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京セラドームがきれいに青と黄色で二分された「なんば線シリーズ」。各国のスタンドの風景と比べてみよう

阿佐智ベースボールジャーナリスト
オリックスファンと阪神ファンに二分された京セラドームのスタンド

オリックスと阪神による59年ぶり関西球団どうしの対決となった「なんば線シリーズ」。全国的人気を誇る阪神を迎えるとあって、オリックスの本拠、京セラドーム大阪はタイガースファンで埋め尽くされるのではと噂されたが、蓋を開けてみれば、両軍のファンが半々といった具合で、「京セラジャック」は回避された。

実際に京セラドームに足を運んだが、本来ビジターの阪神側応援席である3塁側に多数のオリックスファンが陣取っている一方、「バファローズシート」と銘打たれ、球団側が暗にオリックスファンを誘導していた1塁側にもタイガースのジャージをまとったファンの姿がちらほら見られた。それでもおおむねセンターラインを挟んでバファローズの青とタイガースの黄の2色にスタンドが二分されるという日本の野球場でよくみられる風景が展開されていた。

近年は、地域密着型球団運営に成功したチームが多くなり、阪神をはじめ、広島、ソフトバンクなどの球場は180度地元ファンで占められるという風景も見られるようになったが、日本のプロ野球の球場の風景、とくに応援団の陣取る外野席はバックスクリーンでホーム側とビジター側のチームカラーで色分けされるというのが常であった。

今ではファン同士のいざこざを回避するため、「応援席」と指定された席では各々、ホーム側、ビジター側以外のレプリカユニフォームの着用や応援グッズの持ち込みが禁止されている。しかしこれは世界的に見れば、外野席での私設応援団による楽器付きの声出し応援という独自の観戦文化がある日本特有の現象である。

ホームチームのファン中心のアメリカ

メジャーリーグの球場では観客の大部分はホームチームのファンだ
メジャーリーグの球場では観客の大部分はホームチームのファンだ

野球の本場・アメリカでは、プロ球団は地域密着が基本なので、基本的に各球場はホームチームのファンで埋め尽くされる。ヤンキースなどの人気チームを除くと、ビジターチームのファンの姿はほとんど見かけない。応援スタイルも、球場主導が主流で、ファンはスタジアム側が試合の流れに合わせて流す音楽にリードされながらホームチームに声援を送る。

ただ、日本でいう応援団のようなものはないのかというとそうでもなく、私がこの夏訪ねたオークランドでは、外野席にドラムなどを携えた一団を目にした。ただし、ここを本拠とするアスレチックスはメジャーリーグきっての不人気チーム。閑散とした大きな球場では彼らの応援もほとんど響くことはなかった。

オークランドのスタジアムでは日本と同じようにライトスタンドに応援団が陣取っていた。
オークランドのスタジアムでは日本と同じようにライトスタンドに応援団が陣取っていた。

大都市ではビジターチームファンも多い韓国

にぎやかな応援と言えば、アジアの専売特許のようだ。現在日本でもおなじみになったチアをプロ野球の世界に本格導入したのは韓国プロ野球だが、この国の球場では、一、三塁側内野スタンドにホーム、ビジター各々のチームのファンが陣取る風景が見られる。地域の地元意識が高いと言われる韓国だが、首都ソウル周辺の球場では、地方出身者が自身の出身地のチームを応援すべくビジターチームを応援するファンも多い。

ホーム、ビジター関係なし。応援という「祭り」を楽しむ台湾

この韓国のチアを使った応援を輸入し、今では「本家」より日本で知られているのが台湾プロ野球だ。台湾もその国土の狭さから、ビジターチームのファンも結構多いのだが、応援は基本、ホームチーム中心である。ホーム側だけでなくビジター側のベンチ上でも華やかなチアのリードによる大音響の応援が繰り広げられる。この「応援席」に陣取るファンはチアのダンスに合わせて老若男女問わず踊るのだが、台湾のファンは、味方チームの勝敗よりこの応援の方に興味があるようで、ビジターチームのユニフォームをまとったファンが、チアと一緒に踊りながらホームチームを応援する風景も珍しくはない。

チアのリードに合わせてひたすら踊る台湾の応援スタイル
チアのリードに合わせてひたすら踊る台湾の応援スタイル

ちなみに台湾では、ビジターチームのファンの応援席は内野席の一番端か外野というのが相場である。

どちらのファンも仲良く観戦、ラテンアメリカ

最後にラテンアメリカのプロ野球の応援風景を紹介しておく。

広大な国土をもつメキシコのプロ野球はアメリカと同じくビジター側のファンをスタジアムで見かけることは少ない。サッカーとは違い観客がエキサイトすることはほとんどなく、ビジター側のファンとホーム側の観客がいざこざを起こすことはまずない。

地元チーム、ディアブロスロッホスのチームカラー、赤で染まる首都メキシコシティのスタジアム
地元チーム、ディアブロスロッホスのチームカラー、赤で染まる首都メキシコシティのスタジアム

面白いのは、ウィンターリーグのあるドミニカで、ともに首都サントドミンゴのキスケージャ・スタジアムに本拠を置く、リセイとエスコヒードのダービーマッチが看板カードになっている。この国には、ホーム側、ビジター側に各チームのファンが固まって応援するという文化はなく、おのおの思い思いにひいきチームに声援を送る。そういうこともあって、ホームチームのファン、ビジターチームのファンがスタンド中に混在していることが常なのだが、ここでもファン同士の衝突というのはほとんど起こらない。ダービーマッチでは、リセイファンとエスコヒードファンの友人同士が仲良く観戦という風景はおなじみのものになっている。

ドミニカプロ野球の看板カード、リセイ対エスコヒードのダービーマッチ。リセイが3塁側、エスコヒードが1塁側と一応のすみ分けはあるが、スタンドではエスコヒードの赤とリセイの青が混在している。
ドミニカプロ野球の看板カード、リセイ対エスコヒードのダービーマッチ。リセイが3塁側、エスコヒードが1塁側と一応のすみ分けはあるが、スタンドではエスコヒードの赤とリセイの青が混在している。

 今回の「なんば線シリーズ」でも同じようにオリックスファンと阪神ファンが隣同士で仲良く観戦という風景がよく見られる。59年ぶりの関西シリーズだが、例年のシリーズとは違い互いのファンが、勝敗そのものよりも、今シーズンのプロ野球最高峰の戦いそのものを楽しんでいるように思うのは私だけではあるまい。

(写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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