Yahoo!ニュース

キッチン周りの「コバエ」対策 食べ残しや飲み残しには要注意 あっというまの大量発生を防ぐポイント

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:イメージマート)

キッチンにたった1匹飛んでいるだけでも気になるコバエ。どこかに不衛生な場所があるのかもしれないと考えさせられたりしますよね。今回は、意外と知られていないコバエの生態や対策をご紹介します。

「コバエ」という名前のハエはいません

家の中で小さなハエを見つけたら「コバエ」と呼んでいるかもしれませんが、実は「コバエ」という種類のハエは存在せず、ハエの子どもというわけでもありません。小さなハエを総称して「コバエ」と呼んでいるのです。

家の中に出てくるコバエはすべて同じ種類とは限りません。場所別に種類が異なることが多いのです。今回は、キッチンやダイニングなど食品がある場所に出やすいコバエの種類と対処方法をご紹介します。

キッチンやダイニングに出るコバエ

お料理をするキッチンや食事をするダイニングで遭遇するコバエは、主に食品が発生源となる「ショウジョウバエ」と「ノミバエ」の2つが代表種となります。それぞれの生態を紹介していきます。

ショウジョウバエとは?

体長は2~3mm、体色は黄色から茶色、黒色まで様々ですが、眼は赤色です。ショウジョウバエの名前の由来は、眼が赤く、お酒に集まることから、お酒が好きで真っ赤な顔をした架空の動物「猩々(しょうじょう)」から名付けられたそうです。英名は「fruit fly(果物のハエ)」で、名前の通り果物も大好きでよく寄ってきます。

家庭内での発生源は、傷んで発酵し始めた果物や野菜、放置した糠床や酒粕、飲み残しのお酒などです。ほんのわずかな果物のかけらでもびっくりするような数のショウジョウバエが発生することがあるので、注意が必要です。

キッチンのシンクの生ゴミを放置すると発生源となります。また、家の近くに野菜畑や果樹園があり、野菜や果物のくずなどを捨てているとそこから家庭内に入ってくることがあります。

気温25度では、卵から約10日で成虫になり、翌日には産卵し始めます。1匹のメスが1日に80個の卵を産み、一生の間に500~1000個の卵を産むので、とても早く増えます。

写真はイメージ
写真はイメージ提供:イメージマート

ノミバエとは?

体長は2~3mm、黒褐色~黒色のものが多く脚が太く俊敏に動きます。ノミバエの名前の由来は、背中が丸いこと、後脚の腿節(たいせつ)が太く、羽で飛び回るよりピョンピョンと脚を使って跳ねる姿がノミに似ているから「ノミバエ」と付いたようです。英名はその特徴の通り「scuttle fly(跳ねるハエ)」と言います。

発生源は、生ゴミや腐った食物、排水口などで、密閉性の高い住宅にも侵入してくることがあります。動物の排泄物から発生することもあるので、ペットを飼育している時は注意が必要です。ノミバエの特徴は、飛ぶというより、ピョンピョンと素早く動くと言った方が当てはまります。キッチンやテーブル周りをウロウロして、手で捕まえようとしてもなかなか捕まらずイライラしてしまうことが多いコバエです。

1年中見られるノミバエですが、特に夏季に多く見られます。気を付けないといけないことは、ノミバエによる「消化器ハエ症」という被害が出る場合があることです。消化器ハエ症とは、ハエの幼虫が食物と一緒に偶発的に人の消化器に入ることで、粘膜を刺激して腹痛を起こします。ノミバエは料理や食品に産卵することがあるので注意が必要です。

以上2種類のコバエがキッチンやダイニングなどに出るコバエの代表種です。キッチンに多いことから、ショウジョウバエとノミバエを合わせて、ここでは「キッチンコバエ」と表現します。

キッチンやダイニング周りのコバエ対策

飛んでいるコバエだけを駆除しても、もうどこかに卵を産んでいるかもしれません。キッチンやダイニングは食品が多いので、「キッチンコバエ」が発生する原因を取り除くことが大事です。もちろん食品から自然にわいてくるわけではなく、買い物した食材などとともに入り込んできます。外部からの侵入をシャットアウトすることは難しいでしょう。ただ発生を抑えることはできます。そのためには、とにかく清潔にすることがいちばんです。

生ゴミは密閉する

キッチンコバエは生ごみのニオイをキャッチして近づき産卵します。少しくらいなら大丈夫と思って生ゴミを放置しておくと、そこから繁殖してしまいます。ゴミ出しの日までは、ナイロン袋などで小まめに密封し、ニオイが漏れないようにすることで寄ってこなくなり、産卵もできなくなります。

生ゴミに水分があるとニオイや腐敗がひどくなるので、ナイロン袋に入れる前に生ゴミの水分はよく切って、新聞紙などに包むと万全です。

食品や飲み物を放置しない

食べ残しの食品や飲み残しの飲料を放置すると、「キッチンコバエ」が寄ってきます。特に酒類のニオイは大好きなので集まってきます。飲んだ後の容器はきちんと水ですすぐ、食べ残しの食品はすぐに冷蔵庫や密閉容器などに入れることをお勧めします。

キッチンの排水口は小まめに掃除

生ゴミをしっかり処理していても、三角コーナーや排水口などのヌメリにキッチンコバエは集まってきます。特に夏の暑い時期は、排水口に生ゴミやヌメリが少しでも残っていると腐敗し、このニオイをキャッチして産卵することがあるので、面倒でもこまめな掃除でヌメリを取り除くことが大事です。市販の排水口クリーナーを使うこともお勧めです。

天然由来成分のスプレーも

天然由来成分でコバエを寄せ付けないスプレー剤を、キッチンの三角コーナーやゴミ箱などにスプレーしておくことで、キッチンコバエが来なくなります。化学合成殺虫成分を使用していないので、キッチ周りでも安心して使用できます。また消臭、除菌効果が含まれている商品もありますので、気になるニオイを消臭、除菌することもできます。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

部屋の中にコバエを見かけたら

コバエに直接スプレーすることなく、お部屋に1プッシュするだけで、部屋中のコバエを速効駆除できる「ワンプッシュ式スプレー剤」を使うと効果的です。ゴミ箱や生ゴミなどに群がるコバエには、直接スプレーすることで速効退治もできます。

スプレー剤を使いたくない時は

キッチンなど食品が置いてある場所で薬剤が入ったスプレー剤を使用したくない場合は、キッチンコバエ専用の捕獲器がお勧めです。キッチンコバエが大好きなニオイで誘引し、捕獲して駆除できます。

最後に…

今回は、キッチンやダイニングなどで見かける、食品が発生源となるキッチンコバエ(ショウジョウバエとノミバエ)について、生態と対策をご紹介しました。キッチン周りに出てくるコバエが好む場所を作らないことがいちばん大切です。最初見かけたときは1匹でも、何も対処せず油断していると、あっという間に大量に発生してしまうことがあります。増えてしまうと対処も難しくなるので、日ごろから、キッチンコバエが発生しやすい、シンクの排水口やゴミ箱などを清潔にしておくこと、また、食べ物や飲み物を放置しないことが重要です。暑い夏、キッチンでコバエに遭遇しないように、定期的な小まめな掃除をお勧めします。

【関連記事】

「コバエ」をお風呂や洗面所、トイレで見かけたら…水回りの発生源と対処法のポイント

リビングの「コバエ」どこから来るの? 観葉植物など注意したい場所と知っておきたい対処法

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

有吉立の最近の記事