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秋はスズメバチが攻撃的に!「カチカチ」「ブーン」は警告音 刺されないためのポイント解説

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
(写真:イメージマート)

これから秋にかけては、ハチにいちばん刺されやすいシーズンです。日本では、年間10~20名くらいの方が、ハチの被害で亡くなられています(※1)。今回は、これから秋にかけての時期に刺されやすいスズメバチの生態と刺されないための対策をお教えします。

刺されるのはどんな時?

ハチの巣やハチ自体へ刺激を与えた時に刺される危険があります。巣を揺すったり石を投げたりといった直接的な刺激だけでなく、人が巣に気付かず必要以上に近づくことも、ハチにとっては刺激になります。巣の出入り口付近では常に見張り役が警戒にあたっています。

ハチが人を刺す理由は、人が嫌いだからとか、人を刺すのが好きだからとか思っているわけではありません。ハチは、自分たちの巣と女王、また自分自身を守るためだけに攻撃して(刺して)来るのです。

秋に攻撃的になるのはなぜ?

ハチが秋に攻撃的になるのは、ライフサイクルと関係しています。スズメバチは秋頃、巣がいちばん大きくなり、繁殖のピークを迎えます。また、9~11月頃は来年女王となる新女王が誕生する大切な時期なので、働きバチは、次期女王を必死で育て、守っています。その巣に、誰かが近づくと、巣を狙われているのではないか? 潰されてしまうのではないか? と、いつも以上に攻撃的になります。

これから秋にかけてよい季節になり、ハイキングやキャンプ、散策などで、山や森に行く機会が増えることから、ハチに刺される被害が出てしまいます。

もしハチと遭遇したらどうしたらいい?

もし、巣があることに気付かず、近づいてしまっても、いきなり刺してくることはめったにありません。まず、2~3匹が、まとわりつくように飛び回り様子を確認してきます。「カチカチ(※2)」という大あごを噛み合わせる音や、「ブーン」という攻撃的な羽音がしたり、また、自分の周りで停止飛行したりしている時は、「これ以上、近づいたら攻撃する!」というハチからの警告です。このような場面に遭遇してしまったら、悲鳴を上げそうになるのを我慢して、走らず、静かにゆっくりと来た道を後ずさりしましょう。この時に、注意が必要なのは、手を振って、ハチを追い払うような動きをしないことです。この動きを見たハチは人に攻撃されると感じます。そうなると、ハチは警報フェロモンを出し、仲間に敵が近づいていることを 伝えます。すると、巣から多くの働きバチが飛び出してきて、敵を倒そうと毒針で襲ってきます。こうなってしまっては、一刻を争う状況で猶予はありません。必死に逃げるしかなくなってしまいます。

※2オオスズメバチ警告音(九州大学大学院 農学研究院 附属生物的防除研究施設 上野高敏准教授)

イラストはイメージ(提供:いらすとや)
イラストはイメージ(提供:いらすとや)

ハチに刺されないためには?

ハチに刺されない方法を具体的にお教えします。

ハチは黒い色に対して攻撃的になります

ハチは、黒色に対して最も激しく反応し、攻撃的になります。山や森へ行く時は、黒色の服やバッグ、靴は避け、攻撃性が低くなる白色や淡色の服を着て、また、黒い髪を隠すために白っぽい帽子も着用しましょう。

ハチはニオイに敏感です

香水や化粧品、整髪料などの人工的な強いニオイがハチを興奮させる原因になりますのでニオイの強いものを身に着けることは控えましょう。また、ジュースやお菓子などの食べ物にも寄って来ます。甘いニオイを嗅ぎつけて、ジュースの缶に入り込んだりするので注意が必要です。

大きな音や動きは苦手です

ハチは、大きな音や激しい動きに敏感です。もし、ハチが近くに寄ってきたら、大きな声を出したり、慌てて振り払ったりするのは絶対にやめましょう。ハチは攻撃を受けていると感じてしまいます。走らず、騒がず、静かにゆっくりと後ずさりしましょう。

もし、刺されてしまったら

もし、ハチに刺されてしまったら、まず、安全な場所で安静にして、刺された部分を冷却して様子を見ます。刺された部分だけの痛みや腫れという軽い症状だけであればいいのですが、人によっては、アナフィラキシーショック といった全身症状を起こすことがあります。刺された部分の局所的な症状だけでなく、蕁麻疹(じんましん)や、血圧低下、呼吸困難という全身症状が見られたら、直ぐに医療機関への搬送が必要です。毎年、ハチに刺されて亡くなっている方の多くがアナフィラキシーショックによるものです。

ハチの生態を知りましょう

ハチは、社会性昆虫で、巣を基本に集団を作っていますが、その社会は雌を中心とした女系家族です。巣は女王バチと雌だけの働きバチで形成され、雄バチは、限られた時期にだけ産まれます。

毎年、4~5月に越冬を終えた女王バチが、巣を造り始め、産卵、育児、防衛という様々なことをたった1匹で行います。女王バチはシングルマザーです。子どもたちが成長して、働きバチになり数が増えると、女王バチは産卵に専念できるので、そこからは急激に数が増え、種類にもよりますが、1,000匹を超えることもあります。晩秋にはすべてのハチが巣を離れ、女王だけが生き残り、越冬をして春に備えます。巣は翌年に再利用されることはありません。

最後に…

ハチは、むやみやたらに人を襲ってくることはまずありません。巣や女王バチ、自身を守るために攻撃してくるだけです。ハチに対して攻撃を与えていると感じられる行動をとらなければ刺されることはありません。もし、今の時期に家の近くに巣を見つけたら、巣はとても大きくなっています。大きくなった巣の駆除作業は危険です。自分での駆除は避け、ハチ駆除業者に相談してみましょう。11月まではハチに注意してお過ごしください。

※1林業従事者における蜂さされ症例の研究(平田博国/獨協医科大学))―厚生労働省

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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