兵庫BS・橋本大祐監督(元阪神タイガース)による2020年シーズンの反省と来季への展望

ホーム最終戦で挨拶する兵庫ブルーサンダーズ

■監督初年度は「思いどおりにいかなかった」

 「思ったより勝てなかったなという感じだった」―。

 兵庫ブルーサンダーズ橋本大祐監督(元阪神タイガース)は、自身の監督初年度シーズンをこう振り返った。

「思ったより勝てなかった」と、橋本大祐監督
「思ったより勝てなかった」と、橋本大祐監督

 新型コロナウイルスの感染拡大による影響は、思った以上に大きかった。

 万全な仕上がりで迎えた3月のオープン戦は絶好調だったが、手応えをつかんだ矢先の開幕延期。ようやく自粛期間が明けたものの、開幕までに実戦ができたのは他球団よりかなり少なく、わずかに1試合だった。

 そして実戦感覚をつかめないまま6月13日に開幕し、乗りきらないうちに連敗を重ねてしまった。

ベンチでの定位置
ベンチでの定位置

 さらに不幸に見舞われた。7月9日に対戦した相手チームからコロナの陽性者が出たため、自チームからは誰ひとり濃厚接触者とは認定されなかったものの、球団として感染拡大防止を鑑みて2週間、自主的に活動を休止した。選手は必要最低限以外の外出はできず、トレーニングも制限された。

 キャッチボールすらできないまま活動再開した翌日にはもうゲームが組まれており、さらに黒星を増やすこととなっていった。

 しかし転機が訪れた。開幕から7連敗後、8月8日、9日に北海道独立リーグからの招待試合があり、そこで勝つ喜びを思い出し、チーム状態の上昇と相まって善戦できるようになった。

 途中、橋本監督が強力にネジを締めたことも、選手の意識を高めた。(詳細⇒初勝利の陰にあった橋本大祐監督の愛の鞭

 8月は4勝4敗1分、9月は3勝1敗といい兆しは見えてはきたが、それでも最後は粘りきれず、トータルで9勝17敗となり最下位に終わった。

■若手を起用できたことと、コロナの影響によるケガがなかったこと

オーダーを書き込む
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 そんな「思いどおりにいかなかった」というシーズンだったが、手にした収穫は少なくはなかった。

 「ずっと使いたいと思っていた若い選手を、試合で使い続けることができた。投手では小笠原智一)や(西村太陽、野手では新谷恵右)や柏木寿志)、(アンディ…。たとえ調子が悪くても、試合に勝てなかった中でも、ブレずに我慢して使い続けられた」。

 だからこそ、成長の跡を見ることができた。

 「若い選手が力をつけてきたなというのはある。結果は出なかったけど、やろうとしていることが練習でできるようになってきたんで、もう一歩というところ」。

 監督を我慢させられるだけのものを、彼ら自身もアピールしてくれたということだ。

06ブルズの村田辰美監督とメンバー交換
06ブルズの村田辰美監督とメンバー交換

 「それと、こういう状況の中でもケガをしなかった。コロナの自粛期間で動けなかったことで、ケガが今年はすごく怖かった」。

 我慢して使い続け、それに応えようとしてくれた選手たち。そして、未然に防ぐよう監督自身も手を尽くしたこともあり、コロナの影響によるケガがなかったこと。この2つが大きな収穫だという。

■投手陣の収穫と誤算

フル回転した西村太陽投手
フル回転した西村太陽投手

 投手陣では「太陽がすごい収穫だったなと思う」と西村投手の名前を真っ先に挙げる。

 シーズン前から話していたとおり、來間孔志朗投手小牧顕士郎投手らは「ある程度、計算できていたし、そのとおりの活躍はしてくれた」と認めた上で、「その中ではやっぱり太陽が一番伸びてくれたかな」と目を細める。

 「もともと(カウント)3-2からでもインコースに投げられる度胸があったけど、テンポがすごくよくなった。それと、投げることが好きで苦にならないんで、どんなときも『投げたい』って言って投げてくれたので助かった。実戦で投げることによって成長していった感じかな」。

試合後の投手ミーティング
試合後の投手ミーティング

 中継ぎで開幕した西村投手だが、途中から先発に回り、フル回転した。公式戦において先発6試合、中継ぎ10試合の計49回を投げ、3勝3敗、防御率2.76という成績を残している。

