Yahoo!ニュース

号泣のラスト!今年の上半期No.1韓ドラは、あの大ヒット作『D.P. 脱走兵追跡官』の学校版

渥美志保映画ライター
(C)Content Wavve Corp.

早くも今年が半年終わったことに戦慄する今日この頃ですが、韓国ドラマファンの皆さん、いかがお過ごしでしょうか。韓国ドラマの配信ではこの6月、7月は注目の新作だらけで、何を見るのがいいか悩んでいる人(私ですが)も多いと思います。私が一番楽しみにしているのは7月末配信の『D.P.脱走兵追跡官』(以下、『D.P.』)なんですが、それまでに1作品見るくらいの時間があるんだよな~……という人に!ぜひお勧めしたいのが、私の「今年の上半期NO.1」である『弱いヒーロー Class1』(以下、『弱いヒーロー』)です。実はこの作品は『D.P.』の監督が作ったドラマで、作品の世界観や雰囲気、質の高さなど共通点がたくさん。『D.P.』が好きな人はもちろん、『D.P.』を見ていない人にも自信をもってお勧めしたい、胸に突き刺さる号泣の1本!全8話と短いのもうれしい作品です。

※ポッドキャスト版では別の話もしていますので、こちらもぜひお聞きくださいませ!

まずはざっくりとあらすじから。

自分の世界に閉じこもる成績優秀な高校生シウン(パク・ジフン『コッパダン 恋する仲人』)は、ひょんなことからいじめっ子のお坊ちゃまヨンビン(キム・スギョム『放課後戦争活動』)の標的に。執拗な嫌がらせにキレ、暴力で一線を超えそうになった彼を止めてくれたのが、教室では常に寝ているスホ(チェ・ヒョヌク『25,21』)です。ここに加わったのが転校生のボムソク(ホン・ギョン『悪鬼』)。いじめられっ子ゆえにヨンビンのいじめの片棒を担いでしまった彼は、いじめに屈しない二人に近づき、友達になります。

ところがこのトラブルをきっかけに学校を退学するはめになったヨンビンは、金で雇った不良に仕返しを依頼したことから、さらに半グレ集団を巻き込んだ大ごとに発展してゆきます。

『D.P.』と共通点が多い作品なんですが、一番似てるな~と思ったのはキャラクターの配置です。『D.P.』の面白さはなんといってもバディものの面白さでしたよね。「クソまじめなジュノ」とク・ギョファン「ひょうひょうとした変人ホヨル」のやり取りにいちいち笑ちゃったんですが、今回も「頭がいい陰キャのシウン」と「ひょうひょうとした陽キャのスホ」のコンビにその楽しさがあります。他人を信じず、寄せ付けまいと身を固くするシウンの世界に、空気を読まず能天気にずかずか踏み込んでゆくスホ、そのあまりの悪びれのなさにシウンは怒る気も失せ…というやりとりをするうちに、孤独だった二人が少しずつ距離を縮めてゆきます。

アイドルグループ「Wanna One」出身のパク・ジフン(左)と、チェ・ヒョヌク(右)は『D.P.2』にも出演の大注目株。(C)Content Wavve Corp.
アイドルグループ「Wanna One」出身のパク・ジフン(左)と、チェ・ヒョヌク(右)は『D.P.2』にも出演の大注目株。(C)Content Wavve Corp.

主人公の3人はそれぞれ「シウン=頭がいいだけ、ネグレクト&コミュ障」「スホ=ケンカが強いだけ、貧乏なヤングケアラー」「ボムソク=権力者の息子なだけ、モラハラDV父を持つ養子」であり、スクールカースト下位の連中です。でもシウンは自分に向かう理不尽に常に静かな怒りをみなぎらせ、ズタボロにされながらも、ぜんぜん屈しません。「えええ、こんな相手にこんな風に歯向かって大丈夫なのっ!?」とハラハラさせられっぱなし。その危なっかしい暴発を、時に自分の身体を盾にしながら「そのくらいにしとけ」と制御するのがスホ。格闘技の選手であるスホは、シウンのまっとうな怒りに同意しながらも、自制を失った暴力がどれだけ危険かわかっているんですね。

その一方、二つの作品には大きな違いもあります。『D.P.』の追跡官たちが「軍隊内のいじめ」に対して、ある種の部外者だったのに対し、『弱いヒーロー』の主人公たちはまさにその渦中に、逃げ場のない当事者としていること。それを象徴するのが『D.P.』にはいない、ボムソクの存在です。『D.P.』では、社会システムの中にある「いじめ」の根っこをほのめかしながらも、基本的には軍内部の問題であり、当事者はそこから脱走することで解決を図ることができました。ところが『弱いヒーロー』のボムソクにはどこにも逃げ場がなく、よりどころは初めて手に入れたシウンとスホとの関係だけ。でもボムソクがふたりに「仲間として認めてもらいたい」という気持ちは、コンプレックスの裏返しでもあるわけです。「いじめ」がテーマであるかのように始まったドラマは、孤独と承認欲求に揺れて痛々しくこじれる友情の物語になってゆきます。すごく昔の映画で恐縮ですが、私は松田龍平主演の『青い春』という青春映画を思い出しました。

現在ディズニープラスで配信中のホラー『悪鬼』も好評の演技派ホン・ギョン。(C)Content Wavve Corp.
現在ディズニープラスで配信中のホラー『悪鬼』も好評の演技派ホン・ギョン。(C)Content Wavve Corp.

次々とトラブルに巻き込まれていく3人は本当に危なっかしくて、誰か相談できる大人はいないのか!って思うんですが、よく考えたら彼らを心から気遣ってくれる大人は最初からいないんですね。彼らだけじゃなくて、このドラマに出てくる子供たちみんなが、大人に見捨てられいいように搾取され、そこからどうにか抜け出そうと懸命にもがいている子供たちばかりなんですね。そういう中で何かしらの問題に巻き込まれ、彼らなりに解決しようと頑張り、「今日のところの、小さな勝利」というものもないわけじゃないんですが、完全な解決には程遠く、残された何かしらの禍根が次のトラブルを引き寄せてゆきます。

大人たちは、社会的に相当な大ごとになってから「なぜもっと早く」って言うわけですが、助けを求めたくても、彼らを心から気遣ってくれる大人はいなかったわけです。彼らがそういう痛みに押し流されてゆく悲しさに、ラストは号泣してしまいます。

『D.P.』では一番の悪役を演じていたシン・スンホが、こちらではすごくかっこいい役で登場。そのほか『D.P.』の俳優たちもたくさん出演。(C)Content Wavve Corp.
『D.P.』では一番の悪役を演じていたシン・スンホが、こちらではすごくかっこいい役で登場。そのほか『D.P.』の俳優たちもたくさん出演。(C)Content Wavve Corp.

韓国ドラマファンはNetflixに偏重してる感じですが、最近はほかの配信もかなり力入れてきています。特にこのところぐいぐきているのが、この作品を配信中の「Hulu」。「『財閥家の末息子』がなんでNetflixじゃないのか」と同じような悩ましさなんですが、各配信が韓国ドラマに力を入れてきている証拠。こまめに乗り換えたりするのめんどくさいな~とは思うんですが、特にこの作品とか必見の作品なので、キャンペーンでひと月無料!みたいなものも利用しながら、ぜひご覧いただけたらと思います!

『弱いヒーロー Class 1』Huluにて配信中

関連記事

サブスク貧乏の私は言いたい。『財閥家の末息子』がなんでNetflixじゃないのか」

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

渥美志保の最近の記事