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阪神タイガース春季キャンプー安芸からの逆襲 俊介外野手編

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
安芸からの逆襲に意気込む俊介選手

■まさかの安芸スタートとなった春季キャンプは、自分で考えて取り組むキャンプ

2015年の春季キャンプも半分以上を消化し、どのチームも紅白戦や練習試合など実戦が増えてきた。阪神タイガースも沖縄・宜野座、高知・安芸ともに練習試合が組まれ、いよいよチーム内競争が激化してきた。

若手選手の多くが宜野座に振り分けられているため、安芸には新人以外の「若手」と呼べる選手が極端に少ない。調整を任されているベテラン、力量を見極め中の新人とは違い、やや複雑な思いがあるのが中堅どころの選手だろう。特に初めての安芸スタートとなった俊介選手が気に掛かった。ルーキーイヤーの2010年から5度のキャンプは、常に宜野座組だった。果たして今年はどんな思いで、どのようにキャンプに取り組んでいるのか。

「安芸からの逆襲」第2弾は、1軍への合流を虎視眈々と狙っている俊介選手を紹介したい。

「元気が一番」と話す俊介選手
「元気が一番」と話す俊介選手

安芸スタートとなったことは少なからずショックだったのでは、と尋ねたところ、「別に…。やることは同じなんで、そこまで思わないですよ」との答えが返ってきた。それでも宜野座なら常に1軍首脳陣にアピールできる。「そりゃそうですけど、こっち(安芸)でもしっかりやっとけば自ずと呼んでもらえると思うので、元気を出しながらやりたいですね。元気が一番ですから!」そう自らの言葉に力を込めた。

決まったことは受け入れるしかない。「練習の量も質も向こう(宜野座)にいても、こっちでも変わらない。ただ、こっちは自分でやらないといけないことがたくさんある。自分で考えてやらないと上達しないんで。自分で考える能力はできると思う」とプラスに変換し、自主的な練習に力を入れている。

幸い、安芸にはタイプこそ違うものの関本選手狩野選手ら、同じ右打者の先輩たちがいる。「バッティング回り中、『今日どうでした?』とか、自分から積極的に訊くようにしています。いいこと言ってくれたり、『こうなってるよ』とかアドバイスもらったりするんで、ありがたいです」。この環境を存分に“活用”することにした。

■厳しく見つめる八木ファーム打撃コーチ

課題の克服に勤しむ毎日
課題の克服に勤しむ毎日

もちろんコーチからの指導もある。八木ファーム打撃コーチも「レギュラーを奪いにいかないと」とバックアップは惜しまない。やはり課題はバッティングだという。「守備も走塁もあるのだから、バッティングのレベルを上げないと。こっちのキャンプになったんだから、これをいい機会に自分をしっかり見つめて、『俊介のバッティングはこうだ』というのをわかってこないといけない」と話す。しかし「俊介はまだわかってないから自分のバッティングがないし、良くても継続できない」と、現時点での評価は厳しい。

八木コーチが挙げる俊介選手のバッティングの課題は2点だ。手の動きと、体が突っ込むこと。まず手の動きに関しては、「俊介の場合、バットが出る直前にヒッチする。遅いんだよ。バットが出る前は暴れちゃいけない。ヒッチの部分でタイミングを取っているんだけど、もっと間が欲しいんだよ」と説明してくれた。また「バットを振り出すのが早過ぎて、うまくミートできない」という。

そして、突っ込むことに関しては「力むと体重移動が激しくなって、突っ込んでしまう。俊介の場合、後ろに体重を残すだけじゃなく、ボールを後ろから見ながら打つイメージでいかないと」と言い、「振り出しに力が入らないように。力が入ると体が前にいくし、手が“悪さ”をするから。振り出しはゆっくり…70パーセントくらいのスピードでゆっくり振り出して、手の動きはスムーズに」と助言している。

八木コーチもなんとかしてやりたいとの思いが強いのだ。「能力はあるんだから、少ないチャンスの中でどうやって数字を残せるか。今の俊介は練習からアピールしないと。そしてオープン戦の数少ない打席で結果を出さないとね」。

■全てをレベルアップするために

防球ネットのすぐ傍での素振り
防球ネットのすぐ傍での素振り

自身の課題を克服しようと俊介選手ももがき、練習方法も試行錯誤している。例えば、通常は人にボールを上げてもらって行うロングティーを、自分でトスして打つ。「間です。自分で上げることで間が取れるんです」。また、素振りをする時は防球ネットのすぐ傍でバットを振り、バットの軌道がネットに当たらないようにする。「ドアスイングにならないように意識づけです」と、内からバットを出すことを自らに叩き込んでいる。

これらは全て自ら考え、工夫していることだ。「自分で考えないといけないと思いますし、自分で発見できれば、体に染み付くと思うので」と、高い意識で取り組んでいる。

武器である守備にも更に磨きをかける
武器である守備にも更に磨きをかける

また、得意とされている守備と走塁も更に磨きをかけている。守備は足の運びを修正し、より強く安定したボールが投げられるように改善している。

走塁もこれまで鳥谷選手上本選手大和選手らの技術を盗むべく、練習や試合に関わらず常に観察してきたが、安芸においても「スペシャリストですから」と田上選手をマークし、見るだけではなく躊躇なく質問をぶつけているという。

一昨年のシーズンは、大和選手が負傷離脱した穴を補って余りある働きをし、3割近い打率をはじめ自己最高の成績を残した。けれど昨年は悔しいファーム落ちもあり、出場も87試合に終わった。

しかし“陰の努力”を首脳陣もちゃんと見ている。関川打撃コーチは俊介選手の「準備」を評価する。「いつも早く来て、相手ピッチャーのビデオを見ているんだ。どんな球を投げるとか、配球、軌道のイメージを頭に叩き込んでいるね。打席だけじゃ打てない。準備やイメージがいかに大切か。体を動かすのは頭なんだから。試合中もよく訊いてくるよ。相手ピッチャーだけでなくキャッチャーの傾向なんかもね。そういうとこ、成長したし、若い選手に見習ってほしいよね」。シーズン中にこう話していた関川コーチもきっと、「早く上がってこい」と待っているに違いない。

■今の自分を超える

外野戦争に「待った」をかける!
外野戦争に「待った」をかける!

現在、外野の布陣は福留選手マートン選手大和選手でほぼ固まっている。このレギュラー陣に割って入るのは至難の技だ。更には、このキャンプで評価がうなぎ上りのルーキー・江越選手、昨年飛躍した伊藤隼選手、右の大砲と期待される中谷選手、安芸での注目度No.1の横田選手…ライバルは山のようにいる。

しかし俊介選手はわかっている。本当のライバルは自分だということを。自分自身が今より数段レベルアップしなければレギュラーはおろか、1軍にも呼ばれないことを。「今までと同じことをしていたのでは、絶対に使ってもらえないと思う」と自覚し、“今の自分”を超えることを誓っている。

その上で「実戦で成績を残さないことには試合にも出られない」と、結果にもこだわっていく。14日の練習試合では2安打し、少しずつ形になってきたことを実感した。

この先、何が起こるかは誰にも予測できない。決して諦めない。自分のバッティングを確立して、ガムシャラにレギュラーを奪いにいく。

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

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