関東甲信、梅雨入り

 6日、気象庁が関東甲信で梅雨入りしたと見られることを発表しました。6日の夜から7日にかけて東北で大雨が心配されるなど、今後、土砂災害、低い土地の浸水、河川の増水が心配される時期となります。みなさまの備えは十分でしょうか?

 また、6月1日には、気象庁の線状降水帯予報が変わりました。

 線状降水帯の予測は難しいだけでなく、発生してしまうと積乱雲が風上側で次々と発生し、長時間にわたって狭い範囲で大雨をもたらします。そのため、気づいた時には状況が悪化してしまい、避難が遅れ、豪雨災害での人的被害をもたらしてきました。

 気象庁では、まずは「九州北部」など大まかな地域を対象に、半日前からの線状降水帯情報を提供することになりました。

 お天気情報を確実に得て早期の避難につながればと思います。

簡単ではない避難。避難するには事前の知識の備えが重要

 とはいえ、早期避難は言うほど、簡単ではありません。

 気象庁が情報を発信し、それを受けて、自治体から避難情報が出されても、事前に準備しておかなければ、避難にはなかなか結びついていません。

 2019年東日本台風の際に、「避難をした方がいいのではないか」との思いが脳裏をかすめたものの、避難しなかった方達がいます。その理由は何だったのか、江戸川みんなの防災プロジェクトの皆さんとワークショップで検討したことがあるのですが、次のような意見が出てきました。

出典 EMINBO(江戸川みんなの防災プロジェクト)監修 あんどうりす イラスト エムラヤスコ
出典 EMINBO(江戸川みんなの防災プロジェクト)監修 あんどうりす イラスト エムラヤスコ

 「できれば大丈夫であってほしい」という願いから、ネットで「台風」「大丈夫」と検索をかけてしまったその方は、「大丈夫」という情報ばかり出てきて、避難が遅れたというのです。

 ネット検索のアルゴリズムによって、似た内容が検索の上位に出てきてしまうため、まるで反響室の中にいるように、同じ意見が、大きく強く認識されてしまうエコーチェンバーという現象が起こることがあります。「大丈夫」という情報がたくさん流れてくるので、「大丈夫」だと思っていたら、おすすめ情報として、自分にだけ多く「大丈夫」と表示されただけだったという事態です。  

 こんな時、大切なのは、危険をしっかり認識できる知識です。知識があやふやなままだと、情報を補完しようとしていたことで、かえって、避難が遅れてしまうこともあるので、いざという時、逃げ遅れないように災害が起こる前に、お天気の知識は身につけておきたいところです。

「1時間あたり100ミリの雨」のわかりやすいイラスト

 知識が大事なことは理解していても、防災情報やお天気情報は、わかりにくかったり、わかった気になっているだけということはないですか?

 例えば、急な川の増水や低い土地の浸水を認識する重要な情報になるのが、1時間に降る雨の量です。 

 近年の豪雨で、「1時間あたり100ミリの雨」という言葉を耳にすることも増えました。それなのに、単位がミリなので、イメージ的にたいしたことなさそうに思われがちでした。

 もっと、わかりやすく伝えられればいいのにと思っていた時に出会ったのが、雲研究者、荒木健太郎さん(アラケンさん)の小柄な力士の例えのイラストです。

出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

 「1時間に100ミリ」の雨の意味については、「自分、100キロあります」という小柄な力士が、群衆になって、「1時間に1回1メートル四方に100キロの力士がひとり落ちるっす」と説明してくれています。

 このイラストを2016年の防災レクチャーからアラケンさんに許可をいただき、ずっと紹介してきたのですが、子どもにも大人にも大人気です。

 「1時間に100ミリの雨と言われてピンと来なくても、さすがに小降りの力士が落ちてきたら、早く逃げなくてはと思えた」「力士が川に集まってきて怖すぎ!」という感想続出の、すごすぎるイラストなのです。中には、スクリーンに映し出される力士をしっかり見たいがために、講演中、前に出てきてくれる小学生もいました。

理科、気象、防災の普及や学校教育に関わる方が使える資料に

 そんなインパクト抜群のイラストが、この度、「すごすぎる天気の図鑑」KADOKAWAの特設サイトから無料でダウンロードできるようになりました。

出典 出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA) 出版社の許可を得て、書影使用
出典 出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA) 出版社の許可を得て、書影使用

