ネパール地震から2年 トランプ政権で変わる?現地の様子は

2年の時が過ぎても支援は行き届かず復興はなかなか進まない(写真:ロイター/アフロ)

ヒマラヤ山脈の麓に位置するアジアの最貧国、ネパール。首都カトマンズ近郊で起きたマグニチュード7.8の大地震、9000人近い死者を出したこの震災から今日4月25日で丸2年が過ぎた。

震災後、インドとの国境封鎖で物流が滞り、真冬にも関わらず暖が取れないなどの深刻な状況にあったことは2015年当時の記事でも伝えたが、2年が過ぎた現在でも復興の兆しは見えていない。

民家など約90万棟が倒壊、全人口の3割が被災したとも言われているが、現在も300万人が避難したまま。そんな中、今も余震は続いており、昨夜にもマグニチュード4.2の地震が起きている。

水不足で、石工業などの倒産が相次ぎ、建物再建などの復興作業が遅れる中、最貧国の頼みの綱は、国連をはじめとする支援団体。しかし、トランプ政権に交代したことで、アメリカ政府からの援助資金が止まろうとしている。

今後、復興できる日は来るのだろうか。地震直後から継続的な支援を続ける日本のNGOスタッフが、再び現地に入った。

前回の視察後、新しく建設されていたのは仮設の学校だけ

「1年4カ月前に視察したときと同じラクトプール郡にあるブンガマティという被災地を訪れたのですが、唯一新しく建設されていた公共施設は学校だけ。保育園から中学校(3歳~15歳)までの子どもたちが通うのですが、長屋のような1階建てで、日本でいうところの仮設住宅ともいえない自転車の駐輪場のような簡易な建物でした。

学校の周りは、依然として瓦礫の山。崩れたレンガの建物があちらこちらにある。その隙間の空間に、簡易な木製やトタン板の小屋を自分たちで作って、日常生活を送っていました。」

トタン屋根で、教室内には白板と机・椅子があるのみの簡易的なものだった
トタン屋根で、教室内には白板と机・椅子があるのみの簡易的なものだった

そう話すのは、現地で支援を続けるNGOジョイセフの小野美智代さん。

学校の周囲で、今にも崩れそうな家たちで暮らす住民たちに、復旧する気はないのかと聞いたところ。『(政府が)建て替えるお金もくれると言ってる。ただ、まだ何もしてくれないので待っています。』と答えたという。

「被災地の村の、復興が一向に進んでいません。私たち日本人からすると考えられないのですが、地震でレンガの壁や屋根がごっそり半分崩れ落ち、塀の間からは植物が生えだしている壊れた元の住居が目の前にあるのにもかかわらず、そこには全く手をつけようとしないのです。もちろん瓦礫を片付けようともしない。それでいて、特に悲しんでいる様子も見せず、被災後の現状を受け入れて、ひたすら前向きに生活する明るい人たちがそこにいました。」

震災後の復興が遅々として進まず、被災した住民には、自宅の再建費が政府から届く予定になっている。にも関わらず、実際には未だ支援金などは、ほとんど行き渡っていない。

地震の後、観光業もダメージを受けており、水不足の影響で農業も不作続き。仕事がないことから夫婦間暴力が増加、さらには人身売買の状況も悪化しているという。

人身売買で売られる前に保護された女性たち

もともと、ネパールでは男尊女卑の文化が根強く、人身売買、早すぎる結婚、若年妊娠、夫婦間に目立つジェンダーに起因する暴力などは、地震前からネパールの女性を取り巻く問題として挙がっていた。

もともと女性の就職先が限られていることで、「良い就職先がある」と紹介されて、騙された女の子たちが性産業や人身売買の被害に合うという最貧国ならではの実情もある。

このレポートからは、地震の前にも年間5000~12000人の女性たちが人身売買の被害にあっていることが分かるが、地震後はこの数字がさらに増えているというのだ。

人身売買を未然に防ごうと活動している支援団体MAITI Nepalに話を聞くと、運営するシェルターに身を寄せているのは、売られる前に保護された女性たちだという。この支援団体では、インドとの国境付近でも検問を行い、怪しい女の子を乗せた車などをチェックし、女性や女児を保護するシェルターまで包括的な支援をしているが、簡単なことではない。

