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知らないと損する「ゴキブリ駆除」の基本 スプレーは「前」を狙え

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(提供:Yuriofyuriyuri/イメージマート)

ゴキブリの季節になっていますね。ゴキブリは気温25〜28度くらいの環境で最も繁殖しやすく(研究部の飼育室もその温度にしています)、30度以上の暑い場所は人間と同様に苦手です。そのため夏は、涼や食べ物を求めて家の中に入ってくることがあります。今回は、いわゆる「G対策」の基本として、ゴキブリの生態と、それを利用した駆除方法をお伝えします。

身近に見かけるゴキブリは3種類

「ゴキブリ」と聞いて思い浮かべるのは、家の中に出てくる黒くてテカテカして、夜中に電気を点けると、ササっと動いて足がとても速いもの(クロゴキブリと言います)、あるいは、飲食店などで見かける小さな茶色の虫(チャバネゴキブリと言います)ではないでしょうか。沖縄方面の方なら、頭のところに白い紋様のある大きな茶色のゴキブリ(ワモンゴキブリと言います)を思い浮かべる方もいるかと思います。私たちがふだん生活する中で見かけるゴキブリは主にこの3種類です。ただ、世界には約5,000種類、日本には現在62種類のゴキブリが生息しています。

ゴキブリの害

家の中に入ってこないゴキブリは、自然界で生態系の分解者(腐った木の枝、枯れた葉っぱなどを分解して無害化し、最終的に無機化してくれる存在)として重要な役目を担っているのですが、家の中に入ってくるゴキブリは、人間に害を及ぼすことがあるので、駆除した方がいいのです。(ゴキブリ自身が人間に害を与えたいと思っているわけではありませんが)

ゴキブリの害は以下になります。

◆見た目がとにかく気持ち悪い!

◆病原体を伝播します。

食中毒の原因であるサルモネラ菌や赤痢菌等や病原菌ウイルスを運びます。家で見かけるクロゴキブリやワモンゴキブリは、家の中と外を行き来していることが多いのです。外では、菌があるところも歩いていますので、菌がゴキブリ自身の体表に付着します。付着したまま家の中に入ってくると、家の中で菌を落とすことになります。たまたま、落としたところに食品があった場合、それを食べた私たちが食中毒を起こす可能性があります。

◆アレルギーの原因になります。

ゴキブリの排泄物や死骸が風化して細かくなった虫体の粒子が、主に鼻にアレルギー症状を起こす原因となると考えられていて、くしゃみ、鼻水、皮膚や眼への刺激が起こることがあります。

◆食害したり汚染します。

食品や貴重品を食べたりかじったりします。また、排泄物や嘔吐物で汚染します。ゴキブリは雑食性なので、食品だけでなく紙、木片、皮革類などを食べることがあります。文化財や美術品などを食害されると重大な被害となります。

◆機器へ侵入します。

発熱性の機器や部品内に入り込んでショートを起こす原因になることがあります。ゴキブリは暖かいところが好きなので、発熱性の機器に潜入してしまうのです。電話機の中にチャバネゴキブリが潜んでいた事例や、電気ポット内にゴキブリが侵入して、お湯を注いだ時に発見する事例も報告されています。

ゴキブリは前にしか進めない

家の中でゴキブリを見つけた時、どうしていますか? スプレー剤や何かたたくものを片手に持って追いかけてはいませんか? 追いかけると、どんどん逃げていってしまいます。逃げるのは、お尻のハの字状の「尾毛」で風を感じているからです。私たちがスプレー剤をかけようとか、たたこうと手を振り上げた瞬間の空気の動きを感じ、逃げてしまうのです。ゴキブリは、前にしか進めません。後ずさり(バック)はできないので、前へ前へと逃げてしまいます。また、危険を察知した時の動きはとても速くて、ワモンゴキブリでは、秒速150cmという海外の研究報告もあります。ワモンゴキブリの体長を3cmとすると、自分の身体の50倍の距離を1秒間で進んでいることになります。もし、160cmの人間だと、50倍は80mなのですごい速さです。

いらすとはイメージ (提供:いらすとや)
いらすとはイメージ (提供:いらすとや)

ゴキブリを仕留めるには

前にしか進めないゴキブリを仕留めるには、頭より前を狙えばいいのです。実験で、後ろを狙う時と、前を狙う時を試してみました。後ろから追いかけてスプレー剤をかけると、どんどん前に進んで逃げて行ってしまいます。逃げた先に隙間があれば、そこに逃げ込んでしまうでしょう。逆に頭の前方(進行方向)を狙うと、スプレー剤が体にきちんとあたって、すぐにひっくり返ってしまうので、本当にすぐに仕留められます。私も実際にやってみてビックリしました。ゴキブリは、床面から鳥のように羽ばたいて飛ぶことはできません。飛ぶ時は高い位置から滑空という形で飛ぶので、床面から自分に向かって飛んでくることを怖がらず、冷静に対処すれば仕留めることができます。今度見かけたらやってみてください。

とはいえ、慣れなくて逃がしてしまうこともあるでしょう。隙間に逃げてしまって、いつ出てくるんだろうと不安な気持ちで過ごした方もいらっしゃると思います。その場合は、逃げ込んだ場所に待ち伏せタイプやバリアタイプのスプレー剤をかけておくと、あとでゴキブリがそこを通ることで駆除できます。隙間用のノズルが付いている商品もあるのでお勧めです。また、隠れたところに、毒餌剤を仕掛けておくのも良いでしょう。

私は、害虫飼育の仕事に就くまでは、ゴキブリが人を襲ってくると勘違いして怖がっていたのですが、人を襲ってくることはありません。ふいに遭遇しても、パニックにならず、落ち着いて対処することで、確実に駆除することができます。相手のことを知ることは必要ですね。まだまだ伝えきれていないゴキブリの生態を今後もお知らせしていきます。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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