Yahoo!ニュース

「夢を叶える場」からNPBへの重い扉を開けた23人の独立リーガーたち【NPBドラフト】

阿佐智ベースボールジャーナリスト
独立リーグ3年目でNPBドラフトに指名された川上理偉(大分B-リングス)

 昨日NPBの新人選手選択会議、通称ドラフト会議が実施された。今やNPBへの重要な選手供給源となっている独立リーグからは過去最多となる本指名6人、育成指名17人の計23人が指名され、過去最高順位の2位で指名された者が2人という、昨年の本指名育成指名合わせて10人からの「大豊作」となった。

 現在日本で活動している独立リーグは8あるが、そのうち実に5つのリーグから指名選手が現れた。最も指名選手を輩出したのは、老舗の四国アイランドリーグplus(四国IL)で、9人がNPBへの扉を開けた。これに続くのが最大規模のルートインBCリーグ(BCL)で、8人が指名を受けた。

 球団別でみると、四国ILの徳島インディゴソックスは最多となる6人を輩出。中でも今シーズンセ・リーグを制した阪神から過去最高位の2位指名を受けた159キロ右腕の椎葉剛(前ミキハウス)投手には、早速即戦力の期待がかかっている。これに続くのが、同じく四国ILの愛媛マンダリンパイレーツと、今年発足した日本海リーグ富山GRNサンダーバーズで3人をNPBに送り出すことになった。このチームの「出世頭」は大谷輝龍(前伏木海陸運送)投手で、ロッテから椎葉と同じ2位指名を受けた。もともとBCLの創設メンバーだった富山はここ2年、「新リーグ」を転々としており、一部では選手のプレーレベルの低下もささやかれていたが、これまで8人をNPBに送り込んだ実績は健在であることを示した格好となった。

 また、富山が昨シーズン所属していた日本海オセアンリーグが関東に移転するかたちで再出発したベイサイドリーグ千葉スカイセイラーズ(現在はベイサイドリーグを脱退)、それに、これまで「独立リーグ日本一」の火の国サラマンダーズからしか指名選手を出していなかったヤマエグループ九州アジアリーグの大分B-リングスと北九州下関フェニックスは球団初のNPB選手を送り出した。

 明日から日本シリーズを控えている阪神は、先述の椎葉の他、富山から育成1位で松原快投手(前ロキテクノ)を指名した。昨年も指名が噂されながら涙を飲んだ松原だが、同じ富山から阪神に進み、侍ジャパンの世界一メンバーになった湯浅を目標にまずは支配下登録を目指すことになる。

その異名どおり柳田(ソフトバンク)を彷彿とさせる井上絢登(徳島インディゴソックス)は今シーズン四国ILで打率.321、14本塁打を記録した。
その異名どおり柳田(ソフトバンク)を彷彿とさせる井上絢登(徳島インディゴソックス)は今シーズン四国ILで打率.321、14本塁打を記録した。

 DeNAも本指名で独立リーガーを指名した。福岡大学時代は「福大のギータ」の異名をとった四国IL・徳島の井上絢登は、2年連続本塁打と打点の二冠王に輝き、その打棒はリーグでも群を抜いていた。1年目からの活躍が期待される好素材だ。ヤクルトも本指名でBCL新潟アルビレックスBC伊藤琉偉内野手(東農大中退)を5位で指名。チームは先日、NPBファームリーグへの参入を決めたばかりで、そろっての「NPB入り」を果たした。

四国ILで今シーズン、打率.256、33安打を放った宇都宮葵星(愛媛マンダリンパイレーツ)
四国ILで今シーズン、打率.256、33安打を放った宇都宮葵星(愛媛マンダリンパイレーツ)

 近年の低迷から即戦力の社会人で本指名枠を埋めた巨人は、育成ではソフトバンクに次ぐ大量7人を指名。3位で四国IL・愛媛マンダリンパイレーツ宇都宮葵星内野手(松山工高)、7位でベイサイドリーグ・千葉の平山功太外野手(環太平洋大中退)を指名し、将来に備えた

平山功太(千葉スカイセイラーズ)
平山功太(千葉スカイセイラーズ)

