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コロナ禍にあっての「有観客」キャンプという挑戦

阿佐智ベースボールジャーナリスト
「BIG BOSS」の実戦初戦とあって満員となった宜野座球場

 2年ぶりにプロ野球キャンプがファンに公開された。昨年はコロナ禍にあって無観客での実施だったが、今やツーリズムの優良コンテンツとなった春季キャンプは、開幕を待ちきれないファンにとって、「推し」の選手をじっくり、間近に見ることのできる貴重な機会である。また、実戦重視となった昨今、キャンプ中盤にから盛んに行われる「練習試合」は、無料で開放され、ゲームに飢えた玄人ファンにとっても、ひいきチームのシーズンを占うことのできるうれしい機会となっている。試合が行われない日でも、メイン球場を中心に広がる室内練習場、フィジカルトレーニングの行われる競技場を含めた施設周辺には、ご当地グルメや球団グッズを扱うテントが並び、各キャンプ地は今や、「観光名所」と化している。

 とは言え、オミクロン株がいまだ終息の兆しを見せない中、各球団とも感染予防には神経をとがらせている。3年ぶりに沖縄を訪れたが、各キャンプ地とも往年の賑わいを完全に取り戻せてはいなかった。空席だらけのフライトは、そもそも沖縄に旅行に出向く人じたいが少ないことを如実に示していた。

 そういう中でも、ファンが殺到することが予想される人気球団の阪神、昨年日本一に輝いたヤクルト、それにBIG BOSSフィーバーに沸く日本ハムの3球団は事前に予約を行い、無料ではあるがチケットをウェブで入手するシステムを、また中日、DeNA、楽天、そして2次キャンプで来沖する巨人は来場者にその場で登録を行うシステムを採用し、「withコロナ」で有観客のキャンプを乗り切ろうとしている。

報道陣とファンのスペースを完全に分離していた中日のキャンプ地、Agreスタジアム北谷
報道陣とファンのスペースを完全に分離していた中日のキャンプ地、Agreスタジアム北谷

コロナ禍の影響を受けるキャンプ地

 那覇近郊ではヤクルト、中日、DeNAのセ・リーグ3球団がキャンプを行っている。休日の日曜に足を運んだが、昨年日本一のヤクルトはそれなりの賑わいを見せていたものの、他2球団のキャンプ地は、昨年の成績もあってか、閑散としていた。例年はキャンプ地の運動公園入口に人気球団マスコット・ドアラの大きなバルーンが鎮座している中日のキャンプ地・北谷には今年はそれもなく、ファンを喜ばせていたマスコットもやって来ないという。

人気マスコット・つば九郎を祭る神社まであるヤクルトのキャンプ地、浦添
人気マスコット・つば九郎を祭る神社まであるヤクルトのキャンプ地、浦添

 グッズ売り場やフードの出店などで尋ねても、やはり客足は鈍いとのこと。3球団とも、観覧はブルペンやサブグラウンドは不可でメイン球場のスタンドからのみ、サインを求めたり、プレゼントを渡したりの選手との接触は厳禁とキャンプならではの楽しみは全くなしという状況ではある意味、ファンの足が遠のくのも致し方ない。

 それでも、レプリカユニフォームを身にまとった熱心な各フランチャイズ都市からのファンはスタンドから熱い視線をフィールドの選手に送っていた。

コロナ禍の中、フィーバーにわく人気チーム

 そんな中でも、多くの人を集めていたのは、日本ハムと阪神の両球団だった。

 日本ハムについては、その理由は言うまでもないだろう。「BIG BOSS」こと新庄剛志新監督を迎えた効果は、キャンプ地で早速出ている。昨年新装なった春の本拠、タピックスタジアム名護は、平日でも他球団の休日以上の賑わいを見せていた。球場のスタンド内のデッキにあるグッズショップでは、BIG BOSSグッズが飛ぶように売れ、品切れが続出していた。例年の賑わいをまだまだ取り戻してはいないプロ野球キャンプにあって、BIG BOSSだけは、コロナ禍を吹き飛ばしているかのようにも見えたが、コロナ禍がなければ、これではすまなかっただろう。日本ハムのキャンプ地は連日人だかりができていたに違いない。

BIG BOSSグッズは売り切れ続出となっている。
BIG BOSSグッズは売り切れ続出となっている。

 その新生日本ハムが2月8日に最初の実戦を行った相手が、BIG BOSSの古巣である阪神であった。この練習試合の日も平日であったが、阪神のキャンプ地、宜野座は試合日ということもあってか、名護以上の盛況ぶりだった。おそらく試合がなくても、その賑わいぶりは他球団の比ではないだろうことは、キャンプ地に足を踏み入れただけで感じることができる。球場の周囲を闊歩するレプリカユニフォームの多さは、ここは甲子園球場ではないだろうかと錯覚を起こさせた。また、注目の一戦とあって、メディアの多さも他のキャンプ地の比ではなく、試合中は、松坂大輔、藤川球児という元メジャーリーガーたちが、自分たちと同じ世界最高峰の舞台に立ったBIG BOSSの采配ぶりをスタンドで取材・解説していた。

 また、スタンドは満席となり、事前に入場登録をせずにやってきたファンの多くが、スタンド後方の高台からの観戦を余儀なくされていた。

カメラマン席に収まりきらない報道陣がフィールド内の特設エリアからBIG BOSSを追う。
カメラマン席に収まりきらない報道陣がフィールド内の特設エリアからBIG BOSSを追う。

 今日14日からは、那覇で巨人、明日15日からは沖縄市で広島、糸満市でロッテが、実戦中心の第2次キャンプをスタートさせる。オープン戦は祝日となる23日のヤクルト・巨人戦(浦添)からスタートするが、近年のキャンプはその前に「練習試合」が実施される。ノックにまみれる選手や、特打でスタンドに放り込むスラッガーを見るのもいいが、やはりゲームを見るのが野球の醍醐味。これまで以上のファンが球場に足を運ぶことだろう。その中で観戦マナーを守るファンの姿勢がキャンプ中の観戦を防ぐことができれば、開幕後には3年ぶりとなる満員のスタンドを見ることができるのではないかと、日々近づく「球春」を待ちわびる次第である。

(写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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