 「先発でも中継ぎでもどちらでもいける。でも本人がやっぱり先発したかったというのがあるし、先発のほうがイキイキしていた」。

 キレのある球で来季も中心投手として働いてくれそうだ。さらに投手キャプテンという重責も担う。

期待の投手陣(左上から時計まわりに小笠原智一、藤山大地、山科颯太郎、來間孔志朗)
期待の投手陣(左上から時計まわりに小笠原智一、藤山大地、山科颯太郎、來間孔志朗)

 「ただ…誤算もあった」。そう顔を曇らせたのは、山科颯太郎投手のことだ。

 「本来は颯太郎にフル回転してもらう予定だったんだけど…、ちょっと夏以降、調子を崩したんで。それと藤山大地)の故障が痛かったかなと」。

 しかし藤山選手の肩、ひじは既に癒え、“二刀流”2年目となる来季は勝負の年と意気込んでいる。山科投手は「先発がしたい」と言いながら、張りきってブルペンで投げ込んでいる。

 「颯太郎ね、あいつ、先発も中継ぎも全部投げたいと言ってたけど(笑)」。

 きっと今年の分も取り返してお釣りがくるくらい、フル回転してくれるのだろう。

円陣で話す
円陣で話す

 「基本的には全員が先発できるようにという中で、競ってもらいたいと思っている。小牧は別として。來間も本当は先発したいだろうし。中継ぎだけの調整をしていて先発っていうのは難しいけど、先発の調整をしていて中継ぎはできるかなと思うんで」。

 その方向性のもと、この冬は徹底的に走り込み、投げ込みを課すという。球種もまっすぐに絞って、その質もスピードもとことん磨かせるつもりだ。

■継投の難しさを実感

マウンドで檄を飛ばす
マウンドで檄を飛ばす
投手ミーティング
投手ミーティング

 監督自身の反省もあるという。

 「今年は継投という継投をしなかった。イニング頭から代えることが多くて、それだとちょっと遅いかなと思うこともあった。経験の少ない若いピッチャーが多かったから、力を発揮させるためにはピンチで出すよりいい形で投げさせてあげたいと思ったんで、それが継投が遅れる原因になってしまった。それで結局、大量失点につながったり…。また、この回までと決めていても、よかったら引っ張ってしまったりもあった。そのへんが、今年はあまりうまくいかなかった」。

 昨年も投手コーチの立場で継投は任されていた。しかし経験豊富なリリーバーがそろっていたし、なにより前監督の山崎章弘氏がアドバイスをくれたり、背中を押してくれたりしていた。今年は決断する難しさを痛感したのだという。

 どのカテゴリーの野球であっても、投手の代えどきは監督にとって永遠のテーマである。とくに若い未熟な投手ばかりのチームにおいては、「好投させてあげたい」「結果を出させてあげたい」という親心も加わり、橋本監督の苦悩は深い。

■スイング量を課す

若手二遊間コンビ…左・柏木寿志、右・新谷恵右
若手二遊間コンビ…左・柏木寿志、右・新谷恵右

 野手に関しては、先述した新谷、柏木の二遊間コンビの成長を頼もしく見ている。

 「二人ともやっと基礎ができてきて、すごく形はよくなってきている。(試合でそれが)出そうなくらいの形にはなってきているんで、あとはその形にパワーをつけるなり、スピードを上げるなりプラスアルファでやっていけたらなとは思っている」。