 独立リーグから大量5人を指名したのが中日と西武だ。

 中日は、本指名5位で投手の土生翔太(桜美林大)、育成1位で捕手の日渡騰輝(霞ケ浦高)のBCL茨城アストロプラネッツからバッテリーごと指名。さらに2位で四国IL・愛媛の菊田翔友投手(享栄高)、3位でBCL栃木で32盗塁を記録した尾田剛樹外野手(大阪観光大)、4位で九州アジアLの打点王、川上理偉外野手(同宮崎福祉医療カレッジ)と育成選手は全て独立リーグから指名した。大阪観光大からは昨年、尾田のチームメイト、久保修が広島から7位指名を受けて入団している。1年の独立リーグでの研鑽を経てようやく同じ土俵に立つことになる。大分B-リングスの立ち上げから参加して「石の上にも3年」。ようやく重い扉を開いた川上は、22歳ながら妻子持ち。女房子どもを養うべく、来春のキャンプで支配下登録入りを目指す。

BCLで13試合に先発し、3勝7敗、防御率4.36の成績を残した土生翔太投手 (栃木球団提供)
BCLで13試合に先発し、3勝7敗、防御率4.36の成績を残した土生翔太投手 (栃木球団提供)

 一方の西武は、本指名5位で北海道大学の学生との「二刀流」投手、宮澤太成を指名したほか、育成1位でカナダ育ちのシンクレアジョセフ孝ノ助投手(米・メアリー大)、2位で谷口朝陽(広陵高)と徳島から3人を指名したほか、4位で金子功児内野手(BCL埼玉武蔵ヒートベアーズ、光明相模原高)、6位でリーグ盗塁王の奥村光一外野手(群馬ダイヤモンドペガサス、東海大)と、BCLから2人の野手、計5人の独立リーガーを指名した。

 投手登録で今シーズンはリリーフで3試合の登板に終わった谷口だったが、そのポテンシャルを見込まれ内野手としてのサプライズ指名。最速153キロ右腕を野手として西武がどう育てるのか注目である。

 大谷を2位指名したロッテは、同じく富山から外野手の高野光海(池田高)を育成2位で指名。今や育成力球界ナンバーワンとも言われ、今回のドラフトでも上位指名を高校生で固めたオリックスは、育成で大江海透投手(2位,九州アジアL北九州、 久留米工業大)、芦田丈飛投手(4位,BCL埼玉、国士舘大)、河野聡太内野手(5位,四国IL愛媛、西日本工業大)の3人を指名。昨年のドラフトで四国IL徳島から育成4位で指名した茶野篤政の活躍も独立リーガーの育成指名を後押ししたものと思われる。

四国ILで今シーズン打率.301、12盗塁を記録した河野聡太(愛媛マンダリンパイレーツ)
四国ILで今シーズン打率.301、12盗塁を記録した河野聡太(愛媛マンダリンパイレーツ)

 今シーズンより四軍が創設されるなど育成には定評のあるソフトバンクも育成1位でBCLのホームラン王、福島レッドホープス大泉周也外野手(元日本製鉄鹿島)、7位でIL徳島の藤田淳平投手(東亜大)を指名した。3年連続で優勝を逃し、その育成力にも陰りが見え始めているとも言われているソフトバンクだが、独立リーグの「金の卵」を孵化させることはできるだろうか。

BCLで4位となる打率.349を記録し、16本塁打でキングに輝いた大泉周也(福島レッドホープス)
BCLで4位となる打率.349を記録し、16本塁打でキングに輝いた大泉周也(福島レッドホープス)

 学生、社会人選手に比べての彼ら独立リーガーの強みは、なんと言っても、長いシーズンを野球漬けにしてきたという野球に対するスタミナである。近年は、先述の湯浅や茶野だけでなく、ロッテの和田康士朗(元富山)など一軍の戦力として欠かせない選手も多く輩出している。後に続く者への道を切り開くためにも、彼ら独立リーグ出身の選手の活躍に今後も注目していきたい。

(キャプションの無い写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

阿佐智の最近の記事