 出版されている本の中で実際に紹介されているイラストです。

 理科、気象、防災の普及や学校教育に関わる方であれば、お使いいただけます。詳しい使用上の注意は上記サイトでご確認ください。

出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

 力士たちは雪の重さの説明でも活躍しています。6メートル四方に2メートルの積雪だと、216人の小柄な力士が乗っているのですね!屋根の上の力士のインパクトは大きいです。

出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

 さらに、ダウンロードして利用できるのは、力士のイラストだけではありません。

出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

 空気のかたまり、パーセルくんは、アツくなると水蒸気を多く含むことのできるキャラです。水蒸気を飲みすぎると雲を作り、風も作りだす、それがわかりやすいイラストで説明されています。

出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

 雲が出来る仕組みは、イラストの他にもYouTubeでの実験の動画もあります。絞るように潰せるペットボトルとアルコールスプレーがあるだけで、今すぐ雲が作れます。アルコールが身近にある今が雲づくりのチャンスですね。100円ショップで販売されている材料で簡単にできる実験も紹介されています。学校で先生と、または親子で実験してみるのも楽しそうです。

 アラケンさんの例えは、力士といいパーセルくんといい、楽しくイメージしやすいのが特徴です。

 防災では、高潮や洪水ハザードマップに、想定される台風の目安として、台風の気圧が書かれていることがあります。

出典 尼崎市高潮ハザードマップよりあんどうりす作成
出典 尼崎市高潮ハザードマップよりあんどうりす作成

 となると、気圧の理解が前提になってくるのですが、アラケンさんによる気圧の例えはというと、まさかのキュウリでした。

出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

 気になるので、なぜ、キュウリを使ったかアラケンさんにお聞きしてみたところ、

100グラムのもので身近なもの(野菜とか)を探していたらちょうどキュウリがあったのでキュウリにしました

とのお話でした。「そこにキュウリがあったから」なのですね。

 イラストを見ていただければ分かるように、全てに「ふりがな」がついています。

出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

 楽しいイラストやキャラとともに、「なんで竜巻はできるのだろう?」「積乱雲ってどうやってできるの」という基本が分かってくると、もちろん防災情報を読み解けるようになってきます。でも、それだけにとどまらず、知識を得ると、ふだんから雲を見上げたくなったり、お天気情報そのものがワクワクする楽しい出来事になってきます。

出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)
出典 『すごすぎる天気の図鑑』(荒木健太郎/KADOKAWA)

資料公開のアラケンさんの思い

 アラケンさんが今回、貴重なイラストたちを公開してくださったのも、この楽しさを伝えたいという溢れるばかりの雲愛ゆえだということが、資料を見ているとわかります。

 自然は、災害をもたらすこともありますが、多くの恵みや驚き、発見も与えてくれます。虹が発生する場所を探す方法、天気にまつわる迷信など、これを子どもの時に知っていたら、人生が変わっていたかもと思えるようなワクワクがいっぱい詰まっています。

 先生たちや防災レクチャーをする人によって、このワクワクを、そして、その結果として災害時にきちんと避難につながる知識を、子どもたち(子ども心を忘れない大人も含む)に届けられれば嬉しいです。

 最後にアラケンさんからの熱いメッセージを添付して記事を終わりにしたいと思います。

雲研究者の荒木健太郎と申します。

拙著『すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)に掲載したほぼすべてのイラスト・写真について、関係者のみなさまが教育や普及啓発目的の授業・講座・セミナーで使えるように、教材ダウンロードのしくみを公開しました。

上記の天気の図鑑では、空や雲、天気、気象について、

写真やイラスト図解で楽しみながら学べるように解説しております。

空や雲の観察に加えて、観察によって天気の変化を知る方法(観天望気)、

気象災害をもたらす現象のしくみ、防災気象情報の読み解き方などについても紹介しています。

理科・地学で扱う内容も一部フォローしており、総ルビなので小学生から読み進めることができます。

使用可能範囲はできるだけ広めにできるように版元と調整しまして、

「教育機関における授業、講座、セミナー」としています。

要は、教育目的であれば利用可能で、どこかしら教育要素のある組織に所属していればOKということです。

(小中高校や大学、国、自治体、学会、関連団体、学習塾などなど)

理科・気象・防災などの教育・普及啓発の現場にいらっしゃるみなさまに、

少しでも助力できれば幸いです。

 アウトドア防災の真髄は自然と仲良くなることだと思っています。水害の時期、資料のご活用によって、知恵の備えを万全にして、被害の軽減につながればと思っています。