ドラフトへ向けて、NPBとの“ラストオーディション”でBCリーガーたちは存分にアピールはできたのか
■読売ジャイアンツ3軍とオリックス・バファローズのファームを相手に“ラストオーディション”
今年も“ラストオーディション”の幕が下りた。(ラストオーディションとは)
独立リーグであるBCリーグ11球団から選抜されたメンバーによるチームが、9月19、20日は読売ジャイアンツ3軍と、25、26日はオリックス・バファローズのファームとそれぞれ対戦した。
NPB各球団からのスカウト勢もこぞって訪れ、ダイヤの原石探しに目を凝らした。
19日は17安打で11得点、7人の投手陣が1点に抑えた。
20日は8安打で5得点、同じく7投手が投げて失点は2だった。
ただ、3軍選手相手に打ち込み、抑えたこの結果では、スカウト陣も評価のしようが難しかったのは確かだ。
次のバファローズ戦で真価が問われることとなった。
25日はわずかに3安打で1点を取るのがやっと、6投手が登板して7失点した。
26日は9安打したもののホームは遠く1得点、6人の投手陣は踏ん張って2点に抑えた。
■福井ミラクルエレファンツ・田中雅彦監督の総括
ジャイアンツ戦ではコーチとして、バファローズ戦には監督として4戦すべてベンチに入った福井ミラクルエレファンツの田中雅彦監督に総括してもらった。
「今年は今までと比べて少人数で、それぞれの選手の出場を増やしたことはよかった。そのほうが絶対にいい。2試合出場できるということは、1日目ダメでもまた2日目にアピールできるチャンスがあるわけだから」。
そう評価したあと、顔を曇らせた。選手のアグレッシブさに物足りなさを感じたのだ。
連日、練習前に選手を鼓舞した。「プレーの内容だけでなく、それ以外のところもスカウトは見ている」と。
全力疾走であるとか、声の元気さ、立ち居振る舞いなど、「NPBに行きたいんだ!」「NPBで活躍してやるんだ!」という“前のめり”な姿勢を求め続けた。
しかしそういった点で、田中監督の目にはややアピール不足に映ったようだ。
「打つ打たない、捕った捕れない、抑えた打たれた、以外でアピールできることっていうのが、もっといっぱいあるやろう」。そう、淋しげな目で話した。
投手に関しては「数人はちょっと思ったような投球ができなかったけど、それ以外のピッチャーは比較的いいピッチングができていた。抑えるやつは、しっかり抑えていた」と、うなずいた。
「結果が出せなかった投手は、もし来年やるならこの悔しさを忘れないで、もっともっと認められる選手になるしかない。『この試合でたとえダメだったとしても、その前の評価は変わらないから』って言われるくらいのものを求めてほしい。
スカウトもこの試合の前にずっと見て、ある程度の力量は把握してきているわけだから。評価が揺るぎないっていうくらいのものをシーズンで残せるのが理想」。
■加藤壮太外野手(埼玉武蔵ヒートベアーズ)
そんな中、前評判の高い選手たちの活躍は納得だという。
「松岡(洸希=武蔵)にしても長谷川(凌汰=新潟)にしても、結果はしっかり出している。評価はたぶん上がったと思う」と話したあと、ひとりの選手の名前を挙げた。
「加藤なんかはいいね、気持ちが。純粋。人が話しているときの、見る目も違う。こっちがしゃべっているときも、なんとか吸収しようとか、言ってることをちゃんと自分の中に留めようという姿勢で聴いている」と、埼玉武蔵ヒートベアーズの加藤壮太選手を讃えた。
数球団から注目を集めている加藤選手は走攻守三拍子そろっている上、長打力も兼ね備えた外野手だ。この選抜試合でも存分に力を発揮した。
スカウトは野球の力量は当然だが、その性格や人柄も重視する。田中監督によればその点も申し分ないという。加えて甘いマスクは、NPBに入れば人気が出ること間違いなしだ。
■喜多亮太捕手(石川ミリオンスターズ)と坂本竜三郎捕手(福井ミラクルエレファンツ)
さらに自身が捕手出身であることもあって、喜多亮太(石川ミリオンスターズ)と坂本竜三郎(福井ミラクルエレファンツ)の2人の捕手についても触れた。
まず喜多選手については「思っていたとおりの評価じゃないかな。初めて組むピッチャーに対しても、早い段階でいいボールを見分けてしっかりリードしていた。盗塁も刺せたし」と評した。
さらに「登球内容が悪くてベンチに帰ってきたピッチャーに、『シーズン中とここがこう違う』って、その選手のために一生懸命言える子。肩も強いし、バッティングもいい。能力がある」とも付け加えた。
自チームの教え子である坂本選手に関しては、どうしても見る目が厳しくなる。組んだ投手の制球が安定しなかったことについても、愛弟子にもその責任を求めた。
「もし喜多が(マスクを)かぶっていたら、もしかしたら全然違う結果になっていたかもしれない。もっと強く言ったりできていたかもしれない。それはわからないけど。
でも、竜(坂本)が初めて組むピッチャーに対してもっと意識をさせられるような、しっかり安心感を出せるようにならないと」。
期待が大きいからこその苦言だ。「でも、竜もよく頑張っていた」と、その力は大いに認めている。
喜多選手という5学年上の先輩捕手と同じチームで戦えたことは、坂本選手にとってこの上ない勉強になったのは間違いない。必ずやこの経験を活かすことだろう。
■3軍とファームの差
ジャイアンツ3軍戦とバファローズ・ファームを比較し「(違いは)大いにあった。やっぱりモロに反応が違ったんで、3軍の選手と2軍の選手では」と、田中監督は振り返る。
「投げているピッチャーも感じたと思う。とくにはじめのほうに出ていた選手(Tー岡田選手、白崎選手ら)なんかは、追い込んでからもなかなか振ってくれないし、三振なんてほとんど取れない。それはもう肌で感じてるやろう」。
その差は歴然であったと語る。
「(バファローズ戦は)ジャイアンツ戦のように、そこまで考えずにできたのとは違う。見ているスカウトたちの本気度も変わったと思う。(既存のNPB選手と)比較できるというか、どういう反応ができるかっていうところが見ることができたし、NPBでどこまでできるかのイメージをわかせることができた。
だからこそ、そこでいいパフォーマンスができれば自分の評価も上がるわけだし、大きなチャンスだった」。
しかし、そこまでの期待に応えられた選手は数少なかったのが現状である。田中監督は大きく息を吐いた。
各球団のスカウトがどのように感じ、どんな報告をしたのか。
BCリーガーたちのチャレンジの答えは10月17日、ドラフト会議の場で明らかになる。
ひとりでも多くの選手が指名されることを願っているのは言うまでもないが、もし指名漏れをしてまた来年も挑戦しようという選手は、どうか田中監督の言葉を今一度噛み締めて、臨んでほしい。
(撮影はすべて筆者)