「人身売買の難しいところは、取引される本人が最終地点に着くまでは、自分自身が人身売買の被害者だと気づかないケースが多いために、それを摘発することは非常に難しいという点だと思います。実際には、これ以上のケースが起きている可能性が大きいのです。」

地震の3ヶ月後には、人身売買が15%ほど増えているというデータも発表されているが、数字として出てくるのは本当にごく一部で、実態はもっと酷いという。

小さい子供を育てながら、人身売買防止のため奔走しているIPPFネパール会長のアムさん
小さい子供を育てながら、人身売買防止のため奔走しているIPPFネパール会長のアムさん

「人身売買を根絶したい!もともとネパールに根強く残るジェンダーの意識、行政はもちろん、地域のネットワークやネパールで女性支援をしているNGOとつながって取り組む必要があります。だから私が動かないといけないのです。」そう熱く語っていたのは、震災後のネパールで多くの女性たちを支援しているアムさん(35歳)。さらに深刻になった人身売買の撲滅にむけて自らNGOを立ち上げ、MAITIネパールと連携し、草の根で若い女性たちへの情報発信や、教育、ネットワーク普及にも尽力している。

「とても明るくて情熱的で、目が輝いている姿が印象的だったアムさん。そんな彼女が、2年前の震災時に小さい子どもを抱えながら、命が危険にさらされた話をしてくれました。それでも、地震の36時間後には、自分の息子を保育園に預けて事務所に行き、地震の被災者を支えることで頭がいっぱいだったと涙ながらに語ってくれて。彼女のような正義感あふれる女性がネパール、そして世界をどんどん変えていくのだなと実感しました。(小野さん)」

次世代のために何ができるか

震災後の復興が進まず、人身売買などの危険が減らない中でも、次世代を担う子どもたちは日々成長していく。地震が起きた後すぐに現地の団体と提携したNGOジョイセフは、被害者を減らすための啓発・教育活動プログラムを被災地の学校などで運営している。

教育プログラムを受け、目を輝かせながら将来の夢を語る少女たち
教育プログラムを受け、目を輝かせながら将来の夢を語る少女たち

プログラムを受けた少女たちに話を聞くと、11歳の女の子の将来の夢は看護師、14歳の女の子の夢は医師だと話してくれた。二人に理由を聞くと『地震のときに、自分たちを救ってくれた人だから』『地震が来ても、仕事がなくならないから』だという。

震災後、ネパールでもう一つ増加しているのが、ジェンダーに基づく暴力(GBV)で、人身売買と同様、少女たちも被害に遭う可能性が高い。ただ、GBVは人身売買以上に外に出てこないため、その正確な数を出すことは難しい。

「表になかなか出てこないことだからこそ、ジョイセフのような日本のNGOが実態を把握して、発信する重要性を感じます。そして、人身売買の対象であり、これから結婚し、GBVの当事者である若い女の子たち、そして加害者になりうる男の子たちにも、事前に正しい知識を得ることは非常に重要だと痛感しました。」

世界中どこにいても、自然災害は起こりうる。だが、住んでいる国や地域が異なれば、被害者を取り巻く環境も大きく変わるものだ。政情不安な最貧困ネパールの女性の置かれている現状は、東日本大震災後の日本とは違うということを、日本の人たちに知ってほしいと小野さんは話す。

また、ネパールの保健医療クリニック、特に女性のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスのケアを行うクリニックは、アメリカ政府からの資金援助を受けていることが多いのだが、トランプ政権に交代したことで、援助資金が止まろうとしている。既に、国連人口基金への資金はストップするという大統領令が出ており、支援団体が資金を得られなくなる可能性が高いという。

ヨーロッパはシリアの難民支援対策に追われ、日本でも東アジアの緊張状態を伝えるニュースが多い。

それでも、アジアをリードする国として、震災から2年が過ぎても変わらない、アジアの最貧国ネパールの現状を忘れないでほしいと切に願う。