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保育園・幼稚園・こども園の園写真が悪用されている?セキュリティは?

普光院亜紀保育園を考える親の会アドバイザー/ジャーナリスト
写真を撮って手軽にネットにアップできる時代だからこそ気をつけたいこと(写真:イメージマート)

保育園や幼稚園、こども園で撮ってくれる子どもの写真。保護者にとっては、園での子どものようすを知ることができる貴重な情報源であり、子どもの成長の記録としても欠かせないものです。しかし、その写真が思いも寄らない形で悪用されることがあります。

フィッシングサイトに悪用されていた

「保育園や幼稚園がホームページに掲載している子ども(男女)の半裸・全裸の写真が、フィッシングサイト(偽サイト)や成人向けコンテンツのアフィリエイトサイトなどに利用されています」

「保育園を考える親の会」にそう知らせてくれたのは、公的機関などのサイトを自主的に調べてリスクなどを知らせる活動をしている下馬場一毅氏(「勝手に診断君」代表)。

あどけない子たちの姿が「釣り」のエサになるなどということがあるのか。半信半疑でいくつかのキーワードで検索してみると、どうも類似した検索が頻回に行われている形跡が見られました。つまり、あえてそういう写真を探して興味を満たしている人がいるということです。

「問題の写真を掲載している園には連絡を入れました。黙って削除した園もありましたが、相手にしてくれないところもありました。園の意識はさまざまです。撮影してから年数がたっているものが多いのですが、逆に言えば、その子どもたちはすでに大きくなっているわけで、万一、誰か特定されればイジメなどの原因になる可能性もあります」(下馬場氏)。

園の先生たちには、小児性愛のような興味が存在すること自体が想像できない、したくないという方も多いことでしょう。しかし、子どもにかかわるわいせつ事件はしばしば報道されています。

また、写真を紙で配っていた時代とは異なり、ネットによって思わぬリスクがもたらされる時代になっていることには注意が必要です。いったんネットに上がった画像は誰でも見られるし、削除しない限り画像のデータはネット上に残り続けます。削除前に画像がダウンロードされれば、対象者が知らないスペースにアップされることもあるし、加工されてしまうこともあります。

これは、家庭での写真をSNSにアップする場合も同じです。

園の意識にバラツキあり

全国私立保育連盟副会長で幼保連携型認定こども園保育の家しょうなんの塚本秀一園長は、

「保育園やこども園では、園で撮った子どもたちが写っている写真をホームページや広報誌等で公開する場合は、裸であるかそうでないかにかかわらず、保護者に承諾を得てから行うのが通常のルールになっています。2005年に個人情報保護法が施行されてからは、より配慮が求められるようになりました」

と話します。

各園のホームページをざっくり閲覧する限りでは、保育内容の紹介のために子どもたちの写真を掲載している園は多くありますが、問題を感じるような写真は見当たりません。近年は保育園・幼稚園等のプライバシーに関する意識が改められていることがうかがえます。

ところが、一定のキーワードをつけて画像検索をすると、首を傾げるような園写真が抽出されてきます。多くが古いものですが、ここ数年にアップされたものもあります。少数とはいえ、子どものプライバシーに無頓着な園はまだあるようです。

家庭への写真配布の安全な方法

保育園、幼稚園、こども園などでは、地域や入園希望者に向けての園紹介のために子どもの写真を使用するほか、在園児の保護者に向けて子どもたちの日常生活を伝えるために写真を配布することもよく行われていて、撮影枚数はこちらのほうが多いはずです。保護者にとってはとてもありがたいのですが、いろいろな場面が含まれるので、取り扱いに注意が必要です。

通常の園では、ホームページにパスワードを入力して閲覧するページを設けたり、連絡ノートアプリで配信するなどして、外部からは見られない形で保護者に届けています。

前出の下馬場氏は、

「ホームページの限定公開機能、写真共有サービス、連絡ノートアプリなどはほぼ安全と思われますが、一部のブログはパスワードを設定していてもBingなどの検索サイトで写真が表示されることもあるので注意が必要です」

と指摘します。

わが子の園の写真管理については、保護者も関心を持ち、不安があれば園に確認してみるとよいでしょう。

子どもの視点から考えると

子どものプライバシーについて職員で話し合いながら試行錯誤しているという、わかたけかなえ保育園の山本慎介園長は、

「当園でも身体検査や水遊びのときの写真を撮影しますが、どのような写真や動画であっても、撮影する時点で『プライベートゾーンが写らないようにする』ということを最低限注意しています。子どもの人権を尊重しなければならない立場から、裸(半裸、全裸)を撮影すること自体が適切なことではないと判断していますし、大泣きしていたり、拗ねていたりするような場面にもカメラを向けるようなことがないように注意しています。子ども自身は自分の写真の公開について意思を表明することができなかったり、十分な判断力が備わっていなかったりしますので、私たちが十分に意識しなければならないと職員間で申し合わせています」

と話します。

保護者の承諾の有無だけでなく、子ども自身がどう感じるか、大人が想像力を働かせる必要がありそうです。

伝えてもらうことの大切さ

保護者にとって、わが子の園生活を写真で見られるのはとても助かることです。

園写真には、家庭では見られない子どもの姿が写っています。子どもは園の環境の中でたくさんの遊びにチャレンジし、保育者や同年齢の仲間とかかわりながら、さまざまな力を自ら育んでいます。そのようすを連絡ノートや送迎時の会話で保育者から言葉で伝えられたり写真などで見せてもらったりすることは、子育ての励みになります。わが子の成長に気づかされたり保育の取り組みを知ったり、伝えてもらうことの恩恵は大きなものだと思います。

また、園写真には、子どもが自然に生き生きと活動する姿が見事にとらえられているものがたくさんあります。子どもの姿が見えにくくなっている現代社会だからこそ、こういった子どもの姿が発信されることも意味があると思います。ホームページの公開スペースに子どもの写真を出す場合には、事前承諾はもちろん、いろいろな配慮が必要だと思いますが、すべてをシャットアウトして子どもの姿がブラックボックスに入ってしまわないようにすることもまた必要ではないかと考えています。

保育園を考える親の会アドバイザー/ジャーナリスト

保育制度、保育の質の問題に詳しい。保育園を考える親の会アドバイザーとして、働く親同士の交流・情報交換の場を支え、また保育に関する相談にも応じながら、ジャーナリストとして保育や仕事と子育ての両立に関する執筆・講演活動を行っている。大学講師(児童福祉・子育て支援)、国・自治体の委員会委員も務める。著書に、『共働き子育て入門』(集英社)、『変わる保育園』(岩波書店)、『保育園のちから』(PHP研究所)、『共働きを成功させる5つの鉄則』(集英社)、『保育園は誰のもの』(岩波書店)、『保育の質を考える』(共著、明石書店)、『後悔しない保育園・こども園の選び方』(ひとなる書房)ほか多数。

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