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「日本海」から「東京湾」へ、拠点を移し仕切り直したベイサイドリーグ

阿佐智ベースボールジャーナリスト
再出発したベイサイドリーグは千葉と神奈川でリーグ戦を繰り広げている。

 オリックスの核弾頭、茶野篤政(徳島インディゴソックス出身)や世界一に輝いた侍ジャパンのブルペンを支えた湯浅京巳(富山GRNサンダーバーズ出身)をNPBに送り出した独立リーグは、日本球界における存在感を増している。しかし、その一方で各リーグ、球団の経営状況は厳しく、また、リーグ、球団数の増加により、今、再編の波が押し寄せている。

 一昨年オフ、12球団にまで拡大したルートインBCリーグの西地区4球団が「独立」して発足した日本海オセアンリーグだが、初年度シーズンを終えた後、2球団を首都圏に発足させることを発表、ベイサイドリーグとして再出発することになった。この動きに北陸地方にとどまる富山、石川の両球団は、新リーグ、日本海リーグを結成。ベイサイドリーグは神奈川を拠点とするYKSホワイトキングス千葉スカイセイラーズの2球団体制でスタートをきることになった。

 その再出発したベイサイドリーグとはいかなるリーグなのか。5月末の神奈川・綾瀬公園野球場でのゲームに足を運んだ。

(YKSホワイトキングスは厚木飛行場近くの綾瀬球場を本拠としている)
(YKSホワイトキングスは厚木飛行場近くの綾瀬球場を本拠としている)

 YKSホワイトキングスの本拠、綾瀬公園野球場は、厚木飛行場に隣接したスポーツセンター内にある。小さなスタンドで観戦している最中に上空を自衛隊機や米軍機が通り抜けていく風景はこの球場の名物だ。今シーズン、ホワイトキングスはホームゲームのほとんどをここで行う。

 ここでプレーしている選手の多くは、アマチュア時代、決して主力として活躍した選手ではない。しかし自らの可能性を信じて夢の舞台であるNPBを目指している。

BCリーグ、日本海オセアンリーグでリーグは変われども2年連続最多勝を獲得した吉村大佑
BCリーグ、日本海オセアンリーグでリーグは変われども2年連続最多勝を獲得した吉村大佑

吉村大佑は、今年で独立リーグ3年目。軟投派のサブマリンは、活動を停止した滋賀球団のエースとして活躍した。2021年BCリーグ、2022年日本海オセアンリーグでともに12勝を挙げ、最多勝に輝いている。育成でのドラフト指名もささやかれたが、惜しくもNPB入りはならず、故郷・神奈川に発足したYKSに移籍した。

 滋賀GOブラックスからは8人の選手がYKSに移籍したが、吉村はリーダー格としてチームを引っ張るとともに、今年を最後のチャレンジと位置づけ、NPB入りを目指している。

荒川翔太(YKSホワイトキングス)
荒川翔太(YKSホワイトキングス)

 この日の両軍の先発もまたアマチュア時代不完全燃焼に終わり、夢への最後のチャンスを求めてこのリーグの門を叩いた。

 YKSの荒川翔太も吉村と同じく独立リーグ3年目の投手だ。智辯高校時代、甲子園の出場経験があるが控えに甘んじている。千葉の熊田稜もまた日大時代は現在巨人にいる赤星優志(2021年ドラフト3位)の陰に隠れて日の目を見なかった。この日は、この両軍の先発投手がテンポのいいピッチングで試合を作り(荒川7回1失点、熊田8回1失点)、緊張感のある好ゲームとなった。

熊田稜(千葉スカイセイラーズ)
熊田稜(千葉スカイセイラーズ)

 試合は8回表まで1対1の同点だったが、YKSは、8回裏1アウトから6番白神輝(四街道高)のライト前ヒットを足がかりに勝ち越し点をもぎ取る。

白神輝(YKSホワイトキングス)
白神輝(YKSホワイトキングス)

 これでYKSが逃げ切るかと思われたが、千葉も粘りを見せ、9回表にYKSのリリーフ、向井紘裕(日本ウェルネス大)から1点をもぎ取る。

 9回裏、延長戦も見据えて、千葉は大学時代、全国大会出場経験のある中村壮宗(東農大北海道)を投入したが、トップバッターからの好打順で迎えたYKSは、鈴村亜久里(日本航空高)が四球で出塁。バントで送った後、申告敬遠で1アウト1、2塁という絶好のサヨナラの場面を迎える。

中村壮宗(千葉スカイセイラーズ)
中村壮宗(千葉スカイセイラーズ)

 しかしここで4番の奥村真人(龍谷大平安高)は凡退。ツーアウトとなったが、この崖っぷちのチャンスにキャプテンの長谷川勝紀(近江高)が体勢を崩されながらもセンター前に落とし、YKSは見事サヨナラ勝ちを収めた。

最後は長谷川がしぶとくセンター前へもっていった。
最後は長谷川がしぶとくセンター前へもっていった。

 試合後ヒーローインタビューを受けた長谷川は、「チームが3連敗をしていたのでほっとしている」とキャプテンらしい責任感あるコメントを残していた。

 ベイサイドリーグの今シーズンのペナントレースは両球団による40試合。レギュラーシーズンの勝ち点の合計により優勝を決定する。このペナントレースの他、NPB球団との交流戦も順次組み入れていく予定で、今月13、14日には、大阪へ遠征し、オリックス二軍とリーグ選抜チームが対戦する。

(写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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