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侍ジャパンと相まみえる欧州代表チーム紹介(投手編)【侍ジャパンシリーズ2024】

阿佐智ベースボールジャーナリスト
昨日、京セラドーム大阪で練習試合を行った欧州代表メンバー(WBSC提供)

 井端監督率いる新生・侍ジャパンがこの秋に控えているプレミア12に向けて本格始動する。この春のテストマッチの相手は、ヨーロッパ(欧州)代表だ。

 「欧州」代表と言っても、今や野球強国のひとつとなったオランダには、野球の盛んなカリブの海外領土にルーツのある選手、イタリア、スペインにはドミニカ共和国、ベネズエラ出身の選手が多数おり、「ラテンアメリカ・カリブ連合軍」の色が濃い。これらラテン系選手にヨーロッパ系選手を加えて今回のチームがWBSCによって結成された。その国の名を挙げると、オランダ、イタリアの「欧州ツートップ」に加え、スペイン、ドイツ、スイス、それに昨年のWBCで日本の野球ファンの心をわしづかみにしたチェコとなっている。今回は、そのロースターのうち、投手陣から紹介していきたい(#のあとの数字は背番号)。

なお、今回のメンバーで唯一日本のプロ野球でプレー経験のあった元楽天のライナー・クルーズは、出場を辞退した。また、投手コーチとして、香川オリーブガイナーズとオリックス・バファローズでプレーしたアレックス・マエストリが帯同している。

#74ダニエル・アルバレス(スペイン)

ベネズエラ出身。27歳。 右投右打。

2014 年にルーキー級ドミニカンサマーリーグ・ヤンキースでプロデビュー。最高はクラスは3Aで、計2シーズンプレーし、12試合に登板している。先発、抑えとも経験があり、マイナー通算29勝13敗25セーブ。2022年にはメキシカンリーグのサルティージョ・サラペロスに在籍。ここ2シーズンは母国ベネズエラのウィンターリーグを主戦場としている。昨年の欧州選手権でのスペインの優勝に貢献した。

#99フェルナンド・バエス(スペイン) 

ドミニカ出身。32歳。右投右打。

2012年にルーキー級ドミニカンサマーリーグ・カージナルスからプロデビュー。2013年にはアメリカ本土のショートシーズンルーキー級のジョンソンシティに昇格した。2017年までに2Aでの22試合を含むマイナーリーグ199試合に登板した。その後、独立リーグを経て、2019年以降は イタリア・セリエAのサンマリノで活躍している。この冬はベネズエラウィンターリーグのカルデナレス・デ・ララで6試合に登板した。スペインの2023年欧州選手権優勝に貢献。

#46 マテオ・ボッキ(イタリア)

27歳。右投右打。

19歳の時、イタリアン・ベースボール・リーグのボローニャでプロデビュー。2シーズンを過ごした後、アメリカのテキサス大学オースティン校でプレーし、カブスと契約。計2シーズンで3Aを含むマイナーリーグで37試合に登板した。昨年の WBCの代表メンバーにも選ばれ、台湾での第1次ラウンド、パナマ戦にリリーフ登板している。昨年は、セリエAの地元球団パルマでプレー。先発投手として6勝1敗、防御率0.59という成績を残した。

#35ティアゴ・ダシルバ(イタリア)

筆者撮影
筆者撮影

ブラジル出身。38歳。右投右打。

サンパウロ生まれで、現地では日系人スポーツとされている野球に親しむ。19歳で台湾プロ野球の誠泰コブラスと契約し、プロデビューするも2試合の先発で4回2/3イニング、14失点でリリースされた。その後、イタリアに発足したプロリーグ、イタリアン・ベースボール・リーグのサンマリノで6シーズンプレー。64勝17敗を記録し、リーグを代表する投手となった。とくに2013年はレギュラーシーズン24試合中20試合に先発し、リーグ新記録の15勝を挙げるなど獅子奮迅の活躍をした。このシーズンのオフからベネズエラ・ウィンターリーグでもプレー、翌2014年にはメキシカンリーグのシウダーデルカルメン・ドルフィンズと契約を結ぶ。さらに2015年には、ブルージェイズと契約を結び、HI-A級と2A級でプレーした。以降は、主にラテンアメリカで活躍。この冬は、ベネズエラウィンターリーグのティブロネス・デ・ラグアイラでプレーし、カリビアンシリーズ優勝メンバーの一員にもなった。WBCにはイタリア代表として2017年大会に出場している。

#47ルイス・ルゴ(イタリア)

ベネズエラ出身。左投左打。30歳。

2011年にルーキー級ドミニカンサマーリーグ・インディアンスでプロとしてのキャリアをスタート。2021年までに3Aでの8試合を含むマイナー通算198試合に登板し、先発投手として51勝を挙げている。母国ベネズエラのウィンターリーグでは2017年オフよりプレー。2018年からはイタリア・セリエAのパルマに席を置いている。国際舞台では、2015年のプレミア12 でイタリア代表デビューを果たした他、2019年のカリビアンシリーズには、ベネズエラチャンピオン、カルデナレス・デ・ララの一員として出場している。

#85フランクリン・ファンフルプ(オランダ)

