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【親子で楽しく学ぶ夏休み耐震実験1】プリンとチョコ菓子で学ぶ地震の揺れ実験

福和伸夫名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長
著者作成

短い夏休みに、家で楽しく地震の実験をしてみませんか?

 新型コロナウィルスの感染拡大で、今年の夏休みはステイホーム。子供たちは家にいる時間が長くなりそうです。そこで、自宅でできる楽しい耐震実験動画を作ってみました。昨年までは、夏休みに、名古屋大学で子供たちと一緒に耐震実験をした後に、バスに乗って名古屋のまちの危険な場所を見て回る「親子で学ぶ 防災・減災ピクニック」をしていたのですが、今年は、小学生でも簡単に学べる地盤と建物の揺れ実験動画を用意することにしました。

 今後やってくるであろう大地震から家族を守るために、何より大切なのは安全な家作りです。ここで大事なのは、外からは見えにくい地盤と基礎です。そこで今回は、どんな地盤がよく揺れるのか、建物を支える基礎はどんな役割があるのか、そして、最新技術の免震技術とは、そんなことを学べる動画を紹介します。お菓子を食べながら、美味しく楽しく実験をしましょう。用意するのは、「ようかん」、「プリン」、「たけのこ」と「きのこ」の形をした「チョコレート菓子」、「お皿」、「下敷き」、「紙」と「丸い色鉛筆」です。ようかんやプリンの代わりに、「ういろう」や「ババロア」を使ってもかまいません。皆さんが食べたいものを用意してください。

堅い「ようかん」に比べて軟らかい「プリン」はよく揺れる

 ようかんとプリンをお皿の上に乗せて、お皿を左右に揺すってみてください。ようかんはお皿と一緒に動くだけです。これに対して、プリンは軟らかいのでプルンプルンと左右に揺れます。固い地盤に比べて、軟らかい地盤は揺れが大きくなります。家選びの基本は、固い地盤に建てることです。川や海に近い低地に比べて、台地の上や丘陵地の方が固い地盤なので、地震の時の揺れは小さくなります。

 さて、プリンの揺れ方は、揺すり方によって全然違います。お皿をゆっくりと左右に揺すったときは、ようかんと同じようにお皿と一緒に揺れます。とても早く左右に揺すったときには、プリンは変形しますが、揺れはそんなには大きくはありません。でも、ちょっと、揺すり方を工夫してみてください。プリンがプルンプルンと大きく揺れるときがあります。このときの左右に揺する周期のことを、揺れが卓越する周期なので、卓越周期と言います。どんな地盤も、揺れやすい周期をもっています。

 ついでに、プリンが容器の中にある状態でも揺すってみましょう。周辺に山がある盆地に相当します。プリンは、余り揺れませんが、この場合も、ある揺すり方をするとプリンがよく揺れます。これが、盆地の揺れやすい周期です。お皿の上にあるときの揺れ方とはずいぶん違いますね。

免震って凄い! 色鉛筆の上の下敷きにプリンを乗せると全く揺れない

 つぎに、紙の上に丸い色鉛筆を2本起き、その上に下敷きを敷いて、プリンを乗せたお皿を置いてみます。下敷きを直接手で揺するとプリンがプルンプルンと揺れますが、色鉛筆の下の紙を左右に動かしてみても、下敷きはほとんど動かず、プリンも揺れません。これが免震の原理です。建物の下に、免震装置と呼ぶ特別な装置を置くことで、地震で地盤が強く揺れても、建物が余り揺れないようにすることができます。ただ、プリンに大きく息を吹きかけてみると、下敷きごとプリンが移動します。免震は、地震は得意ですが台風は苦手だと言うことが分かります。免震建物は、1995年に起きた阪神・淡路大震災以降、全国で急速に普及しました。日本全国にたくさんの免震建物がありますから、ぜひ探してみてください。名古屋の近くにお住いの方は、名古屋大学の減災館に来てみてください。北側の道路から大きな免震装置を直接見ることができます。

プリンを食べるとプリンの揺れ方が変わる! 地形で揺れが変化する。

 さて、いよいよプリンを食べながらの揺れ実験です。

著者作成
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 まず、プリンの横からスプーンで少しプリンをすくい取って食べてみましょう。プリンに谷のような地形ができます。この状態で揺すってみてください。そうすると谷の両側の尾根のところがよく揺れます。

 つぎに、プリンの真ん中で崖ができるように半分の上を平らにするように食べてみましょう。この状態で揺すってみると、崖のふもとは揺れにくく、崖の上が大きく揺れます。揺れに関しては、谷や崖のふもとの方が揺れにくいようです。ですが、地震や水害では、谷は土石流の崖のふもとは土砂崩れの危険がありますから、要注意です。

 では、崖側のプリンも食べて、もう一度平らにしてみましょう。最初に比べて、プリンが薄くなります。この状態で揺すってみてください。そうすると、最初の厚い状態のプリンの揺れに比べて、揺れがずっと小さくなります。でも、この状態でも、ある揺すり方をするとプルンプルンと強く揺れます。でも、その周期は厚い状態の周期よりずっと短くなります。

 すなわち、軟弱な地盤の厚さによって、揺れの強さや卓越周期が変化することが分かります。

タケノコとキノコのチョコ菓子を乗せて揺すってみよう、基礎は大切だ!

 いよいよ、プリンの上にチョコ菓子を乗せてみます。最初にとんがり帽子の形をしたタケノコの形のお菓子をプリンの上にちょこんとおいてみます。この状態でプリンを揺すってみると、タケノコは簡単にひっくり返ってしまいます。

 つぎに、キノコの形のお菓子の軸部をプリンに突っ込んで乗せてみます。今度は、揺すってもびくともしません。これは、建物を支える杭基礎がある建物です。それではもう一度、タケノコの形のお菓子をプリンに乗せて、クッキーの部分だけプリンの中に押し込んでみましょう。地下室付きの建物になりました。今度は、プリンを揺すっても倒れることはありません。

 軟弱な地盤に建物を建てるときには、目に見えない基礎が大事なことがよく分かります。杭や地下室があれば安心です。

 これで、今日の実験は終了です。それでは、ようかん、プリン、チョコ菓子を美味しく食べてみてください。プリンとチョコ菓子を混ぜて食べると、とても美味しいと思います。

名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靭化共創センター長

建築耐震工学や地震工学を専門にし、防災・減災の実践にも携わる。民間建設会社で勤務した後、名古屋大学に異動し、工学部、先端技術共同研究センター、大学院環境学研究科、減災連携研究センターで教鞭をとり、2022年3月に定年退職。行政の防災・減災活動に協力しつつ、防災教材の開発や出前講座を行い、災害被害軽減のための国民運動作りに勤しむ。減災を通して克災し地域ルネッサンスにつなげたいとの思いで、減災のためのシンクタンク・減災連携研究センターを設立し、アゴラ・減災館を建設した。著書に、「次の震災について本当のことを話してみよう。」(時事通信社)、「必ずくる震災で日本を終わらせないために。」(時事通信社)。

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