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実は、暑い夏より秋の方が蚊に刺されやすい これからの季節、刺されないための対策とは

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:イメージマート)

まだまだ暑いですが、真夏ほどの暑さではなくなってきています。蚊に刺されるのは夏までと思われる方も多いかもしれませんが、実は蚊は秋~晩秋にかけても刺してきます。

なぜ秋になっても蚊は刺してくるのか、どうしたら防げるのかについてご紹介します。

暑い夏より秋の方が刺されやすいのはなぜ?

真夏より秋の方が刺されやすいのは、要因はいろいろありますが、温度も影響しています。今年は猛暑日が多く暑い日が続きました。9月に入っても30度超えの日も続いていますが、そろそろ涼しくなるようです。

私たちを刺す蚊の種類は、家の中ではイエカと呼ばれるアカイエカ、外ではヤブカと呼ばれるヒトスジシマカが一番多くなります。これらの蚊が活動するのは15度~で、一番活発になる気温は25〜30度です。猛暑日にはちょっとぐったりしていた蚊が、これから過ごしやすい季節になってくると、人を刺しにやってきます。

蚊は日の長さを感じています

蚊は、日照時間を感じています。10月になると、日没が早くなり1日の中で夜が長くなってきます。それを蚊は敏感に察知して、越冬準備をはじめます。越冬のかたちは、蚊の種類によって異なり、アカイエカは成虫で、ヒトスジシマカは卵で越冬します。それぞれの蚊の越冬までの様子を解説します。

アカイエカ

家の中で人を刺すことが多いアカイエカ成虫の寿命は通常約1ヶ月ですが、晩秋に羽化したアカイエカ(メス)は、春が来るまで何ヶ月か生きることができます。オスは冬を越すことはできず、死んでしまいます。

日本では、4月~11月くらいに吸血、産卵しますが、九州など暖かい地域では1月頃まで見られることもあります。

晩秋になると、薄暗くて一定の温度のある場所でメスだけが越冬します。屋外では、下水溝や家屋の床下などが多いのですが、屋内の押入れや玄関の下駄箱の中でひっそりと冬を越していることもあります。知らない間にアカイエカと一緒に冬を過ごしていたということもあるかもしれません。

ヒトスジシマカ

外で人を刺すことが多いヒトスジシマカ(ヤブカ)は寒さに弱いので、成虫では越冬できません。通常はすぐに孵化できる卵を産むのですが、10月に入り日照時間が短くなると、冬が来ることを察知し、5度以下の低温で一定期間過ごさないと孵化しない休眠卵を産みます。

10月ごろ、冬に入る前のメス成虫は、休眠卵を産まないと子孫を残すことができないので、少々の危険は顧みず貪欲に吸血してきます。

これから晩秋にかけても刺してくる蚊の対策グッズや殺虫剤などを使っている方も多いかと思いますが、使い方を間違えると役に立たない場合があります。蚊の対策用商品の正しい使い方をシーン別にご紹介します。

窓を開けても蚊が入って来ないようにするには

爽やかな空気が入ってくる季節は窓を開けたくなりますが、蚊が入ってくるから閉めておこうと思われる方には、「液体式蚊取り」がおススメです。スイッチオンの時は、液体の有効成分が揮散し、安定して広がります。窓の側で使用することで、屋外からの蚊の侵入を防ぐことができます。

玄関の開け閉めで蚊が入ってくる場合もおススメです。玄関はコンセントが少ないので、電池式タイプがよいでしょう。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

寝ている時に蚊が気になる方は

寝ようとすると耳元で蚊のブーンという羽音がして眠れないという方には、寝る前にワンプッシュしておくだけのスプレーがおススメです。1回プッシュするだけで、有効成分が部屋中に広がり、蚊を駆除してくれます。1回のスプレー量が必要な薬剤量となっているので、必要量を考えることなく簡単に使えます。

夕方の水遣りやガーデニングには

ヤブカは昼間に刺してくるのですが、一番刺されやすい時間帯は夕方です。この時間は、庭に水をまいたりする時間と重なることから蚊に刺されやすい人も多いでしょう。

庭での作業を行う前に、草むら、庭木周り、物陰、地面などへスプレーをかけておくことで、蚊を駆除してくれますので、作業中に蚊に刺されることがなくなります。スプレータイプとワンプッシュタイプが販売されています。

キャンプやバーベキューなど、野外での活動には

蚊がいそうな野外へ出かける時は、肌に直接塗るタイプの虫よけ剤をおススメします。様々なタイプのものが販売されていますが、「塗りムラ」がないように塗ることが基本です。スプレータイプの虫よけ剤なら、肌から15センチくらい離してスプレーした後、塗りムラができないよう手で伸ばして、しっかりと広げます。顔や首筋には、手のひらにスプレーしてから塗ることでムラを防げます。お子様には、いったん大人が手の平にスプレーしてから塗ってあげるといいでしょう。スプレー剤以外にも、ムラなく塗れるジェルタイプや、顔や首に塗りやすいシートタイプ等いろいろあります。場面によって使い勝手の良いものを選んでください

イラストはイメージ
イラストはイメージ提供:イメージマート

虫除け剤を使いたくない時は?

肌に虫除け剤を塗りたくない方もいらっしゃるかもしれません。屋外でのスポーツ観戦など自分自身があまり動かない場合は、電池式タイプやUSBケーブルタイプの(モバイルバッテリーに繋いで使用できる)蚊取りをそばに置いておくと、器具の周辺に有効成分が揮散して、蚊から身を守ることができます。

蚊を駆除する薬剤は

蚊を駆除するのに使用されることの多いピレスロイド剤は、除虫菊(シロバナムシヨケギク)の花から抽出した天然の殺虫成分を起源として化学合成したものです。人を含む哺乳動物に対して安全性が高い成分なので安心です。また、蚊を駆除するための薬剤量は、人と蚊の体重差が大きく影響します。蚊より数千万倍も重い人にとっては極微量の殺虫成分となります。

最後に…

秋の蚊は本当に必死に刺してきます。現時点の日本では、蚊に刺されてもかゆいだけで大丈夫ということの方が多いでしょう。ただ、今後は蚊が媒介する感染症が国内に入ってくる可能性もあります。また、イヌ科動物に感染するフィラリア症(犬糸状虫症)は現在も国内に常在しています。ペットがイエカに刺されることで感染するリスクがあります。人もペットも「蚊に刺されない」ということを第一に考えて過ごしていただきたいと思います。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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