筆者撮影
筆者撮影

カリブ海のオランダ領シント・マールテン出身。右投右打。28歳。

2017年アマチュア・ドラフトでフロリダ国際大学からサンフランシスコ・ジャイアンツに25巡目で指名され、ルーキー級アリゾナリーグでデビューした。2021年シーズンまでに2Aでの3試合を含むマイナー通算107試合に登板し、12セーブを挙げている。その後は、 オランダ・フーフトクラッセ、独立系アトランティックリーグ、ドミニカ共和国、ベネズエラのウィンターリーグでプレーし、2019年のプレミア12と2023年のWBCにオランダ代表の一員と して出場したほか、カリビアンシリーズにも2度、キュラソー代表チームの一員として参加している。昨シーズンはアトランティックリーグのロングアイランド・ダックスでプレーしたほか、オフはドミニカとベネズエラのウィンターリーグでリリーフ投手として活躍した。

#20 トム・デブロック(オランダ)

筆者撮影
筆者撮影

右投右打ち。27歳。

2013年にMLBヨーロッパアカデミーに参加。その後、母国のトップリーグ、フーフトクラッセでの3シーズンのプレーを経て、2017年にデトロイト・タイガースと契約し、A級でプロキャリアをスタートさせた。マイナーリーグでは3シーズンプレーし、主に先発として64試合に登板。通算11勝を挙げている。コロナ禍でマイナーリーグのシーズンがキャンセルされた2020年にオランダに戻った後、頭角を現し、 2021年にはメキシカンリーグでもプレーした。昨シーズンは、ロッテルダムに本拠を置くネプチューンズのローテーション投手として7勝を挙げた。

第1戦の先発が発表された。

#39 ラース・ハイヤー(オランダ)

筆者撮影
筆者撮影

右投右打。30歳。

若干16歳でデビューし、マリナーズ傘下のマイナーで6シーズン送った以外は、フーフトクラッセでプレーしているベテラン。先発投手として、マイナーでは15勝、オランダでは58勝を挙げている。2021年と2022年にはリーグ最優秀投手に輝き、昨シーズンも強豪のひとつ、HCAWで7勝1敗の星を残している。WBCには2017年と2023年大会でメンバー入りしている。4日の試合では先発を務めた。

#33ケビン・ケリー(オランダ)

WBSC提供
WBSC提供

キュラソー出身。右投右打。33歳。

アメリカの州立南オクラホマ大でプレーした後、フーフトクラッセの強豪、ネプチューンズの主戦投手として先発、リリーフ両方で長らく活躍してきた。昨シーズンは32歳にして14勝1敗、防御率1.65で最多勝、勝率、防御率の投手三冠に輝いている。2018年シーズンにはイタリア・セリエAのリミニでプレーしたほか、昨年のオフはニカラグア・ウインターリーグの名門、ボエルでもプレーした。またカリビアンシリーズにもここ2大会、キュラソー代表チームの一員として参加している。2023年のWBCにもオランダ代表チームのメンバー入りしている。

#31マルティン・シュナイダー (チェコ)

右投右打。38歳。

2007年よりチェコ代表の主力選手としてプレー。チェコのトップリーグ、エクストラリガでは二刀流選手としてホームラン王、最多安打、打点王、最優秀防御率各1回、盗塁王、最多得点を各2度獲得している。前回のWBC予選大会では、本戦出場のかかった大一番のスペイン戦に先発し、6イニング1/3を1失点に抑え、チームを勝利に導いた。東京ドームでの本戦にも出場し、ここでも先発起用されたオーストラリア戦で5イニング2/3を1失点で切り抜ける好投をみせた。本業が消防士ということで話題になった。

#38 スべン・シュラー (ドイツ)

WBSC提供
WBSC提供

右投右打。28歳。

ドイツの国内トップリーグ、ブンデスリーガのレーゲンスブルクから2014年にドジャースに入団。2018年の3Aでの1試合を含み7シーズンでマイナー通算 144試合に登板し、15勝を挙げている。2016 年から2シーズンは、オフにオーストラリアン・ベースボール・リーグのシドニーブルーソックスでもプレーし、計24試合にリリーフ登板している。2023年にブンデスリーガに復帰。現在は ハイデンハイム・ハイデケプフェとプロ契約を結んでいる。

#25マルクス・ゾルバッハ(ドイツ)

筆者撮影
筆者撮影

右投右打。32歳。

2011年からツインズ、ダイヤモンドバックス、ドジャース、タイガース傘下のマイナーでプレー。3Aでの19試合を含む通算134試合に登板し、37勝を挙げている。マイナーリーグがコロナ・パンデミックで中止となった2020年には、イタリア・セリエAでもプレーした。オーストラリアン・ベースボール・リーグでも3シーズンプレーし、3チーム目となるアデレードでプレーした2018-19年シーズンには先発の柱として10試合に登板、5勝3敗、防御率1.10でオーストラリア人、アメリカ人以外では初のMVPに輝いた。今シーズンは、ブンデスリーガのボン・キャピタルズでプレーする予定である。

#2ダルトン・フォン・シャーマン(ドイツ)

右投右打。32歳。アメリカ生まれ。

テキサス工科大学から2012年にドラフト15巡目でドジャースに入団。主に先発としてマイナー4シーズンで3Aでの2試合を含む74試合に登板した。2016年からは活躍の場を独立リーグに移し、昨シーズンは独立リーグ最高峰と言われているアトランティックリーグのヨーク・レボルーションで6勝を挙げた。今シーズンはシュラー同じくドイツ・ブンデスリーガのハイデンハイム・ハイデケプフェでプレーする予定である。

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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