Yahoo!ニュース

体育館や車内の寒さ対策 ダウンは濡らさない&体の近くで。 床には断熱素材を。 室内でも風を防ぐ。

あんどうりすアウトドア防災ガイド  リスク対策.com名誉顧問 
出典 佐久医師会 教えて!ドクター 赤ちゃんと防災

令和6年能登半島地震で避難した場所で寒い思いをされている方も多いかと思います。被災地では今後、雨も心配されています。

寒さ対策はアウトドアの基本でもあり、長野県佐久医師会 教えて!ドクタープロジェクトでも、防災チームとして発信していますので、ここで共有します。

寒さ対策のテクニックは多数ありますが、大枠として空気と水と風の話だと理解できていると、身近なもので応用も可能です。

出典 人と防災未来センター あんどうりす流アウトドア防災 展示ポスター
出典 人と防災未来センター あんどうりす流アウトドア防災 展示ポスター

空気を断熱材にする方法

寒い場合には、断熱層を作る必要があります。動かない空気層が自然界最強の断熱材になります。空気は被災地でも最も身近にある素材です。動かない空気層を作る例をいくつかあげます。

●新聞紙を丸めて服の中に入れると暖かいのは、新聞紙の中に空気を入れることができるからです。

●薄い服を重ね着すると暖かいのも、服の間に動かない空気層を作るからです。

●ポリ袋に空気を入れて服の中に入れても動かない空気層を作れます。

●カバンの中に足を入れると暖かいのも、そこに動かない空気層があるからです。

●ダウンは、体温で羽を膨らませ、空気の断熱層を作っています。羽を膨らませられないと寒い服になります。ダウンは濡れると羽をしぼめます。防水性がないダウンの場合、雨や雪の際、上着に着ると効果を発揮できません。肌から離すと羽が膨らんでいない場合があります。低温火傷に気を付けるためポケットにカイロを入れて、カイロで羽を温めると体温が低い人でも羽を膨らませることができ、暖かい服になります。ダウンの中に風を防ぐもの(例えば「雨ガッパ」など)を着用するとダウンは効果を発揮できません。

●エマージェンシーシートやアルミブランケットなど防風のものを着るとその中に動かない空気層を作ることができます。エマージェンシーシートやアルミブランケットは、体温の放射により、内部を温めることができるので、体温が維持されていることが重要です。体が濡れた場合は気化熱で体温が下がるので、濡れていない状態で巻いてください。但し、カサカサ音がして眠りを妨げてしまうものもあります。サイズが合っていないと窒息のリスクもあるので、高齢者や子供の使用にはまわりの方の見守りも必要です。

●ダンボールは空気が入っているので、断熱材です。床の冷気を遮るのに効果的です。箱のまま使うと中に動かない空気が入っているので、断熱性能が高くなります。

●体育館は断熱性能が低いものがほとんどです。特に床は座っているだけで、伝導によって体温を奪ってしまいます。毛布を下に重ねても冷気は遮れません。床に断熱素材を敷きます。断熱素材は、銀マット、エアマット、空気緩衝材、ダンボール、柔道マット、キッズマット、お風呂マット、などのEVA樹脂の製品が利用できます。厚みがある方が断熱層になります。

●クルマは熱伝導率のいい鉄とガラスでできているため、テントで寝るよりも冷え込む場合があります。クルマで夜過ごす場合には、窓やドア、寝る場所の体の下となる座席やシートに断熱素材を貼ったり置いたりします。ただエコノミークラス症候群のリスクがあるので、水平にする、着圧ソックスを着用するなどの対策のほか、リスクの高い、妊婦さんや高齢者は、親戚宅やホテル等の利用も検討してみてください。

水の対策 濡れないこと

出典 あんどうりす講演資料 写真PhotoAC
出典 あんどうりす講演資料 写真PhotoAC

濡れると気化熱で体温を下げ続けます。

夏の熱中症対策として、体を濡らす方法があるほどです。寒い時期は濡れないことを意識し、濡れたら着替えてください。低体温になった場合、本人は着替えられない状態に陥るので周りの方が濡れていないか確認してください。

冬でも走って避難するなどして汗をかいた場合、下着が濡れて保水すると体温を下げるので、着替えが必要です。もし保水しにくい服を持っているのであれば、(ウールや発熱素材の服など)それを着用します。

風を防ぐ

風速1m/sで体感温度は1度下がります。断熱性能のない体育館の場合、窓の温度が下がり、室内に温度差が生まれると窓を閉めているにもかかわらず風が発生します(コールドドラフト現象)。参考までに過去に書いた記事はこちらです。こうなると毛布を何枚も着こんでも風で寒くなる場合があります。

●風を感じたら、室内でも風を防ぐものを上着に持ってきてください。

●窒息に注意が必要ですが、等身大のポリ袋の上を切り頭を出して、防風の服にする場合もあります。防風により、中に動かない空気層も作り出せます。

●アルミブランケットも風を防ぐことができます。ウインドブレーカーやレインコート類も風を防げます。

●コロナ対策もあって、体育館の中でパーテーションとしての簡易テントが準備されていたり個人のテントを張ってもいい自治体もあります(都市部では禁止されている場所が多いです)。テントは防風にもなり、空気をためることができるので、断熱にもなります。

災害時初めて使うものは注意が必要

出典 長野県 佐久医師会 教えて!ドクター 
出典 長野県 佐久医師会 教えて!ドクター 

以上、寒さ対策の空気・水・風の役割を知っていれば身近なものでも応用できるので、ご活用いただければと思います。ただ、災害時初めて使うものは、赤ちゃんや子ども、高齢者にはリスクになる場合もあります。赤ちゃんには柔らかい布でさえも、窒息のリスクがあるのです。災害時は混乱しているので、気をつけることが難しくなります。できるだけいつも使っているものやリスクの少ないものを利用してみてください。

アウトドア防災ガイド  リスク対策.com名誉顧問 

FM西東京防災番組パーソナリティ 兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科 博士課程 女性防災ネットワーク東京呼びかけ人 阪神淡路大震災の経験とアウトドアスキルをいかした日常にも役立つ防災テクを、2003年から発信。子育てバックは、そのまま防災バックに使えるなど赤ちゃん防災の先駆けとなるアイデアを提唱。技だけなく仕組みと知恵が得られると好評で、口コミで講演が全国に広がる。企業広報誌、子育て雑誌などで防災記事を連載中。ゆるくて楽しい防災が好み。

あんどうりすの最近の記事