありません。そこで、正方形でも強くなるように、正方形の中にバッテンを作ってみます。1本のストローをハサミで切って、2等分にしてください。少し斜めに切ると後で便利です。次に、1本のストローに半分の長さのストローを差し込んでみてください。そうすると長さが、1.4倍くらいになります。将来、中学校の数学の時間に習いますが、直角2等辺三角形の斜めの辺の長さは両辺の長さの約1.4倍(√2)になります。これを正方形の対角線に×印の形で取り付けてみてください。そうすると、正方形は見事に変身し、変形しなくなります。この×印のことを、「筋かい」とか「ブレース」と言います。

立体的に建物を組み立てる

 ストローハウスの作り方は以上の通りです。建物を高く作るときには、例えば、筋かいの入った四角形を6つ組み合わせると、正六面体(立方体)ができます。これを高さ方向に重ねていくと、高層ビルができます。てっぺんにピラミッドのような四角錐の屋根を乗せると、ちょっとオシャレですね。各階で色を変えたり、筋かいだけ色を変えたりすると、少し、格好いいかもしれません。でもあまり高くすると安定しませんから、下の方を少し太らせたりして工夫すると良いと思います。色々な形の建物を作ってみてください。

 板や厚紙の上に、色々な形のストローハウスを固定して、大いに揺すってみてください。どんな構造の建物が強いか良く分かると思います。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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