近年よく耳にする言葉『SDGs』。17の目標と169のターゲットで構成され、持続可能な社会の実現に向けた開発目標のことを指します。

そんなSDGsの中のひとつ、フードロスについて取り組んでいるZ世代がいます。

秋田県のノースアジア大学4年生、石井秀樹さんです。石井さんは「未利用魚」の問題に取り組んでいます。未利用魚とは、サイズの不揃いや漁獲量が足りないなどの理由から、非食用に回されたり、低価格でしか取引されなかったりする魚のことを指します。

石井さんは今年5月から秋田県男鹿市の漁師の元で2年間の漁師研修を行っており、自身のSNSを通して未利用魚を含むさまざまな魚の紹介や、食べ方の発信にも取り組んでいます。未利用魚に興味を持ったきっかけや、SDGsについての考えなどお話を伺いました。

ーー魚に興味を持ち始めたきっかけは何かあったのでしょうか?

石井:僕の地元は秋田県の馬場目という山奥で、小さな頃から山菜を採ったり、近くの川で魚を獲って遊んだりと自然に囲まれながら育ちました。また、祖母が料理上手で、地元の名物の「だまこもち」という郷土料理をイベントで作るのを手伝ったりしていて、もともと食に興味があったのもきっかけかもしれません。祖母に連れられて秋田市民市場に行って魚を見た記憶があるので、小さい頃の経験が今現れているのだと思います。

ーーとても素敵な環境で育ってきたんですね。そんな中気づいたら魚に興味を持っていたと。未利用魚についてもその延長線上で知ったのですか?

石井:そうですね。僕は食べることももちろん魚そのものが好きなので、「見る・獲る・調理する」など全ての過程が好きです。それで昨年、秋田県の漁業スクールで2週間の体験に初めて参加しました。未利用魚についてはこのときに初めて知って、何かできないかなと思ったのが直接のきっかけです。

ーーなるほど。そういった思いからSDGsにつながる行動を始めたということですか?

石井:僕は魚が捨てられている現状を見て、「今はSDGsやフードロスが叫ばれている時代だからなんとかしなきゃ」という思いは当初なかったです。それよりも、大好きな魚が捨てられてしまっている、という事実が大切な人を無下に扱われているようで、こういう魚たちも美味しく食べてもらえる取り組みができたらいいな、と思ったのが未利用魚についての活動を始めたきっかけでした。

「魚が大量に捨てられているから買ってください」「SDGsでこういう課題があるからみんな向き合いましょう」というような言い方だと、赤の他人に言われても響きづらいというか、強引だと思うのです。そういうアプローチではなく、「素晴らしい商品があるんだよ」と紹介する。未利用魚というのは、獲りたての魚を値段もつけずに捨ててしまうわけですから、それこそ「安くて新鮮だから使いませんか」と加工工場などに出す、というようなやり方の方が良いと思っています。

ーー実際に今どんな活動をされているのでしょうか。

石井:SNSを通して、さまざまな魚や食べ方を紹介しています。「この魚は何だろう?どうやって食べるのかな?」という興味や関心をほかの人にもってもらうことが、魚を食べてもらうきっかけにつながると思っていて。実際に、僕のSNSには「この魚は何?」「魚を送ってください!」などのメッセージを少しずつ頂けるようになりました。僕はそもそも「未利用魚」や「低利用魚」という言葉を使いたくないんです。流通しやすいものは「利用」、それ以外は「低、未利用」というのは人が勝手に生み出したものだからです。SNSを通して多くの方に魚の楽しさを知ってもらい、「利用」「低、未利用」と分けずにいろいろな魚を食べるきっかけを作っていけたらと思います。

ーーなるほど。新しい取り組みですね。漁師さんというのはなんとなく、昔からあるコミュニティという印象がありますが、石井さんの環境ではそうした新たなチャレンジはしやすいですか?

石井:環境に関して言うと、コミュニティの狭さは感じることがあります。例えば、秋田の場合は漁師になるとしたら住民票を置いている地区の漁師にしかなれません。昔からの慣習が消えてない部分だと思います。

一方で、最近では僕のほかにもSNSをうまく活用している漁師さんもいます。以前、フォロワーが2.5万人くらいいる東京のシェフが、自分のInstagramのストーリーに「秋田の漁船に乗ってきました。気になるシェフの方は連絡をください。」というような投稿で情報発信をしていて、秋田の漁師さんの宣伝になっていました。

ーー昔ながらの慣習を大事にしている方もいれば、新しいことを取り入れている漁師さんもいるのですね。他にも何か新しい取り組みをされていますか?

石井:3年前、男鹿市に『オガーレ』という道の駅ができて、僕を指導してくれている漁師さんがそこにずっと魚を出品しています。オガーレでは、漁協に出品できない魚や出品しても値段がつかないような魚を、漁師自身が値段をつけて販売することができます。

その漁師の方は、世界中を回ってさまざまな漁港を見てきていたり、教師として人に教えてきたりした経験もある方なので、話が面白く、色々なことを教えてくれます。「今の水産業はこのままではダメだ、ネット販売など新しいことをしていかなくては」と漁業スクールであった初日に言われました。

ーーとても行動力のある方で、革新的な考えをお持ちの方なんですね。

石井:その方70歳なんですよ! 70歳の方がそんなこと言うのか、と感銘を受けましたね。生業というよりは趣味で漁をやっているような方ですが、色々な魚をオガーレに出品して売れるようになってきたので、他の漁師さんも同じように出品するようになりました。

ーー素晴らしい動きですね。私も秋田に行ってみたくなりました。現在私が所属しているZ総研で、『SDGz(エスディージーゼット)』というZ世代×SDGsのプロジェクトを進行中で、その中の一つとして『未利用魚デビュープロジェクト』というものを計画しています。

今回お話を聞いて、アクションすることがとても大事なことや、魚が好きで未利用魚にたまたま辿り着いたことなど、私も同じ思いで企画を作っていたので、とてもためになりました。今後も未利用魚の問題解決に向けてご一緒できたらと思います。

普段「未利用魚」という言葉はなかなか出会うきっかけがないと思います。

私自身SDGsをあらためて意識した際にたまたま未利用魚という存在を知りました。

今回、石井さんはSDGsと意識して今の活動を始めたわけではないとおっしゃっていましたが、この行動はZ世代によく見られるもので、特別意識してSDGsに関する行いをしているつもりはなく、当たり前なことや自分の好きなことなど、自分ごと化できる事象には積極的に行動に移し、取り組む傾向があります。

まずは知ること。SDGsではこれが重要になってくると改めて気付かされました。

今回の記事で未利用魚という存在を知るきっかけになっていただけたら幸いです。

これからの未来を担うZ世代が取り組むSDGsに今後も注目しています。

プロフィール

石井 秀樹(画像左)

ノースアジア大学4年。現在、秋田県男鹿市にて漁師研修中。魚を「見る・獲る・調理する・食べる」事の全てが好きで、残さず食べ切る事が得意。秋田県内の水産関係者に会い、漁業の現状を勉強しており、世界中の魚に会う事、魚を多くの人に美味しく食べてもらう事が目標。

Twitter:https://twitter.com/hideki_allfish/

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