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「怪人」ブーマー帰還。助っ人初の三冠王に輝いた阪急ブレーブスのレジェンドが京セラドームにやって来る!

阿佐智ベースボールジャーナリスト
一般社団法人日本プロ野球外国人OB選手会提供

 プロ野球もオールスター戦が終わり、いよいよ後半戦に突入するが、パ・リーグでは、オリックスが首位を快走している。連覇し、ライバル球団のマークが厳しくなる中、首位につけているのには、様々な要因が考えられるが、故障者が出てもそれを補う新戦力が台頭するという新陳代謝の良さもそのひとつだろう。今月初めには攻守の要だった森友哉が戦線離脱し、打線の弱体化が危惧されたが、今シーズン前に育成契約で獲得した新外国人、レアンドロ・セデーニョが、その穴を埋める大活躍を見せ救世主的存在となっている。

 セデーニョはベネズエラ生まれの24歳。メジャー経験はないが、その巨体と長打力、それに広角に打てるバッティング技術に多くのファンが「球団史上最強助っ人」の姿に彼を重ね合わせている。

まさに「オンリーワン」。史上最高の助っ人、ブーマー・ウェルズ

阪急時代のブーマー
阪急時代のブーマー写真:山田真市/アフロ

「僕に似てるって。もしそうならいいバッターに違いないけど、僕の存在はオンリーワンだよ」

と当の本人は「ブーマーの再来」を否定する。

 グレゴリー・デウェイン・ウェルズ。人呼んでブーマー・ウェルズと言えば、阪急ブレーブス最強の助っ人として外国人初の三冠王に輝いた往年のスラッガーだ。その彼が2012年のオリックス球団のイベント以来、11年ぶりに日本に帰ってくる。

 今回は、日本でプレーした外国人選手でつくる日本プロ野球外国人OB選手会(JRFPA)の活動の一環としての野球を通じた国際交流を目的としての来日。日本のファンと触れ合い、野球振興に貢献したいというブーマー氏の意向によるものだ。

「前回も感じたけど、日本もずいぶん変わったね。今回も前回同様京セラドーム大阪で始球式をするんだけど、ここではもちろんプレーしたことはないんだよね。そもそも大阪と言えば、僕らブレーブスにとってはビジターの地。その大阪球場も、僕たちの本拠の西宮球場もなくなってしまって寂しいね。西宮球場は僕が住んでいた神戸からも近く、交通の便も良かったから最高の球場だったよ。今もあったらなあとは思うけど、これも時代だね」

「阪急ブレーブス」に対する愛着

今はなき阪急ブレーブス最高の助っ人としての評価は高い。
今はなき阪急ブレーブス最高の助っ人としての評価は高い。写真:山田真市/アフロ

 アメリカではなかなかチャンスに恵まれなかった。彼がプレーしていた1980年代当時のメジャー球団数は現在より4球団少ない26。メジャーリーグじたいが今より狭き門だった上に、一部ではまだアフリカン・アメリカンに対する差別も残っていた時代だ。一説によると、彼が最後に所属していたミネソタ・ツインズには、「黒人枠」があり、アフリカ系選手のベンチ入りには暗黙のうちに人数制限がなされていたという。

 メジャー通算2シーズンでたった47試合の出場。本塁打ゼロの選手にチャンスを与えてくれた阪急ブレーブスというチームには、今でも人一倍の愛着がある。だから、古巣が今、「バファローズ」を名乗っていることには、複雑な思いもある。

「ブレーブスでプレーできたことは今でも光栄に思っている。阪急がオリックスになり、オリックスが近鉄と合併したのも時代の流れなんだけれども、複雑だね。オリックスに身売りされたときは、まだ『ブレーブス』のユニフォームを着ることができたから幸せだったけど、それが『ブルーウェーブ』になり、僕もホークスに移籍。そして今は、チームが『バファローズ』になってしまった。僕の中のバファローズは対戦相手だったので、なんだか変な気持ちだね」

 それでも、現在のオリックス・バファローズを率いるのは、阪急OBの中嶋聡監督だ。阪急からオリックスへの過渡期を一緒に過ごした戦友である。だから今でもバファローズの動向はチェックしているという。ブーマー氏が日本で優勝を経験したのは、1984年シーズンのただ一度のみ。この来日2年目のシーズン、彼はリーグ最多の171安打を放ち、公式戦の数と同じ130の打点を挙げ、37ホーマー、打率.355で史上初の助っ人三冠王に輝いている。

 先日のオールスター戦では、彼の翌年に三冠王を獲った元阪神のランディ・バース氏が野球殿堂入りの表彰を受けたが、それに先んじてトリプルクラウンに輝いたブーマー氏がいまだ殿堂入りしていないことに対する異論は多い。ちなみにバース氏の通算成績は、743安打、202本塁打、486打点。ブーマー氏のそれは1413安打、277本塁打、901打点である。

元チームメイト、中嶋監督との再会を心待ちに

 現在は、自宅のあるジョージア州で中学から大学までの若いアマチュア選手を指導しているというブーマー氏。時折日本のプロ野球も観ているという。

「僕らの頃よりストライクゾーンが少し狭くなったんじゃないのかな。それでも、打者を完全に封じ込めるピッチャーはすごいよ」

 最後に今回の来日についてのコメントをお願いすると、次のような返事が返ってきた。

「大阪では阪急時代のチームメイト、中嶋監督との再会を楽しみにしているよ。試合の日以外は、エースだった山田(久志)さん、福本(豊)さんたちとも会う予定があるんだ。始球式を行う8月3日の試合は、ファンと一緒にスタンドで応援することも企画しているよ。僕の現役時代、通訳としてサポートしてくれたロベルト・バルボンさんが、先日(3月13日)に亡くなったと聞いてすごく悲しい気持ちになったけど、オリックス・バファローズの歴史の源流に阪急ブレーブスというチームがあったことを若いファンに知ってもらうことができたならこんなうれしいことはないね」

 ブーマー氏は、アトランタから8月1日に来日、東京でのファンミーティングを経て、3日に京セラドームで行われるオリックス対楽天戦での始球式に臨む。この始球式の前にもドーム内でファンミーティングが開催される。大阪には6日まで滞在。その間、阪急時代のチームメイトと旧交を温める一方、ファンとの交流イベントも実施する。8月1日から3日の京セラドームでの試合は、恒例のイベント試合、「Bs夏の陣」。スタンドが満員になるのは必至だ。大入りの観客の前に現れる「怪人」がどんな投球をみせてくれるのか楽しみである。

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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