 なんとかNPBのスカウトの目に留まるくらいのところまで引き上げたいというプランのもと、さらに鍛え上げる。

試合後の円陣
試合後の円陣

 打線としては「もうちょっと打てると思っていた」と振り返る。「点があまりに入らなかった。点の取り方というか…」と、そのあたりは首脳陣としての反省点でもある。

 さらに野手全体を見渡すと、ある点が浮かび上がった。スイング量だ。

 「基本的にバットを振る量が少なかったと思う。この冬はもっとバットを振り込んでヘッドスピードを上げないと。140キロ超えると詰まってたりしてたんで」。

 全体的な底上げは必須だ。

■走塁面もレベルアップ

ホーム最終戦後、挨拶をする
ホーム最終戦後、挨拶をする

 また、開幕前に掲げていた積極的な走塁や盗塁に関しても「思ったより走れなかった」と計算が狂った。

 グリーンライトを与えていた選手が牽制でアウトになったことによって、スタートをきるのに慎重になってしまったりなど、選手に任せることの難しさも痛感した。

 「もっとこっち側から『ディスボールで走れ』っていうサインを出せればよかったかなと思う」。

代打・山科聖を告げる
代打・山科聖を告げる

 そのあたりの課題も来季に生かす。

 「二瓶洋輔)もいるし、来年はさらに足の速い選手も入るんで、もうちょっと今年よりは走れるかなと思う。でもみんな、スタートが下手くそなんで。キャンプに入ったら、スタートの練習をしっかりしたいなと思っている」。

 足の速い選手はもちろんだが、チーム全体としても「走」をレベルアップさせる。

■実戦に即した秋季練習

秋季練習に厳しい視線を送る
秋季練習に厳しい視線を送る

 シーズン全日程が終了し、数日の休みを挟んですでに秋季練習は始まっている。

 「結局、打てなかったんで。打てなくて、最後ピッチャーが我慢しきれずに点を取られるというパターンが多かった。やっぱり取れるときに取れる打線じゃないとあかん」。

 ある日のケース打撃では「1死二塁」の場面、ボールカウントも1-1からに設定して行った。投手も投げるのはストレートのみに限定した。

 「まっすぐを1球でしとめる練習。まっすぐとわかっていても打ちにいけないバッターもいるんで。フリーバッティングばっかりやっていても、みんな気持ちよく打って終わってしまうんでね」。

 とにかく実戦に即した練習を多く取り入れたいのだという。

自らノックを打つ
自らノックを打つ

 また、野手陣には自身が守りたいポジションを申告するように通達した。独立リーグはNPBを目指す場所であり、己の野球人生を全うする場所でもある。悔いの残らないよう、納得するポジションで勝負を賭けさせる。

 もちろん、それぞれのポジションで争奪戦だ。これがチーム内競争を激化させ、チーム力の底上げに繋がる。来季へ向けての戦いはもう始まっている。

■“二刀流”は大成功

整骨院はコミュニケーションの場にもなっている
整骨院はコミュニケーションの場にもなっている

 初めての監督としてのシーズンを終えた。グラウンドでは苦労したが、整骨院の院長としての“二刀流”はうまくいったようだ。(関連記事⇒監督と整骨院院長の二刀流で奮闘

 「選手とは整骨院で話す機会が多い。それはいい影響が出ていると思う。選手の悩みを解決できたり、『あの場面、何を考えてたんかな』と思っていたことがわかったり。逆に選手から言われるのは、僕が何を考えてるのかわからんかったことが、整骨院で話してわかったとか」。

 整骨院では信頼して体を預ける。そうすると自ずと心も開かれる。来季もよりコミュニケーションを深め、一丸となる。

■育てる、勝つ、そして新たなるドラフト候補を

試合前の穏やかな表情
試合前の穏やかな表情
木村豪コーチと二人三脚で
木村豪コーチと二人三脚で

 「当初は、勝つに越したことはないけどドラフトメインで、とは思っていた。でも、やはり勝たんと悔しい。勝ちたい。まぁでも、そこはブレずにある程度はやっていこうとは思う」。

 一人でも多くの選手をNPBに送り出す。その中で勝ちながら育て、育てながら勝つ。これほどの難題はない。

 「来年は今年の小山一樹)みたいな選手はいないんで、ドラフト候補になるような選手を頑張って作らないとあかん」。

 「指名確実」と言われていた小山選手の指名がなかったことは、橋本監督にとってもいたくショッキングなことだった。「そんなに甘くないんやなという現実を突きつけられた」と肩を落とす。

 しかし、選手たちの夢を叶えてやりたいという思いは変わらない。橋本大祐監督はまた心機一転、来季も難題に挑む。

来季に向かって―
来季に向かって―

(写真撮影はすべて筆者)

《追記》

兵庫ブルーサンダーズでは11月21日、チーム内から選手1名の新型コロナウイルス陽性者が出たため、同30日まで活動を自粛している。