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オリックス、今年は嵐の予感? 目立つ自前の新戦力

阿佐智ベースボールジャーナリスト
オリックス・バファローズの本拠、京セラドーム大阪

 大型補強による「万年優勝候補」も今は昔。ここ数年は、開幕前の順位予想でも各解説者は軒並みBクラスが相場となった感があるオリックス・バファローズ。実際のシーズンの順位もソフトバンクと壮絶な優勝争いを演じた2014年の2位以来、Bクラスが続いている。

 今年も専門家の前評判は決して良くない。しかし、オープン戦を観て、「嵐の予感」を感じているファンは少なくはないだろう。今年の戦力を見ると、元々評価の高い投手陣に加え、打線の方も、外国人助っ人やベテランを大型補強した「万年優勝候補」時代と違い、育成による自前の新戦力が目立っている。

ブレイクなるか。オリのスピードスター、佐野皓大

 一番打者として期待されるのは、7年目を迎える佐野皓大だ。

 大分高校から投手としてドラフト3位で入団するも、3年間一軍登板はなく、内野にコンバート。一旦は育成契約となりながらも、コンバート初年度のシーズン途中には支配下登録に復帰した。俊足に注目した球団は、佐野を外野手登録にするとともに、2018年オフには台湾、翌2019年オフにはオーストラリアのウィンターリーグに派遣。佐野も球団の期待に応えるかのように年々出場試合数を増やしていった。

 昨年はプレッシャーのかかる場面での代走中心の起用の中、77試合で20盗塁を記録。出塁数に対する盗塁数(出塁数39)は、50盗塁で盗塁王となった周東佑京(出塁数107)をしのいでいる。レギュラーポジションさえ取れば、パ・リーグのスピードスターをふたりで争うと思わせる存在であるのだが、投手を断念する要因のひとつとなった線の細さはバッティングにおいても、一軍レベルの投手には振り負ける印象が強かった。しかし、今春のオープン戦では、50打数15安打で打率3割をマークし、開幕1番センターをほぼ当確にしている。

太田椋・紅林弘太郎の次世代二遊間

紅林弘太郎
紅林弘太郎

 フランチャイズを神戸に移転し、ブルーウェーブとなって以来、小兵が多かったイメージの強い内野陣にも、新しい風が吹いている。高卒2、3年目の大型内野手が開幕メンバーに名を連ねそうだ。

太田椋は、2018年ドラフト1位で天理高校から入団した藤原(ロッテ)、小園(広島)、根尾(中日)ら擁する「ミレニアム世代」のひとりだ。走攻守三拍子そろった大型遊撃手として、「ポスト安達」の期待を受けた。

ルーキーイヤーの2019年はキャンプを二軍で過ごすも、打撃好調でキャンプ打ち上げ後、地元京セラドーム大阪で行われる巨人とのオープン戦で一軍でのデビューを勝ち取った。しかし、デビュー前日の教育リーグ(ファームオープン戦)で対戦相手のソフトバンクのエース、千賀滉大から死球を受け、骨折。一軍デビューはお預けとなり、シーズン前半を治療とリハビリに費やすことになった。それでも、復帰後はファームの正遊撃手として.258の打率を残し、チーム2位の6本塁打を放つなど、持ち前のパンチ力を見せつけた。一軍でも6試合に出場したが、無安打に終わった。

 2年目の昨年は、サードのレギュラー候補と期待されたが、開幕一軍はならず。それでも7月には一軍昇格し、サードのスタメンとして飾った一軍デビュー戦で、ソフトバンクのバンデンハークから初安打となるホームランを放った。

 サードの他、「本職」のショート、そしてセカンドでもスタメン出場し、20試合で61打席に立っている。しかし、シーズン終盤に安打で出塁後、ランナーとして野手と交錯し、骨折しシーズンを終えるなど、プロ入り以来ケガに泣かされている。この春は、セカンドとして、オープン戦もほぼフル出場。61打数11安打の.180と持ち前の打力を発揮しきれずに終わったが、守備面では思い切りの良さとハンドリングの柔らかさが目立ち、開幕戦のスタメンには名を連ねるものと思われる。

 その太田と二遊間コンビを組むだろう新星が紅林弘太郎。昨年、ウェスタンリーグを取材したとき、ひときわ目立っていた大型ショートだ。

 一昨年のドラフトで2位指名され、駿河総合高校から入団。昨年はファームでショートのレギュラーとして86試合に出場。リーグ最多の338打席に立ち、68安打を放った。二軍のシーズン終了後には、一軍デビューも飾り、プロ初安打を含む17打数4安打を記録した。今春のキャンプでは、好例の「球春みやざきベースボールゲームズ」の対ロッテ戦(2月23日、SOKKEN)で2打席連続弾を放つなど、昨シーズンファームで.220に終わった課題のバッティングで成長を見せた。オープン戦に入っても京セラドームでの初戦のスタメンにサードで名を連ね、4打数で1安打を放ち、3月5日に正遊撃手の安達了一が新型コロナに感染し、チームを離れることになると、スタメンショートに入ることになった。ルーキーイヤーの昨年から目を見張るものがあった守備力は、一軍でも十分に通用するもので、度々好プレーを見せたが、打撃の方は、オープン戦中盤に入って投手の調子が上がってくると、失速。結局、打率.176、ホームラン1 本という物足りない結果に終わった。

安達は、20日の二軍戦で実戦復帰したが、まだまだ調整不足。首脳陣が開幕は太田・紅林の二遊間で開幕を迎えるつもりであることはほぼ間違いないだろう。

2度目の開幕スタメンを「古巣」の捕手で狙う頓宮裕真

 オープン戦を見る限り今年のオリックスは扇の要を3年目の頓宮裕真に任せるだろう。

 大学日本代表で4番も務めたその打力に目を付けたオリックスが2018年ドラフトで内野手として2巡目指名。入団1年目の2019年には、即戦力ルーキーとしてサードのレギュラーで開幕戦を迎えた。しかし、慣れない内野守備が足を引っ張るかたちとなり、間もなく打撃不振に陥り、ファーム落ちとなった。その後、一軍復帰を果たしたが、走塁中に疲労骨折をおこし、残りシーズンを棒に振ってしまった。

 フィールドに復帰後、頓宮の手にはキャッチャーミットがあった。正捕手の若月健矢の打撃が伸び悩み、得点力不足に悩むチームは、打力のある捕手として頓宮を再生することにしたのだ。

 しかし、捲土重来を期して臨んだ2年目となる昨シーズンも、開幕直後のファーム戦で自打球を足に当て骨折。実戦には9月になってようやく合流となり、不本意なシーズンを繰り返すことになった。

 そして、3年目の今年。オープン戦16試合中13試合に出場。若月、伏見寅威との正捕手争いを制した。

開幕投手は、少年野球時代、同じ捕手としてキャッチボールをしていた2歳年下のエース、山本由伸。息の合ったコンビで、新生オリックスを勢いづけたい。

 その他にも、昨年ドラフトでの育成指名拒否騒動の後、仙台大学から入団した佐野如一(ゆきかず)が、オープン戦最後の阪神との「大阪ダービー」初戦でスタメン起用。二、三塁打を含む3安打を放って支配下契約と一軍登録を勝ち取った。

今シーズンのオリックス・バファローズが台風の目になることは間違いない。